すでに栃木や東京、京都の小学校、兵庫の高校などで2年ぶりとなるインフルエンザによる学級閉鎖が行われた。
インフルエンザには、年ごとに流行する「型」があり、今年の流行は「A香港(H3N2)型」だとされる。この型は感染力が強力で重症化しやすい。高熱が出ることも特徴で、高齢者は肺炎、子供は脳症を起こしやすいことが知られている。インフルエンザは例年1〜3月が感染のピーク。まさにコロナ第8波のピークと重なり「ツインデミック」は避けられない情勢なのだ。
政府は同時流行が起こった際のピーク時の1日当たりの感染者数を、コロナ感染者45万人、インフルエンザ感染者30万人、合計75万人と予想している。
1つの肺に2つのタイプの肺炎
そもそも、なぜ同時に感染するのか。
「本来なら、ヒトは1つのウイルスに感染すると、別のウイルスには感染しにくくなる。これを『ウイルス干渉』と呼びます。ところが、新型コロナのウイルスとインフルエンザのウイルスではウイルス干渉が、なぜか起こらない可能性が指摘されています。先にどちらか一方のウイルスに感染し、免疫力が落ちたところで、もう一方のウイルスに侵される。そうして同時感染が起こると考えられています」(二木さん)
コロナでもインフルエンザでも、感染すれば喉や鼻の粘膜が傷つく。その傷口からもう一方のウイルスが入り込むのだという。先述したように、今シーズン流行するインフルエンザは重症化しやすい。目白もちづき耳鼻咽喉科院長の望月優一郎さんは、同時感染でインフルエンザの影響が強く出る可能性を懸念している。
「コロナに感染し免疫力が低下している状態でインフルエンザに感染すると、A香港型の特徴である、脳症や肺炎を起こす確率が上がるのではと考えています」
新型コロナは肺を真っ白にするほど、一気に「ウイルス性肺炎」を起こす特徴がある。一方、インフルエンザは免疫力を落とすことにより、「細菌や微生物による肺炎」を招きやすい。
「同時に感染してしまった場合、1つの肺でタイプの異なる2つの肺炎が起きる可能性が指摘されており、動物実験ではそうしたケースも確認されています。その場合、単独感染よりも症状は重くなるとされています」(二木さん)
長崎大学の研究グループがハムスターを同時感染させて行った実験では、単独感染より肺炎が重症化し、回復が遅れる傾向がみられたという。
英医学誌『ランセット』に掲載された論文では、衝撃的な内容が報告されている。2020年2月から翌年12月の間にイギリスで入院した成人のコロナ患者を調査したところ、インフルエンザとの同時感染者は、コロナ単独感染者に比べ、人工呼吸器による治療を受けるリスクが4.14倍、死亡リスクも2.35倍に跳ね上がるというのだ。