遺言書の効力は大きい。だが、亜星さんのケースのように「すべてをこの人に」という遺言の場合、ほかの相続人に認められる権利もある。
「遺言があっても、法定相続人が最低限の遺産を受け取れるようにする『遺留分』という制度があります。遺言書の内容が、ある相続人に遺産を相続させないようなものだったとしても、遺留分侵害請求をすることで、その相続人は最終的に法定相続分の2分の1を得ることができます」(前出・長井氏)
今回のケースの場合、遺留分は相続財産の2分の1となる。そのうち、妻であるA子さんに2分の1、子供に2分の1が認められることになり、その“子供の分”を長男と朝夫氏の2人で分けることになるので、朝夫氏には全相続財産の8分の1が認められることになる。
すべて弁護士に任せています
前述した遺言の内容や遺産の分け方は、朝夫氏の言い分によるところが大きい。実際のところはどうだったのか。『女性セブン』は、亜星さんから相続した自宅で暮らすA子さんを訪ねた。前出の音楽関係者によると、A子さんと朝夫氏は血のつながりはないながらも「亜星さんの晩年は、関係も良好だった」と話す。ところが、遺言書の内容と朝夫氏の不満についてA子さんに話題を向けると、
「おつきあいがないので……。すべて弁護士さんに任せていますし、こちらには何も言ってきていません」と言葉少なだった。一方、朝夫氏にもSNSなどを通して取材を試みたが、締切までに返答はなかった。
かつて、還暦を過ぎた亜星さんは『妻への遺言 夫への遺言』と題した雑誌のインタビューで、A子さんに対して次のように話していた。
《何歳まで生きられるかわからないけど、それまではせいぜい有り金は2人で使い切ってしまおうよ》(『週刊宝石』1998年3月12日号)
その言葉とは裏腹に、亡き後のことまで気を回して財産を残した亜星さんの気持ちはいかばかりか。
※女性セブン2021年11月25日号