現在は大半のバラエティがロケ休止に追い込まれ、『有吉の壁』も例外ではなく放送休止のリスクを抱えています。しかし、ギャグつなぎや各芸人のYouTubeチャンネルを見ればわかるように、外出自粛して時間にゆとりのある芸人が多いのは間違いないでしょう。挑戦的かつ自由度の高い『有吉の壁』なら、リモート出演でのショートコントや一発ギャグなども含め、「さまざまな形で笑いを届けてくれるのではないか」という期待感を抱かせてくれます。
『有吉の壁』に限らず、外出自粛で在宅率が最大級になっている現在の状況は、テレビ局にとって大きなチャンス。在宅率が高まるほどニーズも高まり、視聴者を笑わせた分だけ「テレビは面白いもの」と再評価される可能性を秘めています。また、裏を返せば、純お笑い番組で視聴者を笑わせるほど外出自粛に貢献して、新型コロナウイルス感染の収束につながるかもしれません。
ただ現在は、あらゆる番組の収録すらままならない状況だけに、すぐに純お笑い番組が増えることはないでしょう。それでも『有吉の壁』が業界内に与えたインパクトは大きく、早くも知人のテレビマンたちから「ウチもあんなお笑い番組を作りたい」「『何とかできないものか』と考えはじめている」という声を聞きました。
新型コロナウイルス感染が収束に向かったころ、純お笑い番組が徐々に増えていけば……現在のバラエティに不満があってテレビから遠ざかっていた人々を少しずつ呼び戻せるのではないでしょうか。
【木村隆志】
コラムニスト、芸能・テレビ・ドラマ解説者。雑誌やウェブに月20本超のコラムを提供するほか、『週刊フジテレビ批評』などの批評番組に出演。タレント専門インタビュアーや人間関係コンサルタントとしても活動している。著書に『トップ・インタビュアーの「聴き技」84』『話しかけなくていい!会話術』『独身40男の歩き方』など。