◆官僚論功行賞の明暗
「納税者一揆」を起こされるなどした“時の人”佐川宣寿・国税庁長官と対照的なのが「10年に1人の大物次官」と呼ばれた斎木昭隆・元外務次官だ。
異例の3年間も次官を務めて安倍外交を支えた。同じく外務官僚の尚子夫人も首相と近く、都知事候補選びが難航したとき、安倍首相は「マダム斎木はどうか」と名前を挙げたこともある。それほどの信頼感もあるだけに、斎木氏は次官退任後に外務官僚の最高ポストである駐米大使に就任すると確実視されていた。
だが、今年1月の人事で駐米大使に就任したのは斎木氏の後任である杉山晋輔・前次官だった。元外務官僚の天木直人氏が指摘する。
「斎木氏は日露交渉の方針で安倍首相と対立した。プーチンとの北方領土交渉の解決に前のめりになっていた安倍首相に対し、斎木氏は“労多くして益なし”と慎重論を唱えたことで逆鱗に触れたと言われる。それが駐米大使ポストを失う結果を招いたのではないか」
お気に入りだった本田氏と斎木氏は筋を通した末に“冷遇”され、首相と近かったわけではない佐川氏は官僚としての筋を曲げて忠誠を示して出世した。国民の批判を浴びてもなお、首相は佐川氏を「適材適所」と庇い続けている。
※週刊ポスト2018年3月9日号