合田:紅組はこれでしょう。「お待たせしました、島倉千代子さん。あちらが大阪なら、こちらは『東京だョ おっ母さん』!」。
太田:その後に森進一が「おふくろさん」を絶唱し、森昌子が「おかあさん」を歌う。
鈴木:いい流れですね(笑)。ラスト3組、紅組はちあきなおみ、美空ひばりが並ぶと濃すぎるので、間に山口百恵を入れましょう。
合田:白組は北島三郎、矢沢永吉、石原裕次郎。百恵さんは「さよならの向う側」を紅白初披露します。
太田:放送時間もなくなってきて、ちょうど視聴者が寂しさを感じる頃ですね。
合田:白組はタモリが「『さよならの向う側』なんてとんでもない!『時間よ止まれ』!」で永ちゃんを送り出す。その後、裕次郎さんが「粋な別れ」を歌うと。
鈴木:大トリはやっぱり、ひばりさんですね。7年ぶりに復帰した昭和54年、特別出演でメドレーを歌った。「人生一路」のパフォーマンスに痺れましたよ。
太田:あの年、トリで八代亜紀が「舟唄」を歌って、NHKホールを制圧する支配者のような雰囲気を醸し出していました。
鈴木:この3時間前、レコード大賞をジュディ・オングの「魅せられて」に奪われていた。八代亜紀が階段から降りてきて全歌手に迎えられる時、ジュディをチラッと見ていた気がします(笑)。
太田:「トップは譲らない」というオーラがありました。紅組が勝って、司会の水前寺清子が胴上げされるんですよね。
合田:今回の『夢紅白』はオールタイムベスト。そのトリなら、ひばりさんも裕次郎さんも天界から降りてきてくれるはずです。
鈴木:永ちゃんもこの並びなら納得しますよ。2人にサインをもらいに行くかもしれない(笑)。
【プロフィール】
太田省一/1960年生まれ、富山県出身。62歳。社会学者。『紅白歌合戦と日本人』(筑摩選書)、『平成アイドル水滸伝~宮沢りえから欅坂46まで~』(双葉社)、『放送作家ほぼ全史』(星海社新書)など著書多数。
合田道人/1961年生まれ、北海道出身。61歳。1979年、歌手デビュー。現在、日本歌手協会理事長。構成司会を務めた『日本歌手協会 新春12時間歌謡祭』が2023年1月3日BSテレ東で放送。『紅白歌合戦 ウラ話』(全音)など著書多数。
スージー鈴木/1966年生まれ、大阪府出身。56歳。音楽評論家。BS12『ザ・カセットテープ・ミュージック』(不定期)、bayfm『9の音粋』(毎週月曜21時~22時54分)出演中。『桑田佳祐論』(新潮新書)など著書多数。
構成・文/岡野誠
※週刊ポスト2023年1月1・6日号