養老:表に出さないどころか、誰にも言わない。それが医者である。そんな時代は確かにありました。今の人はなんでも情報公開した方がいいと言うけど、それでは理性的な解決に辿りつかないこともあります。
なんでも明快にして線を引くと危険思想に行き着くこともある。2016年夏に相模原の障害者施設で19人が殺された事件がありました。犯人の元職員が「他人の世話になるしかない人の人生にどんな意味があるのか」といった主旨の発言をしたらしいけど、これは極めて現代的です。要するに介護や看病を負担としか捉えていない。私なんかは、病人や老人が若者に迷惑かけて当たり前じゃんって思う。うちのお袋なんて迷惑極まりなかったから(笑)。
【プロフィール】
ようろう・たけし/1937年、神奈川県鎌倉市生まれ。1962年東京大学医学部卒業後、解剖学教室に入る。1995年東京大学医学部教授を退官し、2017年11月現在東京大学名誉教授。著書に『からだの見方』『形を読む』『唯脳論』『バカの壁』など多数。
みやした・よういち/1976年、長野県生まれ。ウエスト・バージニア州立大学外国語学部卒。スペイン・バルセロナ大学大学院で国際論修士、同大学院コロンビア・ジャーナリズム・スクールで、ジャーナリズム修士。主な著書に『卵子探しています 世界の不妊・生殖医療現場を訪ねて』など。
※SAPIO2018年1・2月号