その後、『俺たちの旅』は十年おきにスペシャル版が制作され、彼らのその後が描かれた。
「十年後に、たとえば中村君と会うわけです。すると、お互いどう成長しているのか気になりますよね。ですから、最初に見つめ合って芝居するシーンは毎回ドキドキしていました。見透かされるような気がして。
ただ、それが過ぎると十年も経っていないような気がして──不思議ですよね。
僕は『俺たちの旅』がなかったら、おそらく今は俳優をやっていないんじゃないですかね。そのくらい大事な、歌手にとっての大ヒット曲のようなものです。その前も『青春の門』などのいい作品をたくさんいただきましたが、やっぱり全国区にしてくれたのは、これですから」
【プロフィール】
春日太一(かすが・たいち)/1977年、東京都生まれ。主な著書に『天才 勝新太郎』『鬼才 五社英雄の生涯』(ともに文藝春秋刊)、『なぜ時代劇は滅びるのか』(新潮社刊)など。本連載をまとめた『すべての道は役者に通ず』(小学館)が発売中。
撮影/藤岡雅樹
※週刊ポスト2021年5月7・14日号