「若者と子供は重症化しない」は通用しない
私たちは3年かけて“未知のウイルス”である新型コロナの特性を掴みつつある。よく知られているのは、「若者と子供は重症化しにくい」というものだ。実際、日本では10才以下の子供が死亡した例は限りなく少ない。
「その前提は、同時感染の出現により、完全に崩れたと思ってほしい。インフルエンザはそもそも“子供に流行しやすく、子供に脳炎などの重症化を招きやすいウイルス”として知られてきました。若者や子供は、新型コロナに感染して軽症だったとしても、そのダメージを引きずりながらさらにインフルエンザにかかれば、致命的な症状になる可能性があります」(都内病院の感染症専門医)
その逆もまたしかり。インフルエンザはまず学校などで子供にまん延しやすく、それが家庭にも持ち込まれ、親世代や祖父母世代に広まる感染ルートが多い。インフルエンザでは重症化しにくい壮年・老年世代でも、体力が落ちたところに新型コロナのウイルスが襲いかかればひとたまりもないだろう。
「そもそも新型コロナの性質は未解明の部分が多い。インフルエンザと同時に感染することで、いったい何が起こるのか、よくわかっていないことが多く、不測の事態が起きやすいということは肝に銘じるべきです」(前出・都内病院の感染症専門医)
来たるツインデミックで心配されるのは医療崩壊だ。すでに私たちは経験している。発熱外来は患者でごったがえし、治療を受けるのは1日がかり。救急車は出動するものの患者を搬送する病院に空き病床がなく、そのまま車内で死を迎える人も少なからず出た。あの惨禍が、ふたたび現実のものになろうとしている。望月さんが懸念する。
「この2年で、多くの医療機関がリソース(医療資源)をコロナに振り分け、コロナ・シフトが敷かれています。コロナ患者を入院させると、高い保険点数がとれるという経営上の事情もあり、インフルエンザ患者の受け入れ態勢が整っていない医療機関も少なくないと考えられます。インフルエンザが重症化しても入院先がない、という事態もあり得るでしょう」
「自分はかからない」──その慢心はもう通用しない。
※女性セブン2022年12月15日号