それでもやはり、後輩たちの演技は気になるだろう。ロス五輪からちょうど40年となる今年、パリ五輪が7月から8月にかけて開催される。日本の体操界を牽引してきた内村航平が東京五輪後に引退し、同大会で個人総合に加え、種目別鉄棒でも金メダルを獲得した橋本大輝が「キング」の継承者となった。パリでも連覇が期待される。
「内村航平のように、世界最高のオールラウンダーであり、パリでも金メダルが期待できる選手です。ベルギーで昨年開催された世界選手権では、団体でも金を獲得できましたが、その時は中国がアジア大会に力を入れていて、本腰ではなかった。中国がライバルとなるでしょう。反対に厳しいのは女子。田中理恵や村上茉愛が引退し、新たなエースと呼べる選手が出て来ていない。アメリカをはじめ、強国の顔ぶれが変化し、団体でも苦戦を強いられるでしょう」
2028年には森末さんにとっても思い出の場所となるロサンゼルスで44年ぶりの五輪が開催される。レジェンド選手として、再び森末さんも脚光を浴びるだろう。
「いえいえ、僕はもう、ただの天丼屋のオヤジです(笑)。内村や白井健三に僕の役目は託しています」
取材・文/柳川悠二 撮影/藤岡雅樹