「自信がない人ほど欲する」
しかし、多くの友人に囲まれてアクティブに過ごすことが「勝ち組」というイメージに縛られている人も少なくはない。芸能界から財界まで幅広く交流のあるファッションデザイナーのドン小西氏(70)はこう話す。
「僕ら世代のリタイヤ組は毎日食事会だゴルフだとやってきたけど、いざ職を離れると誰からも『会いたい』とは言われなくなって一気に交友関係がなくなっている。仕事がすべてだった人が多いから落差がすごいんだよ。
自分に自信がない人ほど人脈やモノを収集しようとする。だからいまだに学校の同窓会なんかにしがみついて仲間を気取ってみたり、ちょっとした繋がりしかないのに無理して『○○会をしよう』『旅行しましょう』と一生懸命集まろうとする。“残された人生を謳歌しよう”を合言葉みたいにしてさ。僕はもれなく断わっているけど、そういう老後の友達作りに必死な人が増えているね」
高齢者に友人がいないことが社会問題として騒がれることによって、「友人を増やさなければ」と焦ってくる人もいるだろう。『弘兼流 60歳からの手ぶら人生』など中高年の生き方に関する著書も多い漫画家の弘兼憲史氏(73)が語る。
「仕事を辞めて交友関係がなくなったから、今後は地域社会に参加しようとなっても、特に男性の場合はそれまで地域行事に参加するような人は稀ですから知らないことばかりでしょう。
新たに友人を作ろうとしても、その地域の人と気が合わないこともありますし、無理して友人を作ろうとしたコミュニティに危険が潜んでいることだってあり得る。
60過ぎて必要のない友人をわざわざ増やすようなことは避けたいものです」
友人ができないのではなく、いらないだけ――それも一つの生き方だ。
※週刊ポスト2021年7月9日号