また、文部科学省の最新調査によると、全国で学用品の購入や修学旅行、給食など学校生活にかかる費用の補助を自治体から受けている児童生徒の割合(就学援助率)は14.22%だった(「2022年度就学援助実施状況等調査」より)。就学援助率は1990年代半ばの6%台から右肩上がりに増え続け、2009年頃からは14〜15%台をほぼ横ばいで推移している。現在も、およそ7人に1人の子どもが、補助がないとまともな学校生活が送れない状況だ。
もっと身近な例で言えば、食料品やエネルギー価格を中心にした急激な物価高の影響がある。私自身、スーパーで月に一度のまとめ買いをするときの会計が、買う量は変わらないのに、昨年比で平均2000〜3000円近く上がっている。単身でこの金額であれば、2人以上の家族や食べ盛りの子育て世帯ではもっと影響は大きいはず。そういえばと思い出したのが、馴染みの居酒屋の店長の話。
「最近、お客さん1人の単価が確実に下がっていて……。今まで5000〜6000円くらいだったけど、最近は3500〜4000円が多いかなあ。一杯で粘る時間が増えたというかさ。高級店ならいいけど、居酒屋クラスだとそんな簡単に値上げもできないし、なかなか大変」
データを合わせて考えると、景気のよかったバブル期の記憶がない現在の10代から20代の若者は、貧しさが当たり前のなかで成長しているのは間違いない。世界中から「豊かな国」と称賛されていた我が母国はどこに消えてしまったのか。
ドラマにもっと夢と希望を
2023年の“貧乏主人公”ドラマの本数もさることながら、素人の私が少し調べただけでもあれよあれよと出てくる、国民の貧困ぶりを示すデータの数々。並べてみるともう壮観であり、そして問題でもある。
私の考えるテレビドラマの楽しみといえば、非現実世界への没入であって、決して現実を突きつけられるものではない。思い出してみてほしい。その昔、『ロングバケーション』(フジテレビ系・1996年)のヒロイン・葉山南(山口智子)は失職して「お金がな〜い」と言いながら、おしゃれなカフェで食事をしていたではないか。視聴者は、そんなドラマのヒロインに常に憧憬を抱いていた。それで良かったのに。
このままだと、ドラマの世界でも貧困家庭がスタンダード化し、「お金がない」ヒロインのご褒美が、いつもコンビニアイスという風景が当たり前になってしまうのではないか。それを見た子どもたちは「それが普通なんだ」と思ってしまうのだろうか。願わくば、“貧乏主人公”こそ「非現実」として、現状を打開するような、前向きに進む大人になってほしい。