空港を運営する関西エアポートはこうした事態に戸惑いっ放しだ。空港島に取り残された人たちの移送を始めたのは、一夜明けた5日早朝からだ。ここでは滞留者を8000人と修正したが、その時点でも乗客と空港従業員の区別ができていない。
移送手段は110人乗りのフェリーと50人乗りのリムジンバスだ。とりわけリムジンバスのピストン輸送で、対岸の泉佐野まで利用客を運ぼうとした。だが、わずか4km足らずの連絡橋の移送に深夜11時までかかる始末だった。そんな混乱のなかで悲劇も起きた。
「中国領事館から空港に連絡があり、泉佐野まで迎えに行くから団体ツアー客をまとめて運んでほしいと要請があったのです。それで中国人ツアー客は専用バスで橋を渡り、中国領事館はたいそう感謝した。けど、それを知った台湾人旅行者が、なぜ台湾外交部は同じような対応ができなかったのか、と騒ぎだしたのです」(同前)
そしてSNSなどで責められた台北駐大阪経済文化弁事処(領事館に相当)の代表が14日、自殺してしまう。むろん空港側の過失だとはいわないが、移送に手間取り、パニック状態の中で起きた悲劇なのは間違いない。
空港のような公共性の極めて高い交通インフラの運営は難しい。とりわけ災害時には、対策能力が問われる。関空エアポートの元幹部社員は、こう手厳しく指摘した。
「台風21号では、まさに関空のお粗末さを露呈したといえます。一つは責任の所在の曖昧さ。空港運営のノウハウを仏のヴァンシに頼りながら、オリックスから来ている山谷社長が運営の責任を負うことになっている。2頭立ての体制で、どちらが陣頭指揮をとるのかさえはっきりしてない。ふだんの運営もそうですが、災害時の連絡や広報でとくにその拙さを露呈してしまったわけです」
◆「何、まごまごやってるんだ」