子どもが成人するとき、76歳。「今のうちに可愛がり倒そう」
子供は2歳になった。高齢育児は体力勝負で、「体はボロボロです」と語るが、表情は明るい。
「先日、遊園地に連れて行ったら、ものすごく喜んで。息子はキラキラした目で、ずっと上を見上げているんです。当たり前だけと、小さい子どもが見ている景色って、大人とは違うんだなあと気づいて感動しました(笑)。やっぱり歳だから、そういうちょっとしたことに心が動かされるんでしょうね」
一方で高齢の親の介護、さらには自分たちの介護問題も頭をよぎる年齢だ。
「お前が言うなよという話になりますが、やっぱり子どもがほしい方は、若いときから子作りについて考え、若いときに子育てをしたほうが体力的にはいいと思います。多様な生き方が重んじられることはとてもいいことであると同時に、若いときに結婚して子どもを産んで、おじいちゃんおばあちゃんにもかわいがってもらうという人生も、楽しかっただろうなと、育児の面白さを知った今は思うんですね」
子どもが成人するとき、中本さん76歳──。「あと20年はがんばらないと」と、周囲に励まされるのはありがたいし、できるだけ元気に長生きして、息子の成長を見届けたいと思っている。だが、プレッシャーはあまりないという。
「僕の父は、僕が大学生のとき、52歳で急死しました。そこからアルバイトをして、周囲の人に助けられ、なんとか大学を卒業して就職し、今までやってきたんですね。だから僕の子どもも、ある程度の年齢になれば、自分で育っていくと思っています。これだけ年が離れているから、もう少ししたらウザイと思われるかもしれませんしね。今のうちに可愛がり倒そうと思っています」
シニアパパは増えているが、出産・子育てをシニアパパの視点で書いた子育て本が少ないことにも、今回気づいたという。
「高齢出産、シニア育児といっても千差万別ですが、私たちの場合はこうでした、という一つの例として、共感するなり、反面教師にしていただくなり、何かを感じてもらえたら嬉しいです」
◆中本裕己(なかもと・ひろみ)
産経新聞社夕刊フジ編集長。1963年東京生まれ。関西大学社会学部卒。日本レコード大賞審査委員。浅草芸能大賞審査委員。産経新聞社に入社以来、夕刊フジ一筋で、関西総局、芸能デスク、編集局次長などを経て現職。健康・医療を特集した、健康新聞「健活手帖」の編集長も兼ねる。48歳で再婚し、56歳で初めて父親になる。
◆取材・文/砂田明子