商業ビルでは“将棋倒し”の恐怖
津波の被害だけではなく、建物の倒壊被害にも注意を払わなくてはならない。
2018年6月の大阪府北部地震(M6.1)は、震源が内陸だったため津波こそ発生しなかったものの、ブロック塀が倒れるなどして、死者6人・負傷者462人の被害が出た。
「大阪府は歴史ある古い街なので、改正建築基準法が施行された1981年以前にできた建物が残る地域も多くあります。特に西成区や城東区、旭区などの地域には古い家屋が多く、地盤も脆弱なので、倒壊する恐れがある。また、西成区などは耐火性が低い建物も多いので、1995年の阪神・淡路大地震の時のように火災発生のリスクも考えられる。避難する時に慌てずブレーカーを落としてから外に出ることが重要です」(古本氏)
一方で再開発が進む地域であっても、油断は禁物だ。古本氏が続ける。
「都市部のタワマンや高層の商業ビルの多くは耐震・免震構造になっていますが、大きな揺れが想定されます。長周期の地震動では、上の階ほど揺れが大きくなる。高層の建物に住んでいる人は、倒れてきたタンスの下敷きになったりする場合があるので、家具類はしっかりと固定しておきましょう。
また、日本一の高層ビルであるあべのハルカスなど、不特定多数の人が集まる高層の商業施設にいる場合はより注意が必要です。揺れによって物が倒れるリスクだけでなく、多くの人が一つの出口に集中して将棋倒しになるといったパニックも考えられます。高層の商業施設は複数の避難経路が用意されているはずなので、事前に確認しておくことが肝要です」
あべのハルカスを運営している近鉄不動産は大地震が起きた際の備えなどについてこう説明する。
「弊社としてお答えできることはホームページに記載されていることのみでございます」(同社経営企画室)
避難経路の情報などはホームページで確認しておこう。
そして地震が起きた時に何より重要なのは「冷静になること」だ。古本氏が語る。
「慌てれば慌てるほど、転倒によるケガなどのリスクは大きくなります。地震が発生した時に自宅にいたなら、まず防災の備品や家族の安否を確認し、火の元をチェックする。事前に取るべき行動を決めておけば、落ち着いて対処することができます」
大地震はいつ来てもおかしくない。いざという時のために、今から備えておくことが重要だ。
※週刊ポスト2023年6月23日号