血栓とは、血管内でつくられる血の塊のこと。新型コロナの大きな特徴として、この血栓が血管を閉塞し、臓器障害を引き起こすことがあげられる。2020年12月には厚労省が、厚労省の研究班と日本血栓止血学会などの調査チームによるデータ解析の結果として、新型コロナ患者6082人中、105人が脳梗塞などの血栓症を発症したとの調査結果を公表している。これは全体の1.85%にあたる。

 詳しく見ると、血栓症の発症数は軽症と中等症の患者において31例で0.59%、人工呼吸器やECMOを使用中の重症者では50例で13.2%を占めた。血栓ができた場所は、最も多かったのが足、次いで肺、脳の順だった。

「新型コロナウイルスは血管内皮に感染して炎症を起こし、微小血管などで血栓ができやすくなるとされています。血栓は動脈にも静脈にもできます。動脈でできた血栓は脳や心臓、肺の血管に詰まって脳梗塞や心筋梗塞、肺塞栓症を引き起こし、静脈にできた血栓は深部静脈血栓症を引き起こすのです」(平山さん)

 田中のくも膜下出血や脳梗塞が、新型コロナの影響で増加した血栓によるものかどうかは断定できないが、平山さんによると、新型コロナの後遺症は単一の病気ではなく、さまざまな要因が組み合わさった、複合的なものだとされているという。

「イギリスの国立衛生研究所は新型コロナを“Long COVID”と呼んで、長期的な病態の解明に取り組んでいます。それにより、後遺症によって引き起こされる症状は、単一の病気ではなく4つの病態が複雑に絡み合ったものだと考えられることがわかってきました」

 1つ目は心臓、脳などへの「恒久的な障害」。2つ目は集中治療室での治療後に生ずる、身体的、精神的障害(PTSD)をさす「集中治療後症候群」。3つ目は「ウイルス感染後疲労症候群」で、急性期ではなく回復後に出てくる症状だ。

「昨年放送されたNHKの番組(※『視点・論点 新型コロナ後遺症と今後の課題 2020年12月21日放送』)ではこのような調査が紹介されました。フランスで行われた、発症から110日後の患者に対する電話による聞き取り調査で、約3割の人に脱毛、記憶障害、睡眠障害、集中力低下などの症状が見られたことが報告されており、日本でも同じような症状が発現しています。

 ただ、これらの症状に関しては、ウイルスによる直接的な影響ではなく、回復後を含む、感染による肉体的・精神的ストレスによって起きている可能性も指摘されています」(平山さん)

 4つ目は急性期の症状が長引く「持続する影響」で、特に肺の機能低下と関係する症状が多いという。

「新型コロナによって重い肺炎を引き起こした場合、その肺炎が治る際に肺の細胞の壁が硬くなり、『線維化』などを引き起こします」(平山さん)

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