“伝説の裁判官”は福崎判決ににじむ「情熱」を指摘
ドキュメンタリーにも登場する木谷明元裁判官は30件以上の無罪判決を書き、それが一度も破棄されることがなかったという“伝説の裁判官”だ。ドラマ『イチケイのカラス』に登場する裁判官のモデルになった人物でもある。番組内で上田記者のインタビューに応えた木谷氏はこう語っていた。
「福崎君は大阪高裁で裁判長としてそれだけやったというのはすごい。高裁の陪席になる人はかなり経験積んでいますから、そう簡単には裁判長の意見に『はいそうですか』とは言いませんよ。その高裁でそんな数の逆転判決を出すことはすごい。たいしたもんですよ」
そして、上田記者は木谷氏に大阪高裁・福崎裁判長による“逆転判決”を読んでもらう。
木谷氏:記録をたいへん細かく読み込んで真相に迫ろうとする努力に感服いたしました。
上田記者:福崎裁判長でないとこういう判決はなかった?
木谷氏:それはそうです。他の裁判長ならこんなことをやるはずがないです。一件一件ここまで記録を読んで、“合理的疑いがある”と論証するのは大変ですよ。簡単に『控訴棄却』(一審維持)の判決は書ける。それをしないであえて疑わしい事情を出していくわけですから、これはなかなか労力が要りますよ。情熱が要りますよ。普通の裁判長はそこまでの情熱持っていない。
上田記者はこれまで福崎氏に取材を2度申し込んでいたが、2度とも返事がなかったという。福崎氏の判決文の内容を読み込んだ上田記者が木谷氏やかつての上司にあたる裁判官をはじめ、広く深い取材をしていることが耳に入ったのか、3度目の取材申し込みで福崎氏本人がようやくインタビューを承諾した。
記者と元裁判官の「言葉の応酬」はまるで法廷劇
福崎氏の真意に迫ろうとする上田記者が注目したのは、逆転無罪を連発した大阪高裁時代の裁判ばかりではない。