国内

『孤独のグルメ』久住昌之氏が「おもろい」と大絶賛した猫漫画

『孤独のグルメ』の久住昌之氏も大絶賛

 老姉妹猫「トラ」と「ミケ」が切り盛りするどて屋「トラとミケ」を舞台に描かれる美味しいコミック『トラとミケ いとしい日々』(ねこまき作)が、このたび発売になった。女性セブンでの連載時にはモノクロだったものが単行本化にあたってフルカラーになり、その淡く美しい色遣いも相まって、早くも話題沸騰。『孤独のグルメ』原作者の久住昌之さんはこの変わり種グルメ漫画をどう読んだのだろうか?

 * * *

 いやー、面白かった。

 ほのぼの。と、言うのとも違うな。
 のんびり。ともちょっと違う。
 のんき、が近いかな。

 ひと言では、とても表現できないんだけど、なんとも言えず、おもろい。そう、すごく、おもろい。

「おもろい」という言葉の響きには、切なさや悲哀や涙の倍音が、ちょっぴり混ざっている。そこが「おもしろい」とはほんの少し違う。「トラとミケ」は、ほんまに、おもろい。

 ボクは、たまたま最近大阪にライヴをしに行って、大阪の街を歩いて、うどん屋に入ったり、飲み屋に寄ったりしてきたので、なんだかこのマンガの空気感、言葉のテンポが、生々しく心地いい。

 もう寅さんはいない。寺内貫太郎も、樹木希林も、植木等もいない。みんなおもしろかった。

 このマンガには、平成の世が30年かけて叩きつぶしてデジタル化してしまった、庶民の日常と人情が、鮮やかに描かれてる。二人の猫が、ムクムクでコロコロで、おばあちゃんというのに実にかわいいのは、現実の猫と一緒だ。

 だがこの作家の力は、実は背景にある。自宅や、店の中の描写がすばらしい。

 静かで、正確で、あたたかみがある。

 いや、「あたたかみ」なんてテキトーな表現をしてると、後半の蒸気機関車の描写に、横っ面を引っぱたかれる。柔らかい鉛筆で描かれたものなのに、鉄の質感と重量感とみっしり感が、ズシンと伝わってくる。昔のかき氷機も、その魅力が、ありのままに描かれていてタマラナイ。

 カメラアングルも、まるで小津安二郎の映画のように、しっかり計算され、落ち着いている。描くのが難しい、狭い店内や列車の中も、作者の目玉は自由自在に動き回って、描写している。

 この背景の中に棲んでいるからこそ、トラとミケは活き活きと動き回り、するりと読者の心の隙間に入り込んでくるのだ。

 どて屋の食べ物の、どれもこれもおいしそうなこと。この店に、ボクは行きたい。夏の明るいうち、店が開いたばかりのところに入って、どて煮をアテに、ビールを飲みたい。

 ここの常連さんたちの会話を、聞くともなく聞いていたい。あと、お銚子を一本飲んで、長居しないで帰る。

関連記事

トピックス

長所は「どこでも寝られるところ」だと分析された(4月、東京・八王子市。時事通信フォト)
愛子さま、歓迎会の翌日の朝に遅刻し「起きられませんでした」と謝罪 “時間管理”は雅子さまと共通の課題
NEWSポストセブン
日本中を震撼させた事件の初公判が行われた
【悲劇の発端】瑠奈被告(30)は「女だと思ってたらおじさんだった」と怒り…母は被害者と会わないよう「組長の娘」という架空シナリオ作成 ススキノ事件初公判
NEWSポストセブン
中村芝翫と三田寛子
《愛人との半同棲先で修羅場》それでも三田寛子が中村芝翫から離れない理由「夫婦をつなぎとめる一通の手紙」
NEWSポストセブン
田村瑠奈被告
【父親とSMプレイの練習していた】瑠奈被告(30)の「女王様になりたい」に従った従順な両親の罪
NEWSポストセブン
松岡茉優と有岡大貴
【8年交際の全貌】Hey!Say!JUMP有岡大貴と松岡茉優が結婚「この春、引っ越した超こだわりの新居」
NEWSポストセブン
藤井聡太八冠、満員電車で予期せぬハプニング 隣に座った女性が頭をカックンカックン…冷静な対応で見せた“強メンタル”
藤井聡太八冠、満員電車で予期せぬハプニング 隣に座った女性が頭をカックンカックン…冷静な対応で見せた“強メンタル”
女性セブン
佳子さま
【不適切なクレームが増加?】佳子さまがギリシャ訪問中に着用のプチプライス“ロイヤルブルーのニット”が完売 それでもブランドが喜べない理由
女性セブン
田村瑠奈被告
【戦慄の寝室】瑠奈被告(30)は「目玉入りのガラス瓶、見て!」と母の寝床近くに置き…「頭部からくり抜かれた眼球」浩子被告は耐えられず ススキノ事件初公判
NEWSポストセブン
中村芝翫と三田寛子(インスタグラムより)
《三田寛子が中村芝翫の愛人との“半同棲先”に突入》「もっとしっかりしなさいよ!」修羅場に響いた妻の怒声、4度目不倫に“仏の顔も3度まで”
NEWSポストセブン
中村七之助の熱愛が発覚
【独占スクープ】中村七之助が京都のナンバーワン芸妓と熱愛、家族公認の仲 本人は「芸達者ですし、真面目なかた」と認める
女性セブン
日本中を震撼させた事件の初公判が行われた
【絶望の浴室】瑠奈被告(30)が「おじさんの頭持って帰ってきた」…頭部を見た母は「この世の地獄がここにある」 ススキノ事件初公判
NEWSポストセブン
杏が日本で入院していた
杏が日本で極秘入院、ワンオペ育児と仕事で限界に ひっきりなしに仕事のオファーも数日間の休みを決断か
女性セブン