きつね大津が捉える「今っぽさ」

総合演出の橋本和明さん

『有吉の壁』には総合演出・橋本さんならではこだわりも

 そうしたブレイクキャラの中でも、お笑いコンビ・きつねが主導した「KOUGU維新」が特に好きだと筆者が伝えると橋本は「それはヤバいですね(笑)。色々記事を読んで人としてどうかしてるとは思ってましたけど」と笑った。

「絶妙なつまらなさがありますよね(笑)。それでどんどん加入していくじゃないですか。(水川)かたまりさんとか野田クリスタルさんとか腕がある人がみんなスベるわけですよ。『キングオブコント』を獲ったような人たちが、それをやらされているっていう面白さ。きつねの大津(広次)さんがプロデューサーとして、次から次へとアイデアを出して行って、トム・ブラウンのようにノリノリでやっている人から、不本意にやっているメンバーもいて、そういうグラデーションも含めて面白いんでしょうね。脚本としても普通に良く出来てる。人が見たいのは最早ストーリーではなく、何かのハイライトではないのか、ハイライトさえあれば、コンテキストはいらないんじゃないかっていうところをよく捉えているんですよね」

 きつねは「KOUGU維新」の他にも「ぷらもでる。」など様々なものを絶妙にパロディにしてヒットさせている。『有吉の壁』で新たな才能を開花させ、もっとも驚かせた一組だといえるだろう。

「次世代の芸人って感じがしますね。ちゃんとしたネタを書くよりも『KOUGU維新』とか『ぷらもでる。』を書くほうが遥かに難しいと思うんですよ。本ネタよりもむしろ『KOUGU維新』が代表作なんじゃないかって(笑)。でもそれってすごい『今』って感じがします」

「KOUGU維新」のように複数回登場しシリーズ化されることは意外と少ない。多くても2~3回しか続けないという。

「ウケたから毎回頭に置いて視聴率を獲りますみたいなことはしたくないし、そういうことが全面に出たら番組を好きで見てくれているファンもがっかりすると思うんですよ。なにより芸人さんがツラいと思うんです。複数回登場させる一番の基準は本人が心が折れていないか(笑)。有吉さんにもう1回同じキャラを見せるって相当キツいと思うんですよ。有吉さんは、その芸人が変な発想をしてキャラを作っているところを面白がっているわけですから、2回目にはそれがなくなる。普通のネタ番組だったらお客さんが見たかったキャラが出てくればウケるかもしれないけど、『壁』ではウケない。発想の部分を超えて面白くなるって本人が踏んでなければできないんですよ」

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