「幼稚園のクラスにコロナ陽性者が出て、その数日後に息子が発熱。コロナは子供では重症化しないといわれているのに、泣き叫ぶほどの高熱が続きました。検査ではコロナだけでなく、インフルエンザも陽性。“子供は無症状が多いから大丈夫”と、高をくくっていたら、大変な目に遭いました」
医療ガバナンス研究所理事長で医師の上昌広さんが指摘する。
「症状だけではどちらに感染しているのかが判別できず、混乱する医療機関も多いでしょう。新型コロナにもインフルエンザにも同時にかかる、しかも重い症状が出るなんて、いままでの常識ではほとんどあり得ないことでした。しかし、実際にダブル感染する人は少なくない数で増えています。想定外の異常な冬が到来したと警戒すべきです」
感染者は1日75万人超え
東京都では11月中旬に、1日当たりのコロナの新規感染者数が2か月ぶりに1万人を超え、その後も増え続けている。全国でも10万人の大台に乗り、多くの専門家が第8波に入ったとみている。
新型コロナウイルスは変異を繰り返してきた。現在はオミクロン株の「BA.5」が主流で、さらに新しい変異株が各国で報告されている。アジアで流行する「XBB」、欧米の「BQ.1」、「BQ.1.1」も勢いを増し、国内での感染も確認されている。それらの変異株は、免疫をすり抜ける「免疫逃避」の傾向が強く、感染力が高いとされている。
第8波のピークと予想されている年末年始には、東京都では1日の感染者数が、「第7波」の最盛期よりも約1万人多い、5万人に達するとの見方もある。コロナだけでも深刻な状況なのに、追い打ちをかけるのが3年ぶりとなるインフルエンザ流行の兆しだ。医師で昭和大学客員教授(臨床感染症学)の二木芳人さんの解説。
「コロナ禍に入ってからの過去2シーズンとも、コロナとインフルエンザとの同時流行が懸念されていました。しかしコロナの感染対策の影響なのか、インフルエンザの感染数は世界的に激減。でも今年は、6月に冬季のオーストラリアでインフルエンザが大流行しました。南半球は日本と季節が真逆なので、オーストラリアの感染状況は、これから迎える日本の冬季の流行を予測する指標の1つとされています」
オーストラリア政府によると、昨シーズンのインフルエンザ患者数は550人だが、今シーズンは22万5000人と約400倍にも膨れ上がったという。
「オーストラリアでの大流行は、インフルエンザに対する集団免疫が低下していたために起こったと考えられます。コロナが流行した2020年以降、日本でもインフルエンザ患者は激減。今年、日本でも大流行する可能性は充分にあります」(二木さん)