妻はICU、子はNICU。それでもプラス思考で
「妻はもともと我慢強いほうで、我慢しすぎたのかもしれないと言っていましたが、近くにいる僕が早く気づいて病院に連れていくべきでした。ただ、おたふく風邪から心筋炎になるのはレアケースのようで、医師の先生によると、高齢だからそうなったのかどうかは、わからないということでした」
帝王切開手術は成功し、無事に男の子が誕生。しかし妻は重篤な状態が続き、ICU(集中治療室)に。妊娠28週、1203グラムで産まれた子はNICU(新生児集中治療管理室)に。二人とも危険な状態が続いている上、コロナ対策もあり、我が子が誕生した日、中本さんは妻にも子にも会うことができなかった。
「妻と子は、家からそれほど遠くない病院に入院していたんです。ベランダから病院が見えるだけに気が気じゃなく、不安でしたね。でも自分ではどうすることもできないので、妻の心筋炎の治療法を調べたりとか、自分ができることをやって、心を落ち着けていました」
ようやく、わが子との初めての対面の日がやってきた。
「真っ赤で、体毛が動物みたいに背中までまって、顔も、くちゃっとしているんだけど、かわいくて、愛おしいんです。何より、すごくすごく小さい我が子に、頑張れ、頑張れ、という思いになりました」
心筋炎から回復途上にある妻の体への負担を考え、母乳ではなくミルクで育てることを決断するなど、夫婦で話し合って、一つひとつ、目の前の問題をクリアしていく。コロナの影響で、NICUにいる子どもに思うように会えない辛さはあったものの、そんなときは、持ち前のプラス思考を働かせるよう心掛けた。
「高齢出産で何があるかわからないから、妊娠を周囲に伝えづらかったんです。コロナで誰とも会えない状況になったことは、そんな私たちにとっては良かった面もありました。妻と子どもが退院した後も、妻に無理はさせられない状態だったので、僕がリモートワークを活用して育児ができたこともありがたかったですね」