文在寅政権は対北支援を決定 代表撮影/Reuters/AFLO


 休戦協定では、新たな武器・核兵器・ミサイルの持ち込みが禁じられた。だがアメリカも北朝鮮も新たな武器を導入し、アメリカは核兵器・ミサイルをも持ち込んだ。両者とも休戦協定を侵したのである。こうした状況下で北朝鮮は、1994年以降たびたび「休戦協定に束縛されない」と表明し、2009年5月には、「もはや休戦協定に効力はないとみなす」と表明している。つまり、武力行使の再開はいつでも可能、ということになる。

 アメリカは北朝鮮が核開発を止めれば、武力侵攻しないし現体制を認めると中国経由で伝えている。だが、金正恩はそんな言葉を信じはしない。核を持たなければ、これまで消された独裁者と同様にやられると思っている。したがって、北朝鮮はアメリカと平和条約を締結して朝鮮戦争終結が実現されるまでは絶対に核開発を止めない。

 皮肉なことに、その北朝鮮とかつて干戈(かんか)を交えた韓国はいまや圧倒的に親北派が強くなり、圧力を強めようという意見は少数派だ。ターニングポイントは金大中政権(1998─2003年)だった。2000年の南北首脳会談以降、韓国では対北融和政策がとられて国民の北朝鮮イメージは一変し、国内に親北ムードが高まった。続く左派の盧武鉉政権下で、国民の親北傾向はいっそうのこと強くなっていった。

 その後、保守政権の李明博、朴槿恵政権は一定の対北強硬姿勢に転じたが、北朝鮮はそれに対抗するかのように軍事挑発を多発させていった。そのため、国内では対北融和姿勢への再転換を是とする声が高まり、親北派勢力が後退することはなかった。

 この背景には、若い世代の台頭により、朝鮮戦争で北から攻められた記憶が国全体として薄れていることがある。左派政権以降の教科書では北朝鮮史評価の傾向が強く、若者たちの大半は「同じ民族なのだから北朝鮮が韓国にミサイルを撃ち込むことはない」と信じるようになっている。さらには、北朝鮮に対していいイメージを抱いている者が少なくない。

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