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フィギュアスケート漫画にはなぜ「傑作」が多いのか

グレゴリ青山さんの『スケオタデイズ』でも描かれた、羽生結弦選手、伝説のロミオとジュリエット(2012年ニースの世界選手権、時事通信フォト)

グレゴリ青山さんの『スケオタデイズ』でも描かれた、羽生結弦選手、伝説のロミオとジュリエット(2012年ニースの世界選手権、時事通信フォト)

スポーツ漫画の主役は「選手」から、「コーチ」「ファン」へ……深掘りの時代

 荒川静香さんのトリノ金メダル、高橋大輔選手のバンクーバー銅メダル、浅田真央さんの銀メダル、羽生結弦選手の2大会連続金メダル、そして北京──フィギュアスケート人気の高まりにつれて、現実を先んじてきた漫画はどう変わったか。小田さんは3点を指摘する。

「第1に、掘り下げ方が変わってきたと思います。私は現在『アフタヌーン』で連載中の『メダリスト』を連載開始から読んでいますが、ノービス(ジュニアの下のクラス)から始まっているんです。槇村先生の『モーメント』もそうですね。最近は各地域の育成システムが描かれるなど、解像度がすごく上がっているなと感じます。『メダリスト』の連載最新号ではトリプルルッツ+トリプルループのコンビネーションが出てきたりして、リアルだなとも感じました」

 現実の先取りから、リアルを追求した「深掘りへ」。小田氏は第2に、スポーツ漫画全般に見られる変化を指摘する。

「『ジャイアントキリング』という人気サッカー漫画は、主に監督目線で描かれています。昔のスポーツ漫画は主に『選手』目線でしたが、今は選手だけでなく、『コーチ』や『観客』といった複数の視点を持ち、かつ、深く掘り下げ、専門的な知識も正確に取り入れるようになってきました。これが最近のスポーツ漫画の特徴だと思います」

『メダリスト』は、大成しなかった元選手がコーチとなり、選手と共に夢を追いかける物語である。スポーツの主役は選手だけではなくなっているのだ。

 そして3つ目が、ディテールへのこだわりだ。

「『メダリスト』は、着氷の描写がすごいんです。着氷した瞬間のエッジの動きがよく表現されていて、まるで音が聞こえてくるよう。ジャンプは『跳ぶ』ものではなく、『降りる』ものですから! 実際に間近で取材して描かれているんだろうなと思います」

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