2019年11月、更地での売却が決まり、解体される特定危険指定暴力団工藤会の本部事務所。福岡県警による工藤会への「頂上作戦」は2014年から(時事通信フォト)

2019年11月、更地での売却が決まり、解体される特定危険指定暴力団工藤会の本部事務所。福岡県警による工藤会への「頂上作戦」は2014年から(時事通信フォト)

ヤクザなら誰でも一度は被告になり裁判を経験する

 野村被告は公正な裁判を求めたが、ヤクザほど「公正」から縁遠いものはないだろう。「暴力団や右翼団体は公正や公平とは正反対の組織だ。上意下達、絶対服従。下剋上は許さない。そうやって秩序を守り統制を保ってきた。世間では法の目を潜り抜け、公平公正の隙間を見つけ、人間の欲望や妬み嫉み、不安や恐怖を利用してグレーな部分でシノギを行い、生き残る。だから前科のないヤクザはいない。誰もが一度は被告になり、裁判を経験する」と前述した組長はいう。

 しかし日本国憲法の第14条は「すべての国民は法の下に平等である」と定め、社会的身分や社会的関係において差別されないとする。野村被告が公正を求めるのは、法にかなっているといえる。だが今は鬼籍に入る暴力団系右翼団体の元会長は生前「ヤクザである限り法の下でも平等はない」と話していた。「ヤクザは、一般人なら捕まらない些末な罪で逮捕されることがある。別件逮捕もよくある話だ。これだけで十分不公平だと思うのだが、世間はそう思わない。ヤクザでいることだけで罪だと考える。だがヤクザも人間だ。組のため親分のためならどんな不公平も諦めるが、納得できない罪は飲み込めない」と元会長は話した。

 死刑だった判決が無期懲役という判決に落ちたのだ。それでも野村被告は納得できなかったのだろう。即日上告した。福岡県警が頂上作戦を行って以降、工藤会では離脱する組員が増えて弱体化し、2023年末時点の構成員はピーク時の約2割にまで減少している。「野村被告はすべての事件で無罪を主張。田上被告も関与したものの殺意はなかったと主張している。推認による厳しい判決に対し徹底抗戦する姿勢を見せることで、警察や司法に屈しない工藤会トップの姿をアピールし、組の勢力をなんとか保ちたいのだろう」と前出の元刑事はいう。

 福岡県警は工藤会が壊滅するまでその手を緩めることはないが、被告ら2人も組への影響力を手放す気はないのだろう。上告しても新しい証拠が出なければ、棄却される可能性が高いが、最高裁の行方はどうなるのか。暴力団、そして市民が注目する裁判はまだ終わらない。

関連キーワード

関連記事

トピックス

西城秀樹さんの長男・木本慎之介がデビュー
《西城秀樹さん七回忌》長男・木本慎之介が歌手デビューに向けて本格始動 朝倉未来の芸能事務所に所属、公式YouTubeもスタート
女性セブン
雅子さま、紀子さま、佳子さま、愛子さま 爽やかな若草色、ビビッドな花柄など個性あふれる“グリーンファッション”
雅子さま、紀子さま、佳子さま、愛子さま 爽やかな若草色、ビビッドな花柄など個性あふれる“グリーンファッション”
女性セブン
兵役のため活動休止中のBTS。メンバー全員が除隊となる2025年にグループ活動再開を目指している(写真/アフロ)
【韓国大手事務所HYBEの内紛】「BTSの父」と「NewJeansの母」が対立 ARMY激怒で騒動は泥沼に、両グループの活動に影響も
女性セブン
有村架純と川口春奈
有村架純、目黒蓮主演の次期月9のヒロインに内定 『silent』で目黒の恋人役を好演した川口春奈と「同世代のライバル」対決か
女性セブン
林田理沙アナ。離婚していたことがわかった(NHK公式HPより)
離婚のNHK林田理沙アナ(34) バッサリショートの“断髪”で見せた「再出発」への決意
NEWSポストセブン
フジ生田竜聖アナ(HPより)、元妻・秋元優里元アナ
《再婚のフジ生田竜聖アナ》前妻・秋元優里元アナとの「現在の関係」 竹林報道の同局社員とニアミスの緊迫
NEWSポストセブン
小泉氏は石破氏に決起を促した
《恐れられる“純ちゃん”の政局勘》小泉純一郎氏、山崎拓氏ら自民重鎮OBの会合に石破茂氏が呼ばれた本当の理由
週刊ポスト
撮影現場で木村拓哉が声を上げた
木村拓哉、ドラマ撮影現場での緊迫事態 行ったり来たりしてスマホで撮影する若者集団に「どうかやめてほしい」と厳しく注意
女性セブン
大谷翔平(左/時事通信フォト)が伊藤園の「お〜いお茶」とグローバル契約を締結したと発表(右/伊藤園の公式サイトより)
《大谷翔平がスポンサー契約》「お〜いお茶」の段ボールが水原一平容疑者の自宅前にあった理由「水原は“大谷ブランド”を日常的に利用していた」
NEWSポストセブン
氷川きよしの白系私服姿
【全文公開】氷川きよし、“独立金3億円”の再出発「60才になってズンドコは歌いたくない」事務所と考え方にズレ 直撃には「話さないように言われてるの」
女性セブン
広末涼子と鳥羽シェフ
【幸せオーラ満開の姿】広末涼子、交際は順調 鳥羽周作シェフの誕生日に子供たちと庶民派中華でパーティー
女性セブン
ハイパーゼネラルマネージャーの有田とスペシャルサポーターの博多華丸・大吉
【漫才賞レース・THE SECOND】ハイパーゼネラルマネージャーに有田哲平、スペシャルサポーターに博多華丸・大吉を起用した理由
NEWSポストセブン