鈴木:ヤクザには社会からはみ出し、ヤクザとしても中途半端の、どうしようもないヤツもたくさんいる。真鍋さんの作品には、今まで描かれてこなかったダメな人たちが出てきますよね。
真鍋:今まではそんな人を描いても面白いと思われなかったんでしょうね。一日中パチスロしている人とか。
鈴木:ダメなヤツの、スカのような人生のほうが、人間らしさが剥き出しになりますよね。密漁取材をはじめた頃に、ある密漁チームにいた女性と出会って「黒いあまちゃん」と名付けたんです。2年後に再開したら売春婦になっていた。浪費癖で借金まみれになって、暴力団から高利で金を借りている。人間はひょんなことで墜ちます。自分だって金に詰まって、暴力団しか助けてくれなければ頼るでしょう。ただ法律を守っているだけの自分が、必死で生きている人を非難できるのか。
真鍋:鈴木さんは『ヤクザと原発』の取材で原発に潜入したりもしていますよね。
鈴木:まともに張り合ったら負けちゃうので。なにせ不景気の今でもサツ廻りの記者はハイヤーですし。
真鍋:鈴木さんは自分でバイク運転して行っているのに(笑)。勝手な印象ですけど、鈴木さんは小学校の頃にクワガタを獲りに行くとか宝箱を探すとか、そういう感覚でそこに面白いと思うものがあったらワーッと行って、それを書いている感じがします。
鈴木:『ウシジマくん』の実写版を観に行っている感じかもです。暴力団にカマシ(脅し)を入れられてる時、相手が有名な武闘派だったりすると、「俺は今、オリンピック級の脅しを実体験している!」と感動します。心は削れますが。
真鍋:VR(仮想現実)なんて比較にならない興奮なんでしょうね(笑)。