「漫画のようだった」羽生結弦選手の衝撃
フィギュアスケート漫画の主戦場にも変化が見られる。昔は少女漫画誌が中心だったが、今は少年漫画誌での連載も珍しくない。男子選手を物語の中心に据えた漫画も増えてきた。主人公が4回転半アクセルを跳ぶ(これも、現実が漫画に追いつきつつある…)『ブリザードアクセル』はじめ、『銀盤男子』『プラチナソナタ』など。この背景には言うまでもなく「男子の活躍がある」と、小田さんは語る。
「昔から見ているファンからすると、今の状況って本当に信じられないです。羽生さん、宇野さん、鍵山さん、日本の男子シングル代表選手が3人とも五輪で台乗りの可能性のある時代が来るとは……すごいですよね」
なかでも、北京で3連覇を狙う羽生結弦選手の登場は、多くのファンに衝撃を与えた。それを表現したのが、グレゴリ青山さんの『スケオタデイズ』だ。先にスポーツ漫画は多視点化していると書いたように、この漫画は、ファン(=スケオタ)視点で描かれており、ファンの“あるある”が詰まっている。
「羽生さんのニースの世界選手権での鮮烈な演技に衝撃を受ける場面から始まります。あの演技は僕も見ていたけど、当時17歳という若さ、技術、熱量……、本当に漫画のようでした(笑)。『スケオタデイズ』は競技そのものより見る側のスケオタにスポットライトを当てたエッセイコミックで、名手グレゴリ青山先生の視点がいちいち面白いので、スケオタは必読です」(小田さん)
最後にもう一冊、小田さんは忘れがたい傑作漫画として、おおやちきさんの『雪割草』(現在は『キャンディとチョコボンボン』に収録)を挙げた。
「おおやちき先生は非常に寡作の上に、すでに漫画家としては筆を折っていることもあって、これは少女漫画ファンに深く刻み込まれている伝説の名作と言っていいでしょう。ドラマチックな展開と画力の高さが素晴らしい。機会があったぜひ読んでいただきたいと思います」
ビジュアルを楽しむのも漫画の醍醐味。美しい画を眺めながら、推しの選手に似合いそうなコスチュームやポージングを探すのも一興ではないか。