「管理職への昇進を断わることはできるのでしょうか」…そんな相談が弁護士の竹下正己氏のもとへ寄せられた。
【質問】
上司から管理職への昇進の話をほのめかされました。しかし、現在は妻と共働きで、育児の手間もかかるため、負担が増えることは避けたいのです。それに管理職といっても、仕事の責任が増えるだけで、残業代も出ないし、今は引き受けたくありません。断わることはできるでしょうか。
【回答】
元来企業は、労働契約によって労働者から労働力の管理処分権を委ねられたものと解釈されていますが、人事権は、その委ねられた管理処分権にほかなりません。
すなわち、会社は包括的な人事権を持っており、現在の人員配置の必要性だけでなく、将来に備えた人材育成の観点からも、適宜の職種や職階に配置できます。
労働契約や労働協約によって制約されている場合を除き、労働関係の法律に違反したり、組合潰し目的のような濫用といえない限り、企業は自由に行使できます。改めて労働者の同意を要するものではありません。
したがって人事権が発動されたら、このように労働力の管理処分という、労働契約の根幹に関わる権利が行使されたことになります。こうなっては、労働者は従わないわけにはいきません。会社としても、労働者の拒否で人事政策を変更することもできません。
そこで、労働者が辞令に従わなければ、会社としても業務命令違反として何らかの処分をせざるを得なくなります。直ちに解雇に至らなくても、辞令が出されたあとは、それまでの職場では就労できなくなっているはずで、会社に出ることもできなくなります。そして解雇という事態が起きる可能性もあります。
そこでそのような人事権の行使を受ける前に、昇格と子育てが矛盾する事情を十分に説明して、配慮を求めるのがよいでしょう。育児介護休業法の第26条では、事業者に配置場所の変更による子育て困難化に対する配慮を求めています。勤務場所の変更を伴わない昇格はこれに該当しませんが、子育てに影響する場合には配慮されると思います。
しかし、責任が重くなるから嫌だという理由で、昇格の辞令を拒否することはできないでしょう。
※週刊ポスト2010年11月19 日号
関連記事
トピックス

「救急車と消防車、警官が来ていた…」遠野なぎこ、SNSが更新ストップでファンが心配「ポストが郵便物でパンパンに」自宅マンションで起きていた“異変”
NEWSポストセブン

《オンカジ賭博で逮捕のフジ・鈴木容疑者》「善貴は本当の大バカ者よ」マツコ・デラックスが語った“盟友への想い”「借金返済できたと思ってた…」
NEWSポストセブン

雅子さま、「灼熱のモンゴル8日間」断行のご覚悟 主治医とともに18年ぶりの雪辱、現地では角界のヒーローたちがお出迎えか
女性セブン

《チューハイ2本を万引きで逮捕された球界“レジェンド”が独占告白》「スリルがあったね」「棚に返せなかった…」米田哲也氏が明かした当日の心境
週刊ポスト

「『逃げも隠れもしない』と話しています」地元・伊東市で動揺広がる“学歴詐称疑惑” 田久保真紀市長は支援者に“謝罪行脚”か《問い合わせ200件超で市役所パンク》
NEWSポストセブン

《六本木ヒルズ・多目的トイレ5年後の現在》佐々木希が覚悟の不倫振り返り…“復活”目前の渡部建が世間を震撼させた“現場”の動線
NEWSポストセブン

「『20歳になったらまた会おうね』って約束したのに…」“活発で愛される女性”だった東川千愛礼さんの“変わらぬ人物像”と安藤陸人容疑者の「異変」《豊田市19歳女性殺害》
NEWSポストセブン

《児童盗撮で逮捕された教師グループ》虚飾の仮面に隠された素顔「両親は教師の真面目な一家」「主犯格は大地主の名家に婿養子」
女性セブン

《白鵬が去って「一強体制」と思いきや…》八角理事長にまさかの落選危機 定年延長案に相撲協会内で反発広がり、理事長選で“クーデター”も
週刊ポスト

《7月5日大災害説に気象庁もデマ認定》太陽フレア最大化、ポピ族の隕石予言まで…オカルト研究家が強調する“その日”の冷静な過ごし方「ぜひ、予言が外れる選択肢を残してほしい」
NEWSポストセブン

《万博会場で赤い下着で迷惑行為か》「セクシーポーズのカンガルー、発見っ」女性インフルエンサーの行為が世界中に発信 協会は「投稿を認識していない」
NEWSポストセブン

《東洋大学に“そんなことある?”を問い合わせた結果》学歴詐称疑惑の田久保眞紀・伊東市長「除籍であることが判明」会見にツッコミ続出〈除籍されたのかわからないの?〉
NEWSポストセブン