重症化すれば深刻な症状に悩まされる

重症化すれば深刻な症状に悩まされる(イメージ)

男性器にカテーテル

 脊柱管狭窄症や椎間板ヘルニアが足腰の痛みだけでなく排泄障害まで引き起こすカギは、「神経」にある。久我山整形外科ペインクリニック院長の佐々木政幸氏が語る。

「脊柱管狭窄症は腰椎の神経の通り道である脊柱管という管が狭くなることで、内部の神経が圧迫され痛みを引き起こす病気です。腰椎部分の神経は腰から下肢へと繋がっており、この部分の神経の圧迫や損傷が起きると、脚への痛みやしびれだけでなくやがて排泄機能にも影響が出る。尿意や便意が正しく伝わらなくなるのです。椎間板ヘルニアが排泄障害に繋がるのも同様の理由です」

 腰椎の神経の圧迫や損傷によって便や尿に障害が出る症状は「膀胱直腸障害」と呼ばれる。前出の宮川は「フン詰まりに加えて、下痢や切れ痔にも悩まされた」というが、排便だけでなく排尿障害も悩ましい症状を引き起こす。

「脳から膀胱への指令が上手く伝わらず、頻尿や尿の切れが悪くなったり、残尿感を覚えるといった症状が起きます」(佐々木氏)

 都内在住の元会社員男性Aさん(68)も、脊柱管狭窄症で排尿障害に悩まされる一人。最初に感じたのは膝のしびれだった。

「2年前から、どうにも今まで通りに歩けない。街に出かけても、連れと一緒に歩くとスピードについていけず、電車で立っているのもつらい。ちょっと歩くと休憩。また歩いて休憩。その繰り返しです。整形外科に行って検査を受けたら、脊柱管狭窄症と診断されました」(Aさん)

 病院での理学療養に加え、1回1万円近くかかる鍼灸、カイロプラクティックなど様々な治療法を試したが、歩行困難は治らなかった。

 そのうちにやってきたのが排尿障害だった。

「わずかに尿意はあるんだけど、チョロチョロとしか出ない。しかも2時間おきに尿意が生じる。どうにも困ってまた病院に行ったら『これも脊柱管狭窄症の症状』と言われた。膀胱がパンパンなのに、神経が圧迫されて、尿意が上手く伝わらなくなっているんだと。小さな尿意が断続的にやって来て、夜も眠れない」(同前)

 治療法のひとつに背骨を削る「椎弓切除」という手術が残されていたが、Aさんは受けることができなかった。過去に脳動脈瘤の治療をして以来、抗血栓薬を服用しており、外科手術をすれば血が止まらなくなる恐れがあったからだ。

 そこでやむなく、対症療法に取り組んだ。

「今は医者から渡された30cmほどのカテーテルをチンコの先っちょから尿道に入れて、無理矢理尿を出している。広いスペースで座らないとできないので、お風呂場でまず計量カップに出し、それをトイレに捨てるのです。これを朝から晩まで何度も。おしっこが気になって、1時間以上の電車の移動ができなくなりました。寂しく、情けない日常です」

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