そんな宗光の闘いを見守る楯岡や久住や篠田も含め、各々の思いが交錯する法廷シーンは、まさに見物だ。

「いやいや。私も法廷物は映画も含めて大好きですが、自分ではもうこりごりと思うくらい大変でしたね。ただ、これだけ暴力系な方々がいる中で、法による闘いに拘る宗光の心理は、私もわかる気がするんです。何らかの敵に法律家は法で斬り込むしかなく、それは小説家も同じこと。自分も含めた人間や社会に対する怒りや悲しみ、あるかなしかの希望も含めて、作品に昇華させるしかないので」

 そもそも法とは法だけを意味せず、宗光やマリクや楯岡達が様々な矛盾を生きながらもこれだけはと芯に持つ何か、守りたい何かを、この物語に読んだ気もした。

【プロフィール】
月村了衛(つきむら・りょうえ)/1963年大阪府生まれ。早稲田大学第一文学部文芸学科卒。2010年『機龍警察』で小説デビュー。2012年『機龍警察 自爆条項』で日本SF大賞、2013年『機龍警察 暗黒市場』で吉川英治文学新人賞、2015年『コルトM1851残月』で大藪春彦賞、『土漠の花』で日本推理作家協会賞、2019年『欺す衆生』で山田風太郎賞。著書に『影の中の影』『水戸黄門 天下の副編集長』『ガンルージュ』『東京輪舞』『暗鬼夜行』『奈落で踊れ』『白日』等。176cm、62kg、A型。

構成/橋本紀子 撮影/国府田利光

※週刊ポスト2021年6月4日号

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