もう1つ私が面白いと思っているのは、「男性のほうが繊細な乙女、女性のほうが豪胆な武士」という男女キャラの描き分け。男性は悩み葛藤し、女性はサラッとしていてすぐに行動する。これが会社にしろ、家庭にしろ、リアルな現代社会の構図に見えるのです。いわゆる「女性らしさが増す男性と、男性らしさが増す女性」。こんな時代背景があるから、武蔵や牧の振る舞いに違和感を覚えにくいのかもしれません。
当作の世界観が成立するのは、田中圭さん、吉田鋼太郎さん、林遣都さん、眞島秀和さんらの演技が素晴らしいから。一歩間違えたら「苦情殺到」「コントにしか見えない」というハイリスクなコンセプトの作品に、ハイリターンをもたらしています。
最後に余談ですが、インスタグラムのアカウント「武蔵の部屋」は、放送するたびにフォロワーを増やし、現在は約35万人。写真の大半は武蔵が春田を隠し撮りしたものですが、ここにも片想いの楽しさや切なさがあふれています。女性はもちろん男性も一度チェックしてみてはいかがでしょうか。
【木村隆志】
コラムニスト、芸能・テレビ・ドラマ解説者。雑誌やウェブに月20本前後のコラムを提供するほか、『週刊フジテレビ批評』『TBSレビュー』などの批評番組に出演。タレント専門インタビュアーや人間関係コンサルタントとしても活動している。著書に『トップ・インタビュアーの「聴き技」84』『話しかけなくていい!会話術』『独身40男の歩き方』など。