西武戦の苦手意識を持たなかった移籍組
長嶋茂雄監督が就任した1993年、ようやく連敗が止まる。西武球場で行われた3月20日のオープン戦、先発の槙原寛己が6回1失点と好投。4回にヤクルトから移籍の長嶋一茂が同点打を放つと、7回に駒田徳広のソロで勝ち越し。8回には原辰徳、9回には古巣相手に大久保博元がアーチをかけ、最後は石毛博史が締めて4対1で勝利をもぎ取った。
この日は試合前のミーティングでチームリーダーの原が『今日は絶対に勝とうぜ』と喝を入れ、試合後に長嶋監督が『7回1死満塁、元木のところで代打・岡崎を出すべきだった。俺のミスだな』と語るなど、オープン戦にもかかわらず本気で勝ちに行っていた。
「この年、巨人は西武とのオープン戦6試合に3勝2敗1分と勝ち越し。翌1994年は3勝1分と負けなしでした。同年、中日との同率で迎えた最終戦の『10.8決戦』に勝って優勝し、日本シリーズで初めて西武を破った。『10.8』の勢いも大きかったが、オープン戦で西武への苦手意識が消えていた影響も少なからずあったでしょう」
1993年の対西武2戦目では長嶋一茂が工藤公康から勝ち越し2点タイムリーを放ち、4対1で勝利。2勝2敗1分で迎えた6戦目の3月29日には、1990年の4連敗を知らない元木大介が初回にモスビーを三塁に置いて先制タイムリー、4回には2死満塁からレフトオーバーの勝ち越し2点タイムリーと3打点を叩き出し、7対3で勝利。オープン戦とはいえ、対西武戦の勝ち越しを決めた。
1994年のオープン戦では、3月20日の初戦は中日からFA移籍の落合博満、新外国人コトーが1打点ずつを挙げ、2対2の引き分け。21日には4回に原、大森剛の連続タイムリーで逆転し、7対1で快勝。27日には、工藤公康から落合が先制アーチ、コトーが勝ち越し2ランを浴びせ、13対2と圧倒。28日は、新外国人グラッデンが先頭打者ホームラン、7回には落合が4点目のタイムリーを放ち、4対3で勝った。
「1993年は移籍組の一茂、大久保、若手の元木という空気に飲まれない選手たちの活躍があった。1994年は西武コンプレックスを持たない落合やコトー、グラッデンという新戦力が貴重な一打でチームを勢い付かせた」