飯田線は景色のいいスポットが多い(JR東海提供)


 3つめの本線は「日豊本線」。小倉(福岡県北九州市)を起点とし、大分~延岡~宮崎~都城を経て鹿児島に至るルートだ。繰り返すが、すべて各駅停車。その途中では、びっくりするような出来事もあったという。

「日豊本線の佐伯(大分県佐伯市)の先、重岡という駅から南に行く下りの鈍行列車は1日1本しかないんです。佐伯発6時18分のみ。だから、前の晩は佐伯に泊まらざるを得ず、予定を立てるのに苦労しました。

 驚いたのが、重岡の次の宗太郎という駅から乗客2人が乗り込んできたこと。この駅は、周りに人家がほとんどない秘境駅だし、どう見ても地元の人ではない。あれは同好の士だな、とすぐわかりました。それにしても、どこに泊まったのか、なぜここで乗るのか。マニアすぎますね」

 傍から見れば似た者同士だが……。今回、「本線」を「乗り通す」という旅をした石坂さんだが、始発駅から終着駅まで乗り通すという哲学は、昨年11月に出雲に行った際にも貫かれた。

「出雲に行くために『サンライズ出雲』に乗ったんですが、だいたい名古屋あたりに住んでいる人が『サンライズ出雲』に乗ろうとすると、浜松から乗ります(注:『サンライズ出雲』は名古屋は通過)。けれども私は始発から乗りたいので、名古屋からきちんと東京まで行って、そこから終点の出雲市駅まで乗りました」

 彼にとっては、それは無駄などではなく楽しみなのだ。

 そんな石坂さんが勤務するのは、東海鉄道事業本部の運輸営業部営業課という部署。JR東海管内の駅の改札や窓口などから寄せられる、切符のルールに関する問い合わせに対応するのが仕事だという。「商売道具は時刻表ですね」というから、まさに天職だろう。プライベートのみならず仕事でも時刻表を眺めていれば、色々な所にでかけたくなってしまいそうだが、幸いなことに近郊にもお気に入りの路線があるそうだ。

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