そして7月上旬、大阪桐蔭が恒例としている東海大相模との練習試合で西野は、Wヘッダーの2試合目でスタメンに抜擢されていた。だが、神奈川の名門校の投手陣に対し良いところなく3三振。気負いがそのまま打席に表れるだけでなく、一塁の守備の不安も露呈し、6回から交代となった。
ほろ苦い“一軍デビュー”の試合後は、落ち込んだ様子で、力なくこう話しただけだった。
「緊張でまったく身体が動きませんでした」
その苦い経験と、この夏の甲子園で「ボールボーイ」として先輩達の偉業を誰より間近で体感できた経験が活きたのが、チームの初戦だった。体重は、入学時の98キロから86キロに。そして、西谷監督からは「軸」として期待されるところまで成長してきた。西野は言う。
「今日は何も気にせず、ただ思いっきりいこうとだけ考えていました。自分の持ち味は遠くに飛ばすこと。フルスイングするだけです」
そしてこの秋の大阪大会2回戦・香里丘戦ではロングリリーフとなった背番号「10」の縄田渉(2年生)が好投した。先輩の柿木蓮や根尾のようなスピードボールはないが、ブレーキの利いたカーブとスライダーで、安定感のあるボールを投げていた。マウンドでは鬼気迫るような表情で雄叫びをあげていたが、試合後はなんとも柔和な表情で報道陣の前に立った。
「僕には(大舞台の)経験がないですけど、シートバッティングなどで日本一の先輩たちを相手に投げていた。その経験を武器にしたい」
投手陣はほかに、エース番号を背負う中田惟斗や1年生の仲三河優太ら、中学時代にU-15侍ジャパンを経験した右腕がいる。