ところがある組では、組長の姉さんが店をやっており、そこのジャージは5万円ぐらいしたと幹部は話す。
「店に連れて行かれ、上の者に『おい、こうたれや』と言われると、『あぁ、わかりました』って、顔では笑って見せるんだ。ジャージで5万だよ。そこら辺のブランド品より高かったんだが、みんなそこで金を落としていく。それが当たり前の世界で、絶対に嫌とは言えないからね」
代紋入りグッズだけでなく日用品も
グッズ販売には日用品もあったという。
「水とかトイレットペーパーとか、買わされた時はまいった」と語るのは、ある指定暴力団の元幹部だ。
「本部に行けば、購入したグラフが貼り出されていたから、どこの組が何セット買ったかが一目でわかった」
各組が当番に行った時、その月の購入金額がわかるようにしてあったのだ。他の組より少なければ、すぐに組に電話を入れる。
「おい、今月、足りないぞ。あと10ケース買っておけ」と注文させるが、事務所に置いておくスペースがなく、駐車場に車ではなく水を置いていたこともあったという。
「その当時は、まだゴルフコンペができたから、洗剤などは洗濯セットとして景品で出せた。それがないと消化できなかった」と元幹部はいうが、困ったのは水だという。
「500mlのペットボトルを1本120円で買わされた。シマ内の飲食店には赤字で卸すしかなかった。クラブやバーも高級店なら客の前でペットボトルの口を開けるが、下町などのある店では中身は水道水。ペットボトルは飾りでしかなく、なくなったら水道水を入れていたんだから、ペットボトルも売れやしない」
空いたペットボトルに水道水を入れると、内側に水滴がついくだろう。それを取るのに割り箸に輪ゴムをつけて、内側をビューっとこすって、ついた水を取っていたと元幹部は笑う。
「水割りに水を入れるんだから、水の味なんてわかんないぞって理屈だね。知り合いがくると、きちんとそのペットボトルを出していた。出さないと怒られたからね」
グッズ販売は山口組が分裂する前頃から自然と減っていったが、最後まであったのは水。暴力団の本部が傘下の組に日用品を販売するためにあった会社は暴対法によってなくなり、今は組から購入しているものはないという。
「日用品の購入がなくなって、組は楽になった」という元幹部。暴対法が傘下の組の状況を楽にさせる結果になったとは、皮肉なものだ。