純粋な音楽特番ではないものの、24日に『ハモネプ2022クリスマスSP』(フジテレビ系)がほぼ初めて12月に放送することからも、「音楽というジャンルは家族そろって見られる」「昭和・平成・令和の歌をそろえた特番を放送しよう」という狙いがわかるのではないでしょうか。
一方の警察特番は熱心なファンでない限り、「どの局がどの番組なのか違いがわからない」という人が多いのが実際のところ。スポットを当てる警察署や事件の種類などに違いはありますが、その内容に大きな差は感じづらく、いい意味でマンネリを楽しんでもらうタイプの特番です。
テレビ局にとって警察特番は、基本的に取材謝礼が不要であるほか、タレントやスタジオなどの経費もほぼかからないなど、制作費が抑えられる割に、それなりの視聴率が得られるコスパのいいコンテンツ。警察にとっても、組織の理解を広め、イメージアップが期待でき、新人獲得につながるなどのメリットがあり、広報活動の一環として取材協力しています。
そんな警察特番は、視聴者にとって最もわかりやすいタイプのドキュメンタリー。主に扱われるのは生活に密着したリアルな犯罪であり、そこで起きる生々しい事件、犯人の狡猾な手口、緊迫の逮捕劇……一連の流れは報道番組や刑事ドラマでは見られない臨場感があるものです。
制作費の問題と風物詩をめぐる思い
12月に音楽特番と警察特番が多い理由はまだまだあります。
12月は最も多くの特番が必要な時期だけに、民放各局にとって1つでも多く計算できるものがほしいところ。しかも、レギュラー番組の特番はふだんから放送しているため、年末はできるだけオリジナルの特番が求められています。
しかし、新たな特番を手がけるのは制作費の面で難しさがあり、その意味で音楽特番と警察特番は、特番放送枠を埋める上で貴重な存在。一見、多額の制作費がかかりそうな音楽特番も、アーカイブなどのVTRを多用した構成にすれば抑えられるため、「他局がやっていない切り口はないか?」と模索している様子がうかがえます。
また、音楽特番は「今年の曲」、警察特番は「今年の事件・犯罪」を振り返るなど、一年を締めくくる意味合いが濃いことも12月に放送される理由。制作サイドが視聴者以上に、師走の風物詩とみなしているところがあり、「毎年この時期に放送したい」という思いが感じられます。
今年も残りわずか、各局の音楽特番と警察特番を見比べることで年越しムードを高めてみてはいかがでしょうか。
【木村隆志】
コラムニスト、芸能・テレビ・ドラマ解説者。雑誌やウェブに月30本前後のコラムを提供するほか、『週刊フジテレビ批評』などの批評番組に出演し、番組への情報提供も行っている。タレント専門インタビュアーや人間関係コンサルタントとしても活動。著書に『トップ・インタビュアーの「聴き技」84』『話しかけなくていい!会話術』『独身40男の歩き方』など。