佐川宣寿一覧

【佐川宣寿】に関するニュースを集めたページです。

田原総一朗氏 ゴーン逮捕と日産幹部保身は「これが日本人」
田原総一朗氏 ゴーン逮捕と日産幹部保身は「これが日本人」
 日産自動車元会長、カルロス・ゴーン氏の肉声を10時間以上にわたって保釈中に聞き出していたのが元東京地検特捜部検事の郷原信郎氏である。その記録が『「深層」カルロス・ゴーン氏との対話』(小学館刊)としてまとめられた。田原総一朗氏(ジャーナリスト)は2人の対話をどう読み取ったか。 * * * 僕はゴーン氏が逮捕された当初、これは“正義のクーデター”だと思いました。日産の大株主のルノーが、フランス政府の意向を受けて日産を統合したいと言ってきて、統合反対だったはずのゴーン氏はルノー会長の座を守るため統合賛成に転じてしまった。これを阻止するため日産は経産省と組んでゴーン氏の追い落としに動き、それに検察も乗った。それは、日本経済を守るための正義の行動であるという解釈でした。 しかし本書によれば、それは違うという。ゴーン氏はこう言っています。〈フランス政府は統合させたかったが、日産というか日本側は全く受け付けない。私の立場としては統合したくない。でも、物事を進めなければならないので、次のステップとして私が考えたアイデアが、持ち株会社(HD)の設立だった〉〈私はずっと統合には反対してきた。1999年以来ずっと統合はだめだと言ってきた。ところが、統合問題が私に対しての悪材料として用いられた〉 つまり、ゴーン氏は統合には反対だったのに、統合問題がクーデターに利用されたのだと。ゴーン氏はこのようにも言っています。〈経営上層部が、自分たちがクビになるおそれをかなり強く感じ始めた。(中略)業績が悪くなっていたし、HDだと全員が今の職を続けられない〉 ゴーン氏に引き上げられた日産の幹部たちが、実績を上げられずこのままではいつ解任されるか分からない……そうした不安に駆られて経産省や検察を巻き込んで事件が始まったのではないか。本書から浮かび上がって来るこの構図を、僕は説得力があると思いました。 森友問題で佐川宣寿・元財務省理財局長が文書の改竄を指示したのも、同じく自分の地位を失いたくなかったから。自分の地位を守るためには事実を歪め不正をすることも厭わない、これが日本人の性質なのだと、改めて思い知らされました。※週刊ポスト2020年5月1日号
2020.04.20 16:00
週刊ポスト
森友運営の幼稚園を家宅捜索する大阪地検特捜部(時事通信フォト)
昭恵夫人お付き秘書は出世 森友「関係官僚15人」のその後
 森友学園をめぐる改竄の全責任を負ってクビになった佐川宣寿氏(元国税庁長官、元財務相理財局長)に、いまや次期財務次官の本命と目される太田充氏(財務省主計局長、元理財局長)。赤木俊夫・元近畿財務局上席国有財産管理官(享年54)は、文書改竄を佐川氏から指示されたことなどを遺書に残し、自殺した。ほかにも、森友問題は数々の官庁、全国の役人たちの人生を大きく変えた。 佐川氏と対照的なのが、理財局長だった彼とともに改竄に手を染めたその部下らだ。 上司である佐川氏の指示を忖度し、改竄作業では、「過剰に修正箇所を決め」(亡くなった赤木氏の手記)ていったとされる小役人根性丸出しの人々だが、中尾睦・理財局次長は現在横浜税関長、中村稔・理財局総務課長は駐英公使、冨安泰一郎・理財局国有財産企画課長は官邸に呼ばれて内閣官房参事官、田村嘉啓・国有財産審理室長は福岡財務支局理財部長とそろって順調に出世している。 本省からの指示を受けた赤木氏の同僚である近畿財務局の3人は出世の明暗を分けた。 本省からの指示に戸惑う部下たちに、「全責任を負う」と言って改竄をやらせた美並義人・近畿財務局長は、「そんなことは言っていない」と逃げて東京国税局長に栄転。不正に手を染めることに悩む赤木氏に対し、当初は「応じるな」と言いながら本省の圧力に負けて「やむを得ない」と応じざるを得なかった楠敏志・管財部長は出世できないまま退職した。 赤木氏の直属の上司である池田靖・統括国有財産管理官は、一切の沈黙を守って管財総括第3課長に出世している。◆注文付けた官僚は退官 国会答弁をしくじった官僚の処遇は容赦ない。森友学園への国有地の売却にあたって、評価額を大幅にダンピングした国土交通省では、国会答弁を迷走させた佐藤善信・航空局長はすぐに退職させられ、現在は“閑職”の運輸総合研究所理事長に天下り。佐藤氏とともに対応にあたった平垣内久隆・航空局次長も出世コースからは外れている。 森友改竄問題渦中にNHKに出演して「部分的に検証できないような状況は問題がある」と注文をつけた河戸光彦・会計検査院長もその後退官、現職は不明だ。 見栄も外聞もかなぐり捨てて安倍首相個人に忠誠を尽くす姿勢を示さない限り、出世も好条件の天下り先も与えられない。 そしていま、“この世の春”を謳歌しているのが2人の女性官僚だろう。経産省から内閣府に出向して昭恵夫人の“秘書役”を務め、森友学園への視察にも同行したのが谷査恵子・課長補佐。国有地売却にからんで夫人にかわって財務省に問い合わせ、その結果を籠池泰典元理事長にFAXするなど夫人の関与を知るキーマンだが、3年間の予定で駐イタリア大使館一等書記官として赴任中だ。国内の喧騒を離れて“悠々自適”の厚遇を与えられた。 一番うまく立ち回ったのは森友事件捜査にあたった山本真千子・大阪地検特捜部長ではないか。 女性初の特捜部長として鳴り物入りで捜査に乗り出したものの、籠池夫妻を逮捕しただけで問題の財務官僚たちを全員不起訴にして捜査を終わらせた。 その“功績”により同期トップで函館地検検事正に出世、現在は大阪地検次席検事で将来は大阪地検検事正から関西検察のトップ、大阪高検検事長への大出世コースに乗ったとみられている。「捜査をやるぞ」と権力者をビビらせ、最後は手加減して恩を売るのが検察組織ならではの出世の秘訣のようだ。 公僕としての矜持を捨てて「安倍」を守った者は出世し、「安倍夫人」を守れば大出世するが、守りきれなければ左遷。「国家のため」に動けば赤木氏のように追い込まれる。かくして、「正直者はバカを見る」官僚組織となり、国のために働こうという役人がいな※週刊ポスト2020年4月10日号
2020.04.01 16:00
週刊ポスト
(時事通信フォト)
森友問題めぐる忖度人事続々 安倍政権が崩落させた官僚機構
 森友学園問題の文書改竄に関与し、自殺した官僚の遺書は、世間に衝撃を与えたが、霞が関の動揺はその比ではない。震えているのは、その森友を機に、出世したエリート官僚たちだろう。それを知る霞が関の住人たちは、こう考えているはずだ。いったい我々は、誰のために尽くしているのか……安倍政権は、国家を支える官僚機構そのものを崩落させようとしている。ノンフィクション作家の森功氏がレポートする。(敬称略)◆佐川より首相夫妻 すべての嘘はモリカケに通ず。先ごろ飛び出した元財務省職員の手記を読むにつけ、思わずそう言いたくなる。さる3月18日、遺族の弁護士が大阪市内で記者会見し、自殺した元近畿財務局職員の手記を公表した。〈(森友学園との)応接記録をはじめ、法律相談の記録等の内部検討資料は一切示さないこと、検査院への説明は「文書として保存していない」と説明するよう事前に本省から指示がありました〉 ジャーナリストの相澤冬樹が週刊文春で発掘した手記の発表を機に、野党も政府に森友学園問題の再調査を要求してきた。震える手で書かれた遺書には、赤木俊夫・元上席国有財産管理官(享年54)の伝えようとした“真実”が綴られている。 なぜ財務省が国有地を8億円以上も値引きして森友学園に売ったのか。加計学園と同じく、首相夫人の安倍昭恵と親しい籠池夫妻への依怙贔屓ではないのか。念を押すまでもなく、それが森友疑惑の原点である。 財務省近畿財務局と森友学園との間にどのようなやり取りがあったのか。森友疑惑を解明する上で、まず明らかにすべきが、駆け引きの記録だった。 ことが発覚した当初の2017年通常国会では、国有地を所管する理財局長の佐川宣寿が、取引にかかわる文書を「すべて廃棄した」と答弁する。だが、翌18年に入ると、朝日新聞の報道などにより、その嘘がばれていく。そして国有地売買を記した財務省近畿理財局の公文書が次々と明るみに出ていった。 察するところ、取引現場となった近畿財務局の職員たちは、無茶な土地取引があとで問題になることを予想し、自己保身のために証拠を残したかったのだろう。安倍政権にとって都合の悪いことに、森友側との応接記録や取引を決裁したときの行政文書などが、近畿財務局に公文書として保管されていた。わけても決裁文書には、安倍昭恵が何度も出て来て、「いい土地ですから(取引を)前に進めてください」と森友学園理事長の籠池を励ますクダリまである。 国会で「私や妻が関係していたということになれば……」などと大見得を切った官邸の主は、そんな記録など、ツユほども知らなかったのだろう。国会対応に追われた財務官僚たちが大慌てして記録を隠し、さらに決裁文書の改竄に手を染めた。挙句、それが発覚し、文書の改竄を押し付けられた現場の近畿財務局職員が命を絶ってしまったのである。〈元はすべて佐川(宣寿)理財局長の指示です〉 職員の遺書が表沙汰になり、野党やマスコミはわかりやすいそのひと言を取り上げるきらいがある。が、「佐川の指示」そのものは、これまでの財務省調査ですでに認めている。疑惑解明のポイントはそこではなく、首相夫妻の関与に戻る。 残念ながら手記ではそこが抜けているが、むしろ期待するのは、遺族が佐川や財務省を相手取って提訴している民事の損害賠償請求の行方だ。そして裁判のキーマンは佐川だけではない。◆森友火消しの四人組 もう一人の重要なキーマンが遺書に度々登場する財務省の太田充である。首相の「私や妻が」発言のあった2017年2月17日の5日後の22日、大臣官房審議官だった太田は、佐川とともに官房長官の菅義偉に呼び出され、森友対策を練った。応接記録などを破棄したという佐川の国会答弁を記者に突っ込まれた菅は、驚いたことに、この直後の24日の官房長官会見でこう言い放っている。「(交渉経緯の)ほとんどは決裁文書に書かれているんじゃないでしょうか」 そこから近畿財務局の職員たちが佐川の指示により、決裁文書に記されている300か所におよぶ不都合な真実の改竄を繰り返したのである。 一方、これには疑問も残る。決裁文書には理財局総務課長の中村稔の承認印もあり、中村も菅との協議に加わって説明している。普通に考えれば、財務省の彼らは菅に決裁文書に昭恵の名前が何度も出てくることを報告したはずだ。 にもかかわらず、菅は24日、あたかも決裁文書を見てくれ、と言わんばかりの会見を開いている。財務官僚が説明を忘れたか、それとも官房長官がうっかり口走ってしまったのか。どちらにせよ結果、改竄前の文書内容が大問題になる。実に間の抜けた話なのである。 この菅、佐川、太田、中村という森友国会対策の四人組が、文書改竄の経緯を解明する鍵を握っているのは疑いようがない。それに加え、事務次官の福田淳一、官房長の岡本薫明や矢野康治、理財局次長の中尾睦、国有財産審理室長の田村嘉啓、国有財産企画課長の冨安泰一郎といった当時の面々。彼らも文書の改竄にかかわっているか、知りうる立場にあった。だが、国会では与党の数の力で多くが国会招致を免れ、尋問されてもシラを切り続けてきた。 財務省内では、会計検査院の審査に備え、森友学園との土地取引が法に触れないか、検討した。そのときの文書ものちに明らかになった。遺書はそこにも触れている。〈新聞紙上に掲載された本(2018)年1月以降に新たに発覚したとして開示した「省内で法的に論点を検討した新文書」について、本年2月19日の衆院予算委員会で、太田理財局長が「当初段階で、法務担当者に伝え、資料に気付く状況に至らなかった。法務担当に聞いていれば(文書の存在)に気付いていたはずだ」との答弁も全くの虚偽である〉 民事裁判では裁判長が認めれば、証人出廷しなければならない。昭恵夫人の証人出廷なんてことになれば、埋もれてきた数々の虚をあぶり出すことができる。なかでも遺書に何度も登場する四人組の一人、太田などは気が気でないかもしれない。◆厳重注意の後、昇進 それでも森友国会対策の四人組をはじめ、キーマンたちのほとんどは出世してきた。首相を庇った論功行賞による出世は、安倍政権における見慣れた光景といえる。 佐川もいっときは理財局長から国税庁長官に昇進したが、公文書の改竄が明るみに出て財務省を追われた。安倍一強政権の犠牲者だと庇う声もある。政権を守るために犯罪行為を強いられたという意味では、その通りかもしれない。 モリカケに見られるように、批判の矢面に立たされてきた官僚たちは放り出されてきた。加計学園でいえば、「首相案件」発言を取り沙汰された元経産省産政局長の柳瀬唯夫もその一人だろう。 一方、太田は2018年6月、文書改竄問題で財務大臣から厳重注意処分を受けるが、翌7月には理財局長からナンバー2の主計局長ポストに昇進する。主計局長は次官の待機ポストとされ、それだけ官邸の覚えがめでたかった証だろう。今年7月の人事で後継次官に指名される見込みだといわれる。彼らは何ごともなかったかのように財務省の中核を固めている。四人組の残る中村は現在、駐英公使としてロンドン暮らしを満喫している。 半面、日本の頭脳と持ちあげられてきた財務官僚たちの堕ちた姿は、昨今の霞が関のあり様を象徴する出来事のように映る。かつて大蔵一家と呼ばれて結束を誇り、日本の政策の舵を握ってきた財務省には、まるで組織としての一体感がない。 その財務省に代わり、首相の側用人らが意のままに政策を動かしてきた。森友問題の調査についてある財務官僚に尋ねた。「財務省内でも、佐川さんが自発的に文書の改竄を指示したなんて誰も思っていません。霞が関の役人は官邸からの圧力電話をしょっちゅう受けていますから、何らかの力が働いているのは肌で感じています。世間が納得しないのもわかります。しかし、当人は省内の調査に対し、本当に上からの圧力については口をつぐんでいる。そこで調査が止まってしまうので、どこまで行っても真相にたどり着かないのです」◆常に官邸のほうを見る これこそ閉塞感というのだろう。そのせいで心ある霞が関の官僚たちの不満は募る一方だ。別の官僚はこう愚痴る。「たとえば昨年10月の消費税増税のときにしてもそう。景気対策のためにキャッシュレスで買い物すれば、2~5%ポイント還元するという発案者は経産省の新原(浩朗・産政局長)で、それをバックアップしたのが首相補佐官の今井(尚哉)。社会保障のための増税ですから、財務省の基本はそんな財政負担など反対なのですが、新原が首相に泣きついて決まりました」 経産内閣と呼ばれる安倍政権では、経産官僚たちが幅を利かす。新原は女優・菊池桃子の亭主である。官邸官僚の頂点に立つ今井に引き立てられ、いまや事務次官候補として名が挙がっている。産政局長はかつて柳瀬が務めたポストだ。もっとも肝心の政策はさっぱり。景気対策で導入されたポイント還元のはずが、GDPの年率マイナス7%という景気の落ち込みは周知の通りである。「ポイント還元で財務省が反対する中、賛成に回ったのが、太田主計局長です。次の事務次官になるためには、今井や新原たちを敵に回したくないからでしょうが、あまりに露骨。森友問題のときもそうでしたが、常に官邸のほうを見て仕事をするので、省内にはずいぶん反発があります」 主計局畑を出世の本流とする財務省では、事務次官の福田がセクハラ問題で去り、官房長から主計局長に昇進していた岡本が後釜に座った。岡本の次官就任は役所の建て直しを担う省内の待望論があった。が、同じ主計畑の太田については、省内の評判がすこぶる悪い。それは、無茶な政策を黙ってやり過ごし、官邸にすり寄る姿が目にあまるからだという。◆守り神を検事総長に なぜそうなってしまうのか。理由は、官邸に幹部人事を握られてしまっているからにほかならない。古くは、総務省の事務次官候補と呼ばれた平嶋彰英が菅の肝煎りのふるさと納税に異議を呈し、2015年7月、自治税務局長から自治大学校長に左遷されてしまったケースもある。霞が関では今もそれが語り継がれている。 そして官邸による官僚支配は、一般公務員だけにとどまらない。1月31日、唐突に閣議決定された東京高検検事長の定年延長問題は、司法の独立という国の根幹を揺るがせている。 準司法官と位置付けられる検察官の定年は、検察庁法により、職務と責任の特殊性に基づき、一般の国家公務員の特例と定められてきた。刑事司法の公平性から、検事は誰もが63歳で任を解かれ、検察トップの検事総長だけが65歳まで務める。 東京高検検事長の黒川弘務もまた、今年2月8日の誕生日をもって63歳となり、定年退官するはずだった。が、安倍政権では閣議で8月7日まで定年を半年間延長するという禁じ手を使った。おかげで黒川が検事総長に就任できる──。首相官邸がそんなシナリオを描いたとされる。「官邸の守護神」と異名をとる黒川は、安倍内閣で法務省の官房長や事務次官を6年半以上も務め、政権と検察の橋渡し役を担ってきた。公文書の変造や背任容疑のかかった森友学園の国有地売買で大阪地検が捜査したときも、その存在が囁かれた。 実際に黒川がどのような動きをしたのかは明らかにはなっていない。だが、安倍政権では過去も官房長や事務次官人事に介入してきた。さまざまな不祥事に揺れる政権が守り神を検事総長に据えれば安泰、と考えたのではないか、そう勘繰られても仕方ないほど、今度の定年延長はあまりに酷い。 官邸主導の名の下、官僚たちは唇が寒く、政権で横行する不条理に声を上げない。しかし近畿財務局職員の死から2年、その遺志が検察の不起訴にした38人の財務省幹部たちを改めて民事の法廷に引きずり出す。崩れゆく霞が関から何が飛び出すだろうか。【プロフィール】もり・いさお/1961年福岡県生まれ。岡山大学文学部卒。出版社勤務を経て、2003年フリーランスのノンフィクション作家に転身。2018年『悪だくみ「加計学園」の悲願を叶えた総理の欺瞞』で大宅壮一ノンフィクション大賞を受賞。その他の著作に『官邸官僚』など。※週刊ポスト2020年4月10日号
2020.03.31 11:00
週刊ポスト
“遠慮介護”を選んだ昭恵さん(写真/アフロ)
昭恵夫人、森友問題遺書公開や新型コロナのなか脳天気生活
 森友学園問題に関する財務省の公文書改ざんをめぐり、2018年3月7日に自殺した財務省近畿財務局職員・赤木俊夫さん(享年54)の秘められていた遺書が、3月18日発売の『週刊文春』に全文掲載された。 遺書で赤木さんは、財務省の佐川宣寿理財局長(当時)が文書改ざんの指示を出し、ほかの幹部も文書改ざんに関与したと暴露した。《森友問題 佐川理財局長(パワハラ官僚)の強硬な国会対応がこれほど社会問題を招き、それにNOを誰れもいわない これが財務省官僚王国 最後は下部がしっぽを切られる。なんて世の中だ、手がふるえる、恐い 命 大切な命 終止府》(原文ママ) 遺書の公開と同時に赤木さんの妻は国と佐川氏を相手取り、1億1000万円余りの損害賠償を求める訴えを起こした。 赤木さんの仕事ぶりはごく真面目で、「ぼくの契約相手は国民です」が口癖だった。その実直な公務員の魂の叫びに、安倍政権は冷淡だった。 遺書公開直後の3月19日、安倍晋三首相(65才)と麻生太郎財務相(79才)が国会で再調査を拒否する姿勢を示した。23日にも安倍首相は「事実は明らかにした。検察がしっかりと捜査した結果がすでに出ている」と再調査を改めて拒否している。◆ピンクのワンピで「鏡開き」の能天気 そもそも森友問題の発端は安倍首相夫人である昭恵さん(57才)の振る舞いだった。「籠池泰典理事長の森友学園が9億円以上といわれる国有地をタダ同然で手に入れた。その土地に建つはずだった小学校の名誉校長が昭恵さんだったので、安倍首相や昭恵さんの口利きが疑われました。2017年3月の証人喚問で籠池氏が“昭恵さんによる100万円の寄付”や“口利きの証拠となるFAX”という爆弾証言を連発し、昭恵さんの関与をほのめかしました」(全国紙政治部記者) 疑惑発覚以降、安倍首相は国会で「私や妻が関係しているということになれば、間違いなく総理大臣も国会議員も辞める」と断言した。その発言を機に、“安倍首相を辞めさせられない”と忖度した財務省が無理を通し、道理をねじ曲げはじめ、文書改ざんを進めることになったとされる。「赤木さんが自殺に追いやられた文書改ざん問題では、2014年4月に昭恵さんが籠池氏に“いい土地ですから、前に進めてください”と話したとされるくだりや、昭恵さんが森友学園の教育方針に感涙したことなどが財務省の文書からそっくり削除されていました」(前出・全国紙記者) 9億円もの国有地がタダ同然になったことに昭恵さんの関与が強く疑われる森友問題は「アッキード事件」と呼ばれるも、“首相夫人は私人”という屁理屈が押し通され、本人が説明責任を果たすことはなかった。 それどころか騒動の渦中で目立ったのは、昭恵さんの「耐えがたいほどの軽さ」だ。 国権の最高機関である国会が森友問題で紛糾しても、昭恵さんはどこ吹く風。2017年5月15日に開かれた安倍首相の父・晋太郎氏を偲ぶ会ではこんな発言で出席者の度肝を抜いた。「騒動で有名になったので、おかげ様で(経営する)居酒屋UZUは繁盛しています。いい食材を使っているから、そんなに利益はないんですけどね(笑い)」 朝日新聞が文書改ざん疑惑をスクープした2018年3月2日にはフェイスブックにこんな投稿をした。《能舞台においてアジアのファッションショー。モデルの皆さんが全員足袋を履いているのが印象的でした》 さらに目を疑うのは、赤木さんの自殺が報じられた同月9日の言動だ。昭恵さんは、前日8日に開催された国際女性デーのイベントで日本酒の「鏡開き」をした写真をフェイスブックにアップした。「そこにはピンクのワンピースで満面の笑みを浮かべる昭恵さんの姿が写っていました。赤木さんが自殺したのは7日で、官邸を通して情報は入っていたはずなのに、あんな笑顔でお祝いの写真を投稿するなんて。いったいどういう神経をしているのか…」(政治ジャーナリスト) しかも、その日の夜には、銀座で開かれた知人の誕生日パーティーに出席していた。参加者の1人が振り返る。「神田うのさん(44才)や真矢ミキさん(56才)、中田英寿さん(43才)など多くのセレブが参加した華やかなパーティーでした。その日の昼に赤木さんの自殺が報じられ、当時国税庁長官だった佐川さんが辞職を表明し、夜には麻生財務相が緊急会見を開きました。そんな大変な時期に、にこやかにパーティーに出席した昭恵さんに周囲は驚くばかりでした」 今回の遺書公開でも昭恵さんは変わらなかった。コロナ騒動にもかかわらず、昭恵さんは福岡を訪れていたようだ。「遺書が報道された翌日、福岡在住の女性実業家が昭恵さんらセレブ女性8人とランチ会をしたことをインスタグラムにアップしました。その女性は、“夫人も大変な時期でしょうが頑張ってください”との応援メッセージを掲載しています」(地元紙記者)※女性セブン2020年4月9日号
2020.03.27 07:00
女性セブン
お酒にまつわる仰天エピソードも多い(時事通信フォト)
もう一人自殺するかも… 自殺した官僚妻の訴えを昭恵氏スルー
「今回、自殺した財務省職員の遺書や手記が公開されることを、官邸は1週間ほど前から把握していました。そもそも遺書や手記の存在は自殺直後から知っていて、警察や検察の捜査の過程でほぼ内容を掴んでいましたが、まだほかにも“隠し玉”があるのではないかと戦々恐々としていた。公開された内容の切実さに国民は衝撃を受けていますが、官邸は“これなら乗り切れる”と高を括っている様子です」(自民党関係者) 3月18日発売の『週刊文春』に衝撃的なタイトルの特集記事が掲載された。《森友自殺財務省職員 遺書全文公開「すべて佐川局長の指示です」》 森友学園問題に関する財務省の公文書改ざんをめぐり、2018年3月7日に自殺した財務省近畿財務局職員・赤木俊夫さん(享年54)の秘められていた遺書を全文公開した記事は、大きな反響を呼び、同誌はほぼ完売したという。 遺書で赤木さんは、財務省の佐川宣寿理財局長(当時)が文書改ざんの指示を出し、ほかの幹部も文書改ざんに関与したと暴露した。《森友問題 佐川理財局長(パワハラ官僚)の強硬な国会対応がこれほど社会問題を招き、それにNOを誰れもいわない これが財務省官僚王国 最後は下部がしっぽを切られる。なんて世の中だ、手がふるえる、恐い 命 大切な命 終止府》(原文ママ) 遺書の公開と同時に赤木さんの妻は国と佐川氏を相手取り、1億1000万円余りの損害賠償を求める訴えを起こした。 赤木さんの仕事ぶりはごく真面目で、「ぼくの契約相手は国民です」が口癖だった。その実直な公務員の魂の叫びに、安倍政権は冷淡だった。 遺書公開直後の3月19日、安倍晋三首相(65才)と麻生太郎財務相(79才)が国会で再調査を拒否する姿勢を示した。23日にも安倍首相は「事実は明らかにした。検察がしっかりと捜査した結果がすでに出ている」と再調査を改めて拒否している。 直後に赤木さんの妻は代理人弁護士を通じ、「夫の遺志がないがしろにされ、許せない。再調査してほしい」とコメントを公表。「安倍首相らは調査される側で、再調査しないと発言する立場ではない」と強く批判した。 もう1人、この問題に深くかかわった人物がいる。安倍首相夫人の昭恵さん(57才)だ。詳しくは後述するが、そもそも国を揺るがせた森友問題も、それをごまかすための文書改ざんも、引き金を引いたのは昭恵さんだ。「昭恵さんも赤木さんの遺書の存在は知っていました。官邸と同じく、おおよその内容は把握していたので、初めて知る事実も少なく、特別な反応は示していません。そもそも昭恵さんは、自身が招いた森友問題の最初から、スタンスは何も変わっていません。“私は何か悪いことをしたでしょうか。夫のためを思って、よかれと思ってやっただけのことです。私は被害者なんです”―そういう主張なので、もう何が起きても一緒なのです」(安倍家の関係者) 実は、今回の遺書公開の数か月前、赤木さんの妻が発した悲痛なメッセージは昭恵さんに届けられていた。ただ、それを聞いても昭恵さんは、「どうしたらいいですかね」と繰り返すばかりで、“打てど響かず”の状態だったという。◆赤木さんの上司が自殺するかもしれない「昨年10月、赤木さんの奥さんから相談を受け、その内容を昭恵さんに伝えました」 そう語るのは、昭恵さんと赤木さんの妻の双方を知る政界関係者だ。「赤木さんの自殺後も奥さんは夫の職場(財務省)を信じていて、遺書を公開しようとは思っていませんでした。しかしその後、財務省関係者の態度に違和感を持った奥さんは、次第に不信感を募らせていき、遺書の公開と提訴にいたりました。 その過程で奥さんは、赤木さんの直属の上司だったAさんも相当に追いつめられていて、もしかして自殺するかもしれないという情報を知り、私に連絡してきたんです」 赤木さんの妻から連絡を受けたその関係者は、旧知の仲の昭恵さんに内容を伝えた。「昭恵さんに“赤木さんの上司だったかたが自殺するかもしれません”と伝えたのは、赤木さんの奥さんから相談された昨年の10月頃です。 それを聞いた昭恵さんは、“どうしたらいいでしょう”と言うばかりで何もしようとしませんでした。それからというもの、一切の連絡はありません」(前出・政界関係者) その関係者は、責任を感じた昭恵さんが何らかの行動に出ることを望んだが、その望みは叶わなかった。「籠池泰典理事長に実刑判決が出て、人が1人亡くなっている重大事なのに、昭恵さん本人はほとんど何のメッセージも発せず、姿をくらませたままでした。博愛の精神を持った彼女なら何らかのコメントを出してもいいのに、具体的な行動は何ひとつ起こしていません。 赤木さんの上司が自殺する瀬戸際まで追いつめられ、もう1人死者が出そうと伝えたときも、昭恵さんは痛くも痒くもない様子でした。安倍首相の立場を考えてのことかもしれませんが、彼女はあまりに自己保身に走りすぎています。赤木さんの件についてこのまま何も言わず放置したら、昭恵さんは人間として失格です」(前出・政界関係者) 今回の暴露に安倍首相も「乗り切れる」との余裕を崩さない。「安倍総理は、とにかく森友問題に敏感です。というのも、昭恵夫人がかかわっていることに加え、“妻が勝手にやったことで自分は関係ない。なんで私が責められなくてはいけないのか”という腹立たしい思いを抱えているからです。 遺書発表後の3連休は、自宅に官邸スタッフを集め、“遺書が公開されても大した影響はない”という世論を作り出すように、“作戦”を練り上げたそうです」(前出・自民党関係者) その結果だろう、安倍シンパとみられるネット掲示板やツイッターの書き込みが急増し、「遺書には具体性がない」とか、「記述に矛盾があるから信憑性が低い」とか、「新型コロナで大変な時期に森友問題なんて放っておけ」などという論調が増えた。「テレビのワイドショーも、赤木さんの遺書の話題を大きく取り上げず、新型コロナや東京五輪延期の話題に終始しました。“見事な忖度”なのか、それとも日頃から安倍首相が会食を続けてきたテレビ局首脳らに直接指示が飛んだのか…」(官邸関係者) ある政治ジャーナリストは憤りをあらわにする。「遺書には“改ざんは佐川さんの指示”と書いてありますが、実際は佐川氏が勝手に指示できるわけはなく、その上の誰かに命じられたはずで、安倍首相や昭恵さんの思いを忖度して改ざんが行われたことは明白です。 それをたどれば安倍首相や昭恵さんの責任問題になるから、彼らは再調査を行わないの一点張り。しかし、これだけ国民の関心を引く事件なので、赤木さんの遺志を汲んで再調査し、責任の所在を明確にすべきです」 弁護士の郷原信郎さんは「昭恵さんは公の場で説明すべきだった」と主張する。「2017年に籠池さんが国会に参考人招致された時、一方の当事者である昭恵さんの証人喚問は行われなかった。しかも、昭恵さんは官僚が作った“言い訳”の文章を個人のフェイスブックに載せ、国会の証人喚問を逃れた。国民を馬鹿にした稚拙な対応のために森友問題は一層深刻化し、最後には、赤木さんが死に迫られるような状況にまで発展したのです」 本誌・女性セブンは昭恵さんに話を聞こうと何度も携帯電話を鳴らしたが、留守番電話につながるだけで折り返しはなかった。 これ以上の犠牲者が出る前に、安倍夫妻は説明責任を果たすべきではないか。※女性セブン2020年4月9日号
2020.03.26 07:00
女性セブン
佐川宣寿・前国税庁長官 恩赦でまさかの叙勲の可能性も
佐川宣寿・前国税庁長官 恩赦でまさかの叙勲の可能性も
 例年4月29日の「昭和の日」に受章者が発令され、5月上旬に勲章伝達式と天皇への拝謁が行なわれる「叙勲」。2019年春が平成最後の叙勲になるとみられ、天皇の代替わりで大盤振る舞いされるのではという期待が高まる。 叙勲者は毎年春と秋にそれぞれ約4000人、長年にわたり地域に貢献した人のうち推薦を受けた人の中から決められる。 しかし、候補者の選定や審査は内閣が行なうため、来年夏に参院選を控えるこの状況で勲章の“バラマキ”が起きれば、選挙に与える影響は大きい。「平成最後の叙勲」を受ける人数はどうなるのか。内閣府に尋ねると、「例年並みの人数を対象とする方向で調整していますが、詳細はまだ決まっておりません」(賞勲局)という。 叙勲についてもうひとつ見落とせないのは、森友学園問題で話題になったあの佐川宣寿・前国税庁長官の“復権”の可能性だ。 官僚トップの事務次官や長官を務めた国家公務員は退職後10年ほどで叙勲対象となり、大綬章に次ぐ「重光章」などが授与される。が、公文書偽造で国家公務員法の処分(減給)を受けた佐川氏はあきらめざるをえなかった。ノンフィクション作家の斎藤充功氏が解説する。「国家公務員法違反者に恩赦が行なわれると、国民が忘れた頃に佐川氏が『国家に貢献大』と叙勲される可能性があります」※週刊ポスト2018年8月17・24日号
2018.08.17 07:00
週刊ポスト
佐藤優・片山杜秀対談、失墜の財務省や日本型ファシズム語る
佐藤優・片山杜秀対談、失墜の財務省や日本型ファシズム語る
 平成も残すところ10か月。閉塞感が漂う平成後期を象徴するように、様々な事件が立て続けに起こっている。とりわけ官僚たちの不祥事が目に付く。日本を支えてきたトップエリートはなぜ失墜したのか。作家・佐藤優氏と思想史研究者・片山杜秀氏が「ファシズム」という切り口から現代日本を読み解く。佐藤:官僚たちの職業倫理に、国民から疑いの目を向けられるような事件が相次いでいます。官僚の中の官僚と呼ばれる財務官僚トップの福田淳一前事務次官は、女性記者に「おっぱい触っていい?」「手、縛っていい?」と迫る音声データを公開されたにもかかわらず、本人はそれを認めなかった。片山:これまでの官僚の不祥事と位相が違う事件でしたね。その前後には、モリカケ問題で佐川宣寿前国税庁長官や柳瀬唯夫元首相秘書官が国会でいい加減な答弁を繰り返した。次々明るみに出る高学歴エリートの不祥事に、この国はどうなっているのかと暗澹たる思いがしました。佐藤:しかも北朝鮮情勢が大きく動いていたさなかに「言った、言わない」「会った、会わない」で国会を空転させたわけですからね。彼らの罪は重い。片山:一連の騒動で私が思い出したのが、旧海軍もですが、特には旧陸軍の文書ですね。「無敵皇軍」ですから「絶対に勝つ」という前提ありき。「負ける」ことを内心考えていても、そう赤裸々には書けないので、深読みしないと意味不明で、端から見ると何を言っているのか分からない。佐藤:事実や論理よりも気合いが議論を左右する。意味が分からなくなるのは当然です。片山:そう考えると「記憶にない」とひたすら繰り返す秘書官も「言った覚えはない」と一貫して否認し続ける財務次官もやっていることは陸軍の軍人とさして変わらない。官僚制と無謬性と「必勝の信念」の組み合わせで、回転して止まれなくて自壊してしまう。佐藤:旧陸軍もいまの財務省も、国家最大のエリート官僚集団です。なぜエリート官僚が理解しがたい事態を招くのか。私はこうした社会状況を読み解くために、片山さんの『未完のファシズム』(※)に注目しているんです。 片山さんは「戦前日本のファシズムは“未完”、すなわち中途半端な形にならざるをえなかった」と結論付けています。なぜ戦前の日本のファシズムは、未完に終わったのか。そこが旧陸軍の暴走や現在の財務省の問題につながるのではないかと。【※『未完のファシズム』/2012年に新潮社より刊行。「1945年の滅亡」までの道のりを、「持たざる国」という切り口から読み解く。満洲国をもって「持てる国」にしようとした計画や、「持たざる国」ゆえに跋扈した精神主義など、「持たざる国」からの脱却は様々な形をともなったが、結局、明治憲法や天皇制と相容れず、戦前の軍人たちが抱いた夢は、崩れ去ることになる】◆なぜ「未完」か片山:ファシズムは、第一次大戦後のイタリアで、ムッソリーニの「国家ファシスト党」の政治運動や思想を示す言葉として登場しました。ファシズムという言葉が持つ本来の意味は「束ねる」ことですね。佐藤:ムッソリーニは、国家の介入によって国民を統合し、資本主義が生み出す貧困や失業などの社会問題を解決していこうとする政治体制を構築しました。 戦前の日本が西欧列強に追いつくために、天皇を中心として国民の力を一つに束ねるという考えは一定の説得力を持った。しかし日本型のファシズムは「未完」のまま終わる。まずそこからお話しいただけますか?片山:日本における未完のファシズムについて考える上でのポイントは二つ。天皇と「持たざる国」ですね。 幕末、日本は近代化に舵を切りました。すぐに西洋列強に対抗するには、自らを彼らの似姿にするしかない。しかし日本は領土も狭く近代工業化に必要な資源にも乏しい。そこで頼れるのは人の力しかない。倫理と道徳と教育ですね。「持たざる国」である日本は、国民の力を効率的に束ねることで「持てる国」に対抗しようとした。佐藤:後発の帝国主義国で、かつ「持たざる国」だった日本はそうするしかなかったわけですよね。片山:そこでの切り札が天皇です。たとえばドイツだと、プロイセンが対外戦争に勝利することを繰り返して、そのプロイセンを核にバラバラだった諸邦と民族を束ねた。でも日本はペリー来航以来、西洋に全く勝利できない。束ねる実力者がいない。そこで長く無力であり続けていたけれど、神話に守られた天皇で束ねようとした。実力で束ねられないなら、神話と復古と伝統で束ねようということ。これは成功しました。でも中心が無力になった。そこに逆らうと痛い目に遭う。 たとえば昭和の戦争期に近衛文麿は大政翼賛会を作って日本のナチスにしようとした。大政翼賛会総裁はヒトラー並みの実力をもって軍も内閣も議会も抑える。それでこそ「持たざる国」を厳格に最大効率で束ね、「持てる国」に張り合える。近衛なりに正しい。大政翼賛会は非常時独裁の思想の表現です。でもすぐ骨抜きにされた。日本の束ねは天皇だ。しかもそれは無力の束ねだ。天皇の下にヒトラーは要らない。近衛はこの日本的政治原理に押しつぶされ、大政翼賛会は弱い組織に化けてしまいました。佐藤:それに加えて当時、総理大臣の権限が弱く、内閣と枢密院が対等の関係にあるという権力が分散する仕組みも邪魔をして、国民を束ね切れなかった。 私にとって日本のファシズムは竹馬のイメージなんです。「持たざる国」がムリをして、どんどん高い竹馬に乗って、最後には匠の技みたいにバランスを取っていたんだけど、転んで大変なことになった(苦笑)。片山:普通は転ばないくらいの高さで止めておくという微温的な結論に落ち着くはずですが、「持たざる国」が「持てる国」と張り合うにはそんなことは言っていられなかったのでしょう。佐藤:ここで私が注目したいのが「持たざる国」が生んだ日本独自の精神主義です。その一端が、宮崎駿さんの『風立ちぬ』にあらわれている。主人公の堀越二郎は美しい飛行機を作りたいと零戦などの開発に邁進する。映画では、飛行機に魅せられた純粋な設計者として美化されていますが、実際は馬力のあるエンジンを作れないから軽い飛行機を作るしかなかっただけです。それを美しいという言葉でごまかした。片山:資源がないから、装甲を薄くして小型化する方に力を注いでいく。結果、スピードは出るけれど、簡単に撃ち落とされる。でも美しいからそれでいい。◆念力主義の行き着く先佐藤:経済的に厳しいアフリカや中南米の小国も持たざる国だと言えますが、こうした美学や精神主義が跋扈していない。日本特有のものではないかと思います。片山:小林秀雄や保田與重郎も美が最終的な判断基準でしょう。政治や経済や科学技術が美学に立脚すると、社会科学的な合理性が超克される。戦争には勝敗についての合理的予想が不可欠と思いますが、そこに美醜という基準が入り込んでしまう。負けても潔ければ美しいからよいではないか、なんて話になる。しかも日本の場合は、「持たざる国」としての身の程をわきまえるにしては、人口が中途半端に多いんですね。佐藤:そう思います。だから日本は、括弧付きの「持たざる国」なんです。片山:太平洋を挟んでアメリカがあって、隣が中国で、北にロシアがいる。それなりに「持てる国」とも言えるはずなのに、周囲が大国ぞろいなので、相対的には、どこまで行っても「持たざる国」になる。佐藤:日本語圏のマーケットだけで、経済発展できるだけの人口がいた。だからガラケーやハイブリッドカーに代表されるように、世界的な潮流とは別に独自の定向進化を続ける。なまじ人口が多いから客観状況を無視した主観的な願望で、物事を決めていく念力主義とも呼べる考え方に陥ってしまったのでしょう。片山: その念力主義の行き着く先が旧日本軍の玉砕の思想ですね。アッツ島守備隊の司令官は「心臓が止まったら、魂魄を以て敵中に突撃せよ」と訓示しました。佐藤: なかには石原莞爾のように日本が「持てる国」に成長するまで、長期の戦争をしてはダメだと考える軍人もいた。しかしそんな主張は受け入れられず「持たざる国」のまま戦争に突入してしまった。片山:「持たざる国」なのだから、陸海の共同作戦の思想が軍に育ってよかったのに、そうならなかった。陸軍と海軍が別々にお互い秘密に原爆研究をしていたのがこの国です。佐藤:陸軍と海軍ではねじの大きさも違って、部品の互換性もない。情報も共有していないから海軍が敵軍の軍艦と間違えて、陸軍の船を撃ったなんて事故も起きた。象徴的なのは、陸軍が航空母艦を造ったこと。世界の軍事史で、航空母艦を持った陸軍は旧陸軍だけだと思いますよ。片山:海軍が非協力的だからそうなってしまう。佐藤:限られた資源を総動員するといいながらも、極端なセクショナリズムがそれを妨げるわけですね。片山:そのセクショナリズムを越えようとすれば、天皇を使うしかない。無力の天皇を実力者に仕立てる。天皇は形式上では軍も行政も統率できるというのが明治憲法上の建前でした。 しかし、仮にその天皇大権を行使して、陸海軍と軍需関係の行政と企業と科学技術者を大同団結させ、天皇が率先して最高の性能で部品の規格も統一された戦闘機を造ったとしましょう。でもその飛行機で負けたら天皇の責任になる。やはり天皇は無力でいてくれないとうまく行かない。それが国体の護持ということです。佐藤:問題なのは、示し合わせてやっているわけでなく、なんとなくそうなってしまうことではないですか。 軍に限った話ではないんです。1941年に教会を全部集めて結成された日本基督教団も形としては束ねられているんだけど、日本基督教団一部が日本基督教会で、日本基督教団二部がメソヂスト教会で……と部制の縦割りで元の組織がそのまま残っていた。片山:なんとなくそうなってしまうというのが重要ですね。陸軍に比べて合理的なイメージの海軍もそうです。普通、海軍が陸軍の輸送船を護衛するものだけれど、それをしたがらない。佐藤:輸送艦の護衛なんて、海軍には下品なことだったんでしょうね。潜水艦の役割を他国と比較すると旧軍の輸送に対する考え方が分かります。ドイツの潜水艦「Uボート」は補給を断つために英国の輸送船をターゲットにしていました。でも、旧日本海軍の潜水艦が狙うのは基本的に航空母艦か戦艦。弱い輸送艦を狙うのは武士道に反する、卑怯だという美学で動いていた。片山:物資や兵士の輸送を軽視するのも「持たざる国」の一つの特徴です。資源も物資も乏しい日本には、兵站を持って長期で戦争をするという発想がなかった。だから必要な食量や物資を現地で調達するという場当たり的な現地調達主義でアジアに展開していった。◆外務省の現地調達主義佐藤:実は私もその現地調達主義を体験したことがあるんですよ。1992年、私は外交官としてCSCE(現在のOSCE・欧州安全保障協力機構)サミットでヘルシンキに出張しました。たくさんの要人が訪れているからホテルが高騰して1泊8万円もする。でも、規定の宿泊費は2万数千円しか出なかった。片山:差額は自腹ですか?佐藤:フィンランドの日本大使館の連中が「差額は才覚でなんとかしろ。カジノもあるぞ」と言うんです。最終的にカジノで勝って、ホテルに宿泊できたからよかったのですが。本来行政法では予算措置がない出張命令は〈重大かつ明白な瑕疵がある〉から従わなくてもいいんです。でもそれを強いる雰囲気も、従わざるをえない風土もあった。片山:カジノで負けていたらどうなっていたんですか。佐藤:玉砕するしかなかったかもしれませんね(苦笑)。出張すればするほど、持ち出しが増えて赤字になる。旧軍の兵士はこういう状況で、送り出されていたんだろうな、と思いました。 実際、戦争が激しくなり、そうした精神主義が行きすぎた結果、玉砕が行われるようになりました。片山:「玉砕思想」を説いた陸軍の軍人思想家に工兵隊出身の中柴末純がいます。物質的に戦う前から勝利を約束された「持てる国」でも軍隊や国民の戦意がなければ、戦争を続けられない。つまり「持てる国」の戦意を挫けば「持たざる国」にも勝ち目が出てくる。そこで中柴は日本人が積極的に死んで見せればいいと主張した。佐藤: 玉砕する日本人の姿を見た敵は恐れおののくだろうというわけですね。片山:そうなんです。佐藤:私が玉砕思想の名残を感じたのが、バブル期の「24時間、戦えますか」という栄養ドリンクのCMです。本当に24時間戦ったら死んでしまうけど、あれが受け入れられて流行する素地が日本社会にはある。片山:一番、「持っていた」はずのバブル期のCMですら、こうなのですからね。佐藤:さきほどのガラケーの話ではないですが、日本型のファシズムは玉砕思想を内包するまでの独自進化を遂げました。これを戦前の話と捉えるのは誤りです。日本のファシズムを考えることは、いまの日本社会が内包する問題を読み解く一つの鍵になるはずです。【プロフィール】●さとう・まさる/1960年生まれ。1985年、同志社大学大学院神学研究科修了後、外務省入省。主な著書に『国家の罠』『自壊する帝国』など。国際情報誌『SAPIO』連載5年分の論考をまとめた『世界観』(小学館新書)が発売中。●かたやま・もりひで/1963年生まれ。慶應大学法学部教授。思想史研究家。慶應大学大学院法学研究科博士課程単位取得退学。『未完のファシズム』で司馬遼太郎賞受賞。近著に『近代天皇論』(島薗進氏との共著)。※SAPIO 2018年7・8月号
2018.07.22 07:00
SAPIO
新聞記者たちがあっさり騙される安倍首相「信号無視話法」
新聞記者たちがあっさり騙される安倍首相「信号無視話法」
 国会で答弁するときの安倍晋三・首相の姿勢は支持率に連動する。モリカケ問題に国民の批判が高まり支持率が急落すると、腰を低くして「丁寧に説明する努力を積み重ねたい」「批判は真摯に受け止める」と語り、支持率が回復に向かうや、胸を張り「政府が扱う森羅万象を全て私が説明できるわけではない」と言ってのける。 だが、共通するのは、いずれにしても相手の質問にまともに答える気がないということだ。そうした安倍首相の答弁スタイルを「信号無視話法」と名づけたのは都内在住の会社員・犬飼淳氏である。「もともと政治には興味がなかったが、国会で1年以上にわたって騒いでいるモリカケ問題では、非常におかしなことが起きているんだろうと感じていました。しかし、テレビのニュースでは問題の本質が見えてこない。新聞は詳しいが、やはりわかりにくい。そこで自分なりにまず安倍首相の国会での説明を視覚化してみようと考えたんです」 犬飼氏は1年半ぶりに開かれた5月30日の党首討論から、首相が質問にまともに回答した部分を「青」、全く聞かれていないことを答えたり、論点のすり替えで誤魔化した部分を「赤」、なぜか質問内容を繰り返したり、解説した部分を「黄」と“信号機”のように色分けしてみた。するといきなり問題の本質が見えてきた。「首相夫人が公務員を使って、財務省に(森友学園への)優遇措置を働きかけるのはいいことか」などと質問した枝野幸男・立憲民主党代表への答弁では、首相は枝野氏の持ち時間19分のうち12分も喋り続けたが、犬飼氏が文字数を計算すると「青」答弁はわずか4%、しかも「政府はコメントする立場にはない」と、内容的にはゼロ回答だった。 志位和夫・日本共産党委員長の「モリカケ問題で文書の改竄、隠蔽、廃棄、虚偽答弁という悪質な行為が起きた理由をどう考えるか」という質問に対しては、なんと「青」答弁がゼロという結果になった。 6月27日に行なわれた2回目の党首討論でも、首相は志位氏の「加計学園が総理の名前を使って巨額の補助金を掠め取ったのではないか」という質問に、約6分間も「赤」「黄」答弁を繰り返した挙げ句、「私はあずかり知らない」とゼロ回答だった。◆説明責任? 何それ? 新聞記者と同じく追及する側の野党党首の実力不足もあるにせよ、この「黄」「赤」ばかり点灯させる信号こそ、真相解明という“車”が立ち往生し、1年以上も国会で堂々めぐりの議論が続いている原因なのだ。「この視覚化で再認識したのは安倍首相がたいへん不誠実な答弁を続けているということです。メディアは今の政治についてもっとわかりやすく報じてほしい」(犬飼氏) 新聞各紙はさすがに30日の党首討論について、「安倍論法もうんざりだ」(朝日)、「政策を競う場として活用せよ」(読売)、「もっと実のある中身に」(日経)と翌31日付の社説で注文を付けているが、“自民党支持者は新聞を読んでいない”とバカにしているから何と言われても響かない。 そればかりか、6月19日、初めて記者会見に応じた首相の「腹心の友」加計孝太郎・加計学園理事長まで、記者の質問に議論のすり替えや「記憶も記録もない」という首相と同じ「信号無視話法」を駆使し、わずか25分で一方的に打ち切った。 安倍首相を筆頭に、佐川宣寿・前国税庁長官、柳瀬唯夫・元総理秘書官、そして加計理事長と“安倍一味”に共通する態度からは、これからこの国の政治腐敗がどれだけ広がろうと、「総理の友人ならおかまいなしで、国民への説明責任もいらない」という信号無視の暴走政治が始まることを示唆している。 安倍首相は今国会2回目の党首討論でついにこんな言葉まで繰り出した。「(党首討論の)歴史的な使命が終わってしまった」 信号無視どころか、信号機を壊し始めたのだ。そして政治の暴走は止まらなくなる。※週刊ポスト2018年7月13日号
2018.07.06 07:00
週刊ポスト
混迷の財務次官人事 有力紙の報道が決定的に割れた理由
混迷の財務次官人事 有力紙の報道が決定的に割れた理由
 一連の霞が関をめぐるスキャンダルは、長くこの国を動かしてきた「官僚政治」の終焉を印象づけた。安倍官邸の一強支配により、権力も権威も失った中央官庁は今、どのように変質しようとしているのか。加計問題を追及した『悪だくみ』で大宅壮一ノンフィクション賞を受賞した森功氏が、霞が関で始まった新たな権力闘争の内幕をレポートする。(文中敬称略) * * *〈財務事務次官に星野主税局長 福田氏の後任、財務省調整〉 朝日新聞をはじめ、全国紙が軒並み財務省の事務次官人事を報じたのが、6月3日の朝刊だった。言うまでもなく例のテレ朝の女性記者に対するセクハラ問題による福田淳一の事務次官辞任を受けた後任人事である。 財務省では、一足先に森友学園の土地取引を巡る公文書改ざんで前国税庁長官の佐川宣寿が辞任している。事務方ナンバー1とナンバー2がそろって空席、という異常事態が続いてきた。それだけに、新聞各紙はむろん、マスメディアが人事の行方に神経を尖らせてきたといえる。 安倍政権に厳しい朝日や毎日だけでなく、政権寄りと見られる読売などが、次期事務次官として現主税局長の星野次彦(58)の名を挙げた。だが、なぜかこの日、日本経済新聞だけが財務省人事に触れない、いわゆる特オチ状態になる。 それから1週間経った10日、その日経が、唐突にこう報じて関係者を驚かせた。〈財務次官に浅川財務官 財務相が方針〉 日経とともに共同通信が、事務次官の最有力候補として財務官の浅川雅嗣(60)と報じたのである。福田の後任事務次官として主税局長の星野を挙げる朝日や読売に対し、財務官の浅川を名指しする日経と共同。7月の定期異動が間近に迫った財務省事務方トップの次官人事で、有力紙の人事報道がこれほど決定的に割れた記憶はない。いったい何が起きているのか。 安倍一強政治の下、首相官邸によって霞が関が支配されているといわれて久しい。支配の対象は、日本最強の頭脳集団といわれる財務省も例外ではない。 図らずもそれを如実に物語っているのが、昨年来の森友学園問題だった。およそ8億円も値引きして国有地を払い下げた財務省は、土地取引における首相夫人と森友学園の不可解な関係に悩んだ末、あたかもそれを隠そうとしたかのような公文書の改ざんに手を染めていった。ときの理財局長だった前国税庁長官の佐川が安倍政権を守り抜こうとして無謀な犯罪行為に走ったのは、誰の目にも明らかだ。 挙げ句、組織そのものが揺らぎ、財務省は解体論まで取り沙汰される始末である。旧大蔵省時代から、ときの政権の政策を導き、首相を動かしてきた財務省は、往年の威光がすっかりナリを潜め、見るも無残というほかない。安倍一強政権に功罪があるとすれば、財務省の体たらくは、間違いなく罪の象徴ではないだろうか。 そんな崩壊寸前の組織をいかに立て直すか。生き残りをかけた組織防衛の必要性に迫られている財務省の難関が、今度の事務次官や国税庁長官の2トップ人事だろう。そしてその人事にも、官邸支配が影を落としている。 通常、7月におこなわれる各省庁の主要幹部の定例人事は、事前に内閣人事局によって選抜され、6月中旬の閣議で決定される。モリカケ問題で揺れていた昨年は例外として、その前年は6月14日の閣議で、新任の事務次官人事が決定されている。だが、今年は大幅に遅れ、いまだ見通しが立っていない。「財務省では、次官はむろん局長や審議官が決まらないので、それ以下の人事がすっかり滞っています。そのせいで7月に予定されていた重要政策会議のスケジュールを後ろ倒しにするよう各部局に通達があったばかり。いつもより2週間遅らせていますが、それでも、いまだトップ人事がどうなるのか、見えてきません」 6月の第3週に取材したある財務省主計畑の中堅幹部は、内情をそう打ち明けてくれた。第二次安倍政権で2014年5月に新設された内閣人事局は、官邸による霞が関支配の力の源泉として知られる。加藤勝信や萩生田光一ら首相の側近代議士が歴代の内閣人事局長を務め、昨年8月から警察庁出身の杉田和博官房副長官にその任のバトンが渡された。官房長官の菅義偉の指揮下、1府12省庁の事務次官や局長、審議官といった幹部600人の人事を一手に握り、官僚たちを震えあがらせてきた。 そこに、官僚による政権への忖度が生じ、森友・加計問題に発展した行政の歪みを露呈してきた。本連載「日本を腐らす暗闇」の第1回はまず、前代未聞の公文書改ざんで揺れた財務省のトップ人事を巡る官邸と財務省の攻防から始める。◆エース温存のためなら「もともと福田さんは、森友問題の責任をとって6月の次官退任という路線が固まっていました。実は5月の黄金週間明けには、官邸に岡本(薫明)主計局長の後任次官就任の原案が提出され、内定する予定でした。ところが、そこへセクハラ問題が起きてしまった。それで完全に人事が狂ってしまったのです」 そう説明するのは、主税畑の別の財務省幹部だ。 財務省では、国家の予算を預かる保守本流の主計畑からの次官就任が、なかば既定路線になってきた。財務省の事務次官レースを勝ち抜くには、主計官、主計局次長、官房長、主計局長といった重要ポストの役職経験が不可欠だとされる。 岡本は2006年から3年間、主計局主計官を務め、2012年に主計局次長、2015年官房長、昨年7月に主計局長の任に就いた。いわば財務省にとって、エース中のエースであり、事務次官就任は、順当な人事といえる。 だが一方で、森友問題が騒ぎになった官房長時代の最後の半年は、国会対応責任者として奔走した。いわば森友問題の当事者だ。 おまけにセクハラ問題のせいで、次官の就任が前倒しになると、着任早々、公文書改ざん問題の調査発表に直面する。ただでさえ、ボロボロになっている財務省で、再起を託されて登板したエースが、火だるまになる危険性があったのだ。 むろんそれは財務省だけの問題ではなく、政権を直撃する。そんな思惑から、官邸が予定された岡本の事務次官就任に難色を示した。先の主税畑の財務省幹部が続ける。「岡本新次官の財務省原案に代わり、官邸の意向で出てきたのが、星野主税局長の次官就任でした。主税局長経験者からの次官就任はイレギュラーですが、大蔵省時代の接待スキャンダル(*)で薄井(信明)さんが国税庁長官を経て1999年に就任したときと状況が似ています。主税局長や国税庁長官はスキャンダルとは縁がないので、適任なのです」【*1998年、大蔵官僚らが銀行や証券会社から「ノーパンしゃぶしゃぶ」などの過剰接待を受けていたことが発覚。7人の官僚が逮捕・起訴された】 いわゆる緊急避難的な1年限りの事務次官のショートリリーフだ。財務省としても、エースである岡本を温存し来年に備えられるので、飲みやすいように思える。 では、なぜ日経が報じたような財務官の浅川の次官抜擢説が飛び出したのか。浅川は主計局勤務も経験しているが、むしろ国際畑が長い。2014年に財務省国際局長、2015年から財務官を務め、国際畑だけに、こちらも身ぎれいだとされるが、理由は別のようだ。「浅川さんを推しているのは、麻生さん。麻生政権時代の首相秘書官だった浅川さんに対する信頼もあるが、それより財務省の守護神を自任している麻生さんは、なんとか組織を立て直したいという思いが強い。財務省サイドからの要請を受け入れたのだと思います」(同前・財務官僚) つまるところ、官邸側の意向として星野の名前が挙がり、財務省側はそれに浅川で対抗しているのだという。 ちなみに岡本は1983年入省で1961年2月生まれの57歳、星野も同期入省だが1959年11月生まれの58歳。浅川は彼らより2年早い1981年入省で1958年1月生まれの60歳だ。解体の危機まで囁かれている財務省としては、この年齢差が大切なのだ、と主税畑の財務官僚(前出)が次のように言う。「とどのつまり財務省は、岡本さんを次官にしなければ組織を立て直せないという思いがある。だから60歳の浅川さんをショートリリーフに立てたい。もし浅川さんがこけたら、次の1年で星野さんが次官になり、その次に岡本さんを持ってくる。そんな形まで考えているはず。今度の問題は1年でほとぼりが冷めるとは限らない。岡本さんにつなげるまでに、そのくらいを想定しているのではないでしょうか」※週刊ポスト2018年7月6日号
2018.06.26 16:00
週刊ポスト
バッシング=正義の風潮強まると他人に危害加わってほしい心理に
バッシング=正義の風潮強まると他人に危害加わってほしい心理に
 森友学園の国有地売却に絡む財務省による公文書改ざん問題で、佐川宣寿・財務省前理財局長や麻生太郎・財務大臣の口から発せられた、忖度やウソ、ごまかしの言葉が世間を揺るがせている。なぜ、大人は嘘ばかりつくのか。「ウソをつくと閻魔様に舌を抜かれる」──幼い頃から聞いたこのことわざを信じるわけではないけれど、悪いことをすれば相応の罰が下される。これは私たちがウソをつかず、ごまかしもしないでいる1つの歯止めになっている。しかし、彼らは違った。何のための法なのか。中央大学法科大学院教授の野村修也さんに聞いた。 * * * 佐川宣寿氏が不起訴になったことに対して、“不起訴ありきだったのではないか”“政権への忖度か”など、不満の声も聞こえますが、あの判断は専門家からすると不自然ではありません。むしろ、起訴されるようなこととなれば、“世論への忖度”を疑います。 しかし逆に、不起訴になったことで「問題はなかった」「みそぎは済んだ」という声を上げるのも間違いです。「法律」と「道徳」の関係性には、“法律は道徳の最小公約数”という考え方があります。道徳という広い規範の中にごく一部、法律で定められ、違反すれば罰則を受けるルールがある。 だけど、罰則を受けなかったからといって、その行為が「正しい」というわけではなく、“悪いことには違いないけど、裁くほどのことではない”ということなんです。多くの人は、道徳と法律の大きさが同じだと思っているから、罰則を受けないことに腹を立てます。 だけれども、悪いことはすべて裁かれるわけではない。だとすれば私たちは、その人に道徳という範囲で、反省させるために、同じことを二度と繰り返さないために、信頼を回復させるために、どうすればいいか、あきらめずに考え、声を上げなくてはいけません。 ウソやごまかしに満ちた社会にウンザリ、といいますが、本当にそうでしょうか。閉塞感の原因はウソやごまかしの蔓延ではなく、ウソやごまかしについての一方向のみの報じ方、捉え方にあるのではないでしょうか。「ウソは悪だ」「ウソつきは悪者だ」と責め立てるだけでは、行き詰まるのは当然のことです。 そんなことよりも、なぜウソをついたのか、その背景にどんな人間関係や、思惑や、正義があったのか。“悪さ”を整理することで、社会で今なにが起こっていて世の中がどっちの方向に向かっているかが見えてきます。例えば、日本大学アメフト部の井上奨・元コーチの“ウソ”については、彼の置かれた立場の難しさや、一方で権力への色気など、彼の思惑に思考を働かせることで、もしかしたら同情の余地もあるかもしれません。 最近、恐ろしいと思うのは、「バッシング=正義」という風潮が強まっていることです。過激な物言いで他者を批判する人が、“物言える人”として支持される。その構図は非常に危険です。 こうした空気が満ちてくることで、人は“他人に危害が加わってほしい”という興味を持つようになり、特に権力を持つ人が地に堕ちれば、自分の気持ちが浄化され溜飲が下がる、という極めて不健全な思考を持つようになります。しかし、それが実は虚しい。この虚しさこそが、ウンザリ、閉塞感の正体なのではないでしょうか。 私たちは、自分の生活の中で、日々起こっていることについて考え尽くすこと、多面的に見ること、考えを洗練させることに力を注ぐべきであり、それが豊かな社会を作ります。ウンザリしていてはもったいないですよ。※女性セブン2018年6月28日号
2018.06.19 16:00
女性セブン
ウソや改ざんがまかり通る社会は一次産業を軽視してきた結果
ウソや改ざんがまかり通る社会は一次産業を軽視してきた結果
 森友問題以降、社会を騒がせる数々の問題に通底するのはウソや改ざん。チームにとって絶対的存在だった日本大学アメフト部・内田正人前監督の発言、財務省幹部だった佐川宣寿氏の改ざん指示問題など、政治や社会の中で枚挙にいとまがない。 そんな社会にもう希望はないのだろうか? ウソがウソを呼び、ごまかしがさらなるごまかしを招く。しかも、誰も悪びれもせず、逆に組織を守ったと礼賛されるとしたら、私たちの信じてきた善悪はひっくり返ってしまう。お寺の長男として生まれ、幼い頃から「信仰」は身近に。仏教に留まらず、他宗教や哲学にまで精通する知見から、この社会の光、救いを作家で僧侶の玄侑宗久さんに聞いた。 * * * トランプ大統領の時代になり、世の中が急速に「フェイク」化しているのは確かだと思います。こうした時代の流れは、私はIT機器の発達と無関係ではないと思います。大統領がTwitterで呟くなど、考えられないことでしたが、SNSという手段そのものが、大統領選挙のときからウソ情報を流すことに貢献してきました。 顔も見えず、発信元もわからない無数のウソ情報の中で、われわれは今生きているような気がします。日本人の「誠実」や「勤勉」が失われたというより、これはnet toolを使うあらゆる人々が世界中で直面している現象ではないでしょうか。 現実に日々向き合う人々にそのような不誠実を感じることは殆んどありません。確かに森友・加計問題や財務省の文書改ざん、防衛省の日報隠しなど、政治や行政においても民主主義の危機と思えることが連続して起きています。財務省の組織的な「ごまかし」については、大阪地検特捜部の起訴を期待していたのですが、それも不起訴。 こうなると、組織を守るための「忖度」を見せつけられたようで、司法まで信じられなくなります。やはり同じ政権が続きすぎると、弊害はいろいろ起こりますね。 日大アメフト部の元監督や元コーチを見てもわかるように、組織を守って「勝つ」ための論理は、恐るべきものです。 組織を健全に保つというのは、本当に難しいことだと思います。どんな個人も、集団のために「滅私奉公」の心がけを持つことは時に必要です。たとえば町内会の川掃除とか、嫌でも出ていった方がいいでしょう。 しかしその集団が大きくなり、権力を持った組織になると、そういった「奉公」が文書改ざんや日報隠しになったり、いわば犯罪的なウソも「奉公」に混じってくるわけです。 それはどうしたら防げるのか、というと、やはり人と人とが顔を突き合わせて面談するに限ります。個々の人間に潜む善意や責任感などが、そこではじわっと滲み出るものでしょう。私はそう信じたいですね。しかし今の政府は、行政手続きなどもどんどんITの世界に委ね、簡略化しようとしています。小人閑居して不善をなす、といいますが、今は誰でもPCやスマホで不善をなしています。 人間に直接危害を与えるよりもそういう犯罪の方が多いんじゃないですか。車の暴走なども、直接危害というより操作上の情緒不安定という側面が大きいように感じます。 もっとも加計問題では、面談したという情報じたいがフェイクだったともいわれています。戦時中はこうした箔のついたウソ情報が世の中を動かしてしまったものですが、今はそれに近いのでしょう。権力が知らぬ間に巨大化し、それを守り奉仕するためウソや改ざんまでがまかり通っている。 最も戦争になってほしくない時ですが、不幸なことに最も戦争準備を進めたかたが総理です。しかし目を転ずれば、田畑も森林も海や川も、少なくとも第一次産業に従事する人々にはウソも改ざんもありえない世界です。 第一次産業を軽んじすぎた結果が、今のこの社会ではないでしょうかね。今も野菜の苗は誠実に育ってますし、木々や魚の成長にもウソはありません。ウソも改ざんもない世界は存在し、そこでは生き物たちが誠実に、ウソもなく生き、成長しています。 私たち人間も、ウソや改ざんのない世界に囲まれて生きてるんです。PCやスマホから少し距離を持てば希望はまだあると思います。※女性セブン2018年6月28日号
2018.06.18 07:00
女性セブン
モリカケ問題「昨日会ったよね」「会ってないよ」的おかしさ
モリカケ問題「昨日会ったよね」「会ってないよ」的おかしさ
 大幅な値引き売却など不正取引の疑惑に始まり、文書廃棄、改ざん、逮捕者や自殺者まで出した森友問題に、ある区切りがついた。 大山鳴動、不起訴38人──5月31日、一連の問題を捜査していた大阪地検特捜部は、文書改ざんを指示したとされる佐川宣寿前国税庁長官らに不起訴処分を下した。2年にわたり世間を騒がせた事件の帰結に落胆する声が出るなか、司法の判断を“お墨付き”とばかりに、政府は問題の幕引きを図ろうとしている。検察にも詳しい、ジャーナリストの青木理さんが言う。「佐川氏らの不起訴に納得できない人は多いでしょう。百歩譲って現行法で裁けないなら、国会は関連法を改正すべきです。また、安倍首相の責任が回避されたわけではなく、首相の職を辞すべきです。何よりも彼は権力に無自覚すぎる。権力の本質的な怖さをまったくわかっていない。“私や妻が関係していたら議員も辞める”“学部新設について理事長と話したことはない”などという軽率なウソや発言が官僚らの忖度を生み、行政が歪み、公文書が改ざんされ、自殺者まで出したのです。それだけ最高権力者の力と責任は重い。その点にあまりに無自覚というだけで職を辞するに値します」 この指摘は、森友問題以降、社会を騒がせる数々の問題に通底する。 チームにとって絶対的存在だった日本大学アメフト部・内田正人前監督の指示、財務省幹部だった佐川氏の改ざん指示など、自身が発する言葉がどんな結果を生むか――そうした想像力の欠如が、忖度、ウソ、ごまかしを派生させている。 一方で、森友問題や加計問題などが長引けば長引くほど、「民主主義の根幹が問われる」「戦前への回帰」「言論の自由が失われている」と、そのスケールは大きくなるばかり。真実が知りたい、これ以上ウソをつかないでほしい、言い訳はやめてほしい、そんな私たちの思いと乖離するように、政争や論争の具になっていくことで、私たちの怒りのエネルギーは行き場を失い、言いようのない閉塞感が充満しているのではないか。「それこそが政権の狙いです。野党やマスコミが追及を続けることに対し、与党内からはもちろん世論からも“いつまでこの問題を取り上げるのか”“もっと大事なことがあるだろう”という声が上がっています。そうした空気が拡散し、いつのまにか幕引きになる。それでは彼らの思うつぼです」(青木さん) 情勢が日々変化する北朝鮮の問題や、トランプ大統領が引き金をひいた貿易問題など、たしかに時間を注力すべき“大事な”問題は山ほどある。ただ、一連の「ウソ」と「ごまかし」にまつわる問題は私たちが生きていく上で、大切にすべき本質にかかわることではないだろうか。「私たち、昨日会ったよね?」「いや、会ってないよ」「こう言ってたよね?」「そんなこと言ってない」──そんなに言うなら証拠や記録はあるの? このやり取りがいかにおかしいか。人と人との信頼関係を根底から破壊してしまうだろう。それが現実に起きてしまっている時代に、私たちはどう生きるべきか、そのことについて考えるべきなのかもしれない。※女性セブン2018年6月28日号
2018.06.14 07:00
女性セブン
経営コンサルタントの大前研一氏
“20世紀型秀才”の末路を象徴する日本の政治家・官僚たち
 21世紀に求められるリーダーとはどんな存在なのか。経営コンサルタントの大前研一氏が、20世紀の秀才タイプではない、答えなき時代のリーダー像について解説する。 * * * これまでたびたび解説してきたように、20世紀は欧米先進国に「答え」があった時代である。だから欧米に追いつき追い越せでやっていればよかった。学校の教室では、勉強ができて最も答えをよく知っている秀才タイプが学級委員や生徒会長になり、リーダーとして皆を引っ張っていた。 しかし、21世紀は答えがない時代である。答えは覚えるものではなく、見つけるものである。なぜなら、答えがわかっている問題はパソコンやスマホで検索すれば、すぐに答えを教えてくれるからだ。 では、答えがわからない問題の答えを、どうやって見つけるのか? そこで極めて重要になるのは新時代のリーダーシップである。 答えがわからない問題の答えを見つけるための具体的な方法は、フラットにつながる集団において、まず答えは何かを議論し、その中から最も答えに近いと思われるアイデアを選択する。そして、それを実行してみようという方向に皆をまとめていく。そういうEQ(心の知能指数)的な能力を含め、発想力や論理力、説得力を駆使して答えを見つけ出していくのが21世紀に求められるリーダーシップであり、これはAIにはできないことである。 そこではピラミッド組織のヒエラルキー(階層)や肩書などは関係ないし、通用しない。答えがあることを前提として、階層や肩書に依存した“20世紀型秀才リーダー”は、21世紀にはリーダーたり得ないのだ。 ところが、今の日本の政治家や官僚は、20世紀型秀才たちの集まりである。たとえば、日本銀行の黒田東彦総裁は「物価上昇率2%」という自分で設定した「答え」に固執した揚げ句、それを実現できる見込みがなくなって撤回する羽目になった。加計学園疑惑の柳瀬唯夫・元首相秘書官や、森友学園問題の佐川宣寿・前国税庁長官ら官僚も、トップである安倍晋三首相を忖度した「答え」が先にありきで、自ら墓穴を掘った。 自民党も国民民主党などの野党も、過去の延長線上に「答え」があるとしか考えていないから、21世紀のビジョンがまるで見えていない。20世紀は決まった答えに向かって程度とスピードを上げればよかったが、誰も答えがわからない21世紀は間違った答えに向かって程度とスピードを上げたら、壁にぶつかるのが早くなるだけだ。 ボート競技のエイトに喩えれば、20世紀は8人のオールの漕ぎ手が重要だったが、21世紀は1人のコックス(舵取り役)が重要なのである。コックス不在で迷走を続ける日本の政治は、まさに壁にぶつかる末路へと突き進んでいるのだ。政治だけでなく、経済も企業も地域社会も同じ運命にあることは言うまでもない。※週刊ポスト2018年6月22日号
2018.06.13 16:00
週刊ポスト
福田前次官や佐川前長官より重い罰を受けた外務省ロシア課長
福田前次官や佐川前長官より重い罰を受けた外務省ロシア課長
 霞が関の“汚染”はどんどん広がっている。財務省のセクハラ前次官、国税庁の改竄前長官の次は、外務省の“殿様課長”のスキャンダルだ。「国家公務員としての信用を損ない、国民全体の奉仕者たるに相応しくない行為があった」 河野太郎外相は6月5日、毛利忠敦・欧州局ロシア課長に「停職9か月」の処分を下したと発表した。 停職9か月というのは20人の大量処分者を出した財務省の誰よりも重い。「おっぱい触っていい?」の福田淳一前事務次官が減給6か月、公文書改竄の佐川宣寿前長官が停職3か月なのだから、それを上回る“量刑”とは一体、何をやらかしたのか。 ところが、河野外相は肝心の容疑について「被害者のプライバシーが……」と明らかにしていない。「国家公務員としての信用を損なった」と言いながら、その給与を負担している国民に不祥事の中身を公表しないのだ。隠せば隠すほど、憶測が広がるのは当然である。〈部下に不倫関係を迫ったようだ〉〈別の女性通訳にもセクハラしたらしい〉──といった情報が省内に飛び交う始末だ。 スキャンダル官僚には共通点がある。いずれも安倍首相のお気に入り人脈で出世したエリートなのだ。 毛利氏も例に漏れない。名前からわかる通り、戦国武将・毛利元就の直系20代目の子孫で、長州藩士を先祖に持つ安倍首相には“旧主筋”にあたる。安倍首相の5月下旬のロシア訪問にも随行、政権が力を入れる北方領土交渉を担ってきた。元レバノン大使の天木直人氏が語る。「外務官僚は海外勤務が長く、外交官特権を持つだけに他の役所より特権意識が強く、スキャンダルになりやすい体質はあるでしょう。ただ、重要な日露交渉を担当してきたロシア課長が、単なるセクハラや不倫でこれほど迅速に重い処分をされるとは思えない。外交にまで影響するような不祥事に発展している問題があるのではないか」 過去には東欧の駐在大使が現地採用の女性職員に執拗なセクハラを繰り返し、あやうく国際問題になりかけたこともある。膿を出しきらない限り、このセクハラ官庁の体質は変わらないだろう。※週刊ポスト2018年6月22日号
2018.06.12 16:00
週刊ポスト
捜査シナリオから消えた佐川立件 特捜検察が官邸に屈した日
捜査シナリオから消えた佐川立件 特捜検察が官邸に屈した日
「佐川が逮捕されれば、官邸まで火の粉が及ぶぞ」──永田町や霞が関が慌てふためいた佐川宣寿・前財務省理財局長の立件は、あっさり見送りとなった。かつて田中角栄、金丸信などの大物政治家を次々と逮捕し、「泣く子も黙る」と恐れられた特捜検察は、いったい何に臆したのか。ノンフィクション作家の森功氏がレポートする。(文中敬称略) * * * 8億2000万円の値引きという森友学園への国有地売却の発覚から1年4か月、不発に終わった大阪地検特捜部の捜査は、すこぶるわかりにくい結末というほかない。なかでも財務省が首相夫人の存在を隠そうとした土地取引に関する決裁文書の改ざんは、300か所にのぼる公文書の“偽造・変造”だが、それがなぜお咎めなしなのか。官邸が捜査を封じ込めたのか。 ごく素朴にそんな疑問が湧くほどの異常事態といえる。その疑問を解くため、捜査状況を改めて振り返る。 大阪地検特捜部による捜査の端緒は、昨年4月、財務省職員に対する告発だった。当初、特捜部が取り組んでいた容疑は、国有地の不当値引きによる「背任」、その背任を裏付ける交渉記録を廃棄した「証拠隠滅」や「公用文書毀棄」などだった。 問題の決裁文書の改ざんはその直前、2月下旬から4月にかけてのことだ。「私と妻がかかわっていれば総理も国会議員も辞める」とした安倍発言を糊塗すべく、都合の悪い部分を消した、と誰もが見る。その改ざん後の決裁文書が、国会会期中に議員たちに公開された。◆データ復元部隊 複数の大阪地検の関係者に聞くと、このときすでに捜査は進んでいたという。「特捜部は、告発直後の4月から財務省や国土交通省の事情聴取を進めていました。背任容疑でしたが、明確な犯意をもって、値引きに応じた立証が難しい。だから捜査は難航していました。そんなときたまたま見つけたのが、決裁文書の改ざんだったのです」 特捜部では、森友学園と交渉してきた財務省近畿財務局のパソコンからデータを押収。その解析を担ったのがDF(デジタル・フォレンディック)センター準備室だ。 DF室はその名称どおりコンピュータの残っているデジタルデータを復元する鑑識部隊だ。奇しくも大阪地検では、大阪地検の証拠改ざん事件(※注)を機に、DFセンター準備室が新設された。特捜部の捜査実務を担ってきた資料課の優秀な4人の事務官たちが配置され、データ解析を進めた。結果、決裁文書の改ざんに行きあたったのである。【※注/2010年9月、障害者郵便制度悪用事件で無罪判決が出た後、大阪地検特捜部の担当主任検事が証拠物件であるフロッピーディスクの内容改竄を行ない、当時の特捜部長・副部長が改竄を知りながら隠蔽したとして、それぞれ逮捕された事件】 それが、国会閉幕中の昨年夏から秋口にかけてのことだ。背任容疑の捜査に手間取っていた大阪地検は、まず先に公文書の変造容疑を固めようとした。先の関係者がこう打ち明けた。「近畿財務局だけではなく、東京に出張して本省の理財局や国交省の事情聴取を進め、少なくとも年内には事実関係を固めていました。霞が関の捜査なので、東京地検や関東周辺の検事を応援に駆り出し、大阪地検の検事が東京地検の分室に出向いて捜査を進めていた」 年明けの2月26日には、大阪高検検事長に上野友慈、大阪地検検事正に北川健太郎が就任。二人とも大阪地検の特捜部経験がある現場の捜査検事だ。この大阪地検のシフトは検察関係者の一部で「二・二六人事」などと呼ばれた。言うまでもなく、皇道派の青年将校たちが、当時の日本陸軍に反旗を翻したクーデター未遂になぞらえた呼び方だ。そこから政権中枢を直撃するように受け取る向きもあった。 だが、その実、大阪地検には、もともとそんな気概はなかったのかもしれない。やがて捜査の空気がしぼんでいった。◆異例中の異例人事 その理由として挙げられるのが、法務・検察の首脳人事だ。「二・二六人事」から遡ること2か月前の12月26日、法務省刑事局長の林真琴に対する名古屋高検検事長への異動が閣議決定された。このときの一連の人事が、森友学園捜査に大きな影を落とすことになる。 法務・検察組織では、事務次官を最高位とする他の霞が関の省庁と首脳人事の序列が異なる。検事総長を頂点に東京高検検事長、その他7つの高検検事長、最高検次長、その下が事務次官という位置づけだ。 検事総長候補と評されるエリート検事の林は、現場の捜査検事からの信頼も厚い。このときの人事で法務省の事務次官になり、続いて東京高検検事長、検事総長という階段をのぼると目されていた。 それが、一足飛びに名古屋高検検事長に就任した。本来、名古屋高検検事長は“あがりポスト”であり、そこで検察の人事が狂ってしまった。法務・検察組織にとって、衝撃的な人事といえた。なぜ、そんなことが起きたのか。「それは官邸、すなわち内閣人事局の影響とみて間違いない」と、ある特捜部長経験者が、こう説明してくれた。「安倍一強で霞が関の幹部人事を牛耳っているといわれる内閣人事局ですが、司法の独立という建前上、検事の人事だけは口を出せないことになっています。だからこそ、政権にとって検察は最も怖い。そこで官邸が頼りにしてきたのが、黒川(弘務)事務次官だといわれています」 法務・検察官僚は赤レンガと呼ばれる法務省と捜査現場の検察庁を行ったり来たりするのが普通だが、黒川は法務省官房長、事務次官を7年も務めてきた。それだけに政権中枢と極めて近い。法務・検察内部では、2年前の2016年、17年とすでに交代案が出ていたが、結局流れ、事務次官として留任してきた。「官邸の守護神」ともいわれる。「黒川君は安倍政権の悲願だった共謀罪法を成立させるため、野党に働きかけてきた。菅官房長官をはじめ最も官邸の覚えめでたい法務官僚だといわれています。だが法務・検察組織としては、さすがにこのときの人事で地方の高検検事長にすることにしていた。ここでそれがひっくり返ったのです」 当然のことながら、黒川を事務次官に留めおこうとすれば、林はほかに異動させるほかない。そこで名古屋高検の検事長にしたのだという。それは法務・検察組織にとって、まさに異例中の異例人事だった。が、まかり通った。 そして、それは大阪地検の森友捜査を封じるためではなかったか。そんな人事に対する不信が検察関係者のあいだから沸き起こる。それも無理のないところだった。この件について、ある大阪地検関係者はこう解説した。「官邸といえども検事総長や高検検事長の検察人事には介入できない。しかし法務省内の事務次官留任なら、内閣人事局の管轄だから、思い通りになる。世間の風当たりを気にしたのか、この人事は表向き上川陽子法務大臣が決めたことになってはいますが、官邸に無断でここまでの人事ができるわけがない。というより、官邸の意思で黒川君を事務次官に留任させたとみたほうが正しいでしょう。ここまで見せつけられると、森友捜査は地検マターではなく、政治判断という話になりますよ」 文字どおり奥の院の謀だけに、特捜部の捜査にどう影響があったのか、真偽のほどは定かではない。ただ現に大阪地検の捜査が、立件に向かわなかったのはたしかだ。「東京から参加した応援検事を4月に元に戻すという異動が決まっていたから、2月中には不起訴の判断が出ていました。『二・二六人事』にはたしかに一部で期待があったが、しょせん大きな流れを変える力なんかない。 なにより特捜部の山本真千子部長などは捜査開始当初からやる気を感じませんでした。彼女は本来、昨年夏の異動が決まっていた。なのに告発があったせいで、いかにも捜査をやらされているような感じ。それでは現場の士気があがるはずもありません」(同地検関係者)◆朝日スクープの影響 そんな折、飛び出したのが、3月2日の朝日新聞朝刊の一面スクープだったのである。前代未聞の公文書改ざんに財務省はもとより政府は青ざめた。 一方、大阪地検もそこから、東京の応援検事の異動延長を決め、いったん捜査を仕切り直した。その後、消された決裁文書から安倍夫人の関与がはっきりと浮かんだのは周知のとおりだ。おまけに財務省が国有地の値引きに関し、森友サイドへ口裏合わせの働きかけをしていた事実まで明るみに出た。 そうして下火になりかけた森友疑惑が、それどころか国民の目には現実の犯罪行為と映った。この間の取材の過程では、ある高検検事長経験者もこうつぶやいた。「捜査の本丸は財務省の背任であり、そこに総理あるいは総理の周辺の共犯関係を立証しなければ、完結しない。その意味でハードルの高い捜査ではあります。しかし、少なくとも財務省の背任は固められたのではないでしょうか。大阪地検は一連の捜査で、文書の改ざんを見つけたが、それはあくまで副産物です。背任に手を染める過程でそこまでして総理周辺を庇おうとしたということを立件できるかどうか。不可能ではない気がしますけど」 仮に佐川を逮捕・起訴すれば、少なくとも公判の中で、なぜ犯行に手を染めたのか、誰の指示があったのか、それらを明らかにしなければならない。換言すれば、大阪地検はそれを避けたともいえる。 朝日新聞のスクープがなければ、この3月に捜査が終結し、財務省の公文書改ざんという罪は世に問われることもなく、密かに闇に葬られた危険性もある。だからこそ非常に意味のある報道ではある。半面、仕切り直したはずの捜査には、さしたる変化はなかった。まさに、政治判断の捜査終結という以外に言葉が見あたらない。 結果として捜査の幕は閉じられた。5月31日、大阪地検特捜部長の山本は、前理財局長の佐川をはじめ告発された財務省関係者ら38人全員の起訴を見送ったと記者発表した。案の定、不起訴の理由は詳らかにせず、「捜査を尽くした」と繰り返す言葉がむなしく響くばかりだった。※週刊ポスト2018年6月22日号
2018.06.11 07:00
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