国際情報

日本は叩いてもニコニコ 中国国民の「反日洗脳」は簡単と識者

 日本への憎しみだけを教育されて育った世代。それがいま、中国で「反日」を叫ぶ若者たちだ。1990年代初頭、江沢民政権が始めた「反日教育」は思惑どおり、国民の隅々までに行き渡った。いまや「反日カード」は共産党政権維持のために欠かせないものとなった。評論家、石平氏が体験的反日キャンペーンを語る。

 * * *
 反日教育をもって、江沢民は何をめざしていたのか。

 ひとつは、国民に対して日本人への憎しみを植え付けること。そして、日本は軍国主義を復活させて中国を侵略する危険性があるから、共産党の指導の下で一致団結して日本の軍国主義の復活を阻止、日本からの再びの侵略に対抗しなければならない、という思想の刷り込みである。

 江沢民の反日教育は、天安門事件によって、党と政府に向けられた国民の憎しみの感情をそらし、失墜した党の威信を取り戻すためだった。事件以来、江沢民が直面した大きな課題は、共産党の一党独裁の正当性をどう主張するかということだった。

 日本はその課題を解決する格好の対象だったのである。歴史的にも憎しみを煽る物語を作りやすい。国家としても適度に大きく、距離的にも近いから国民も実感しやすい。何より、日本という国はいくら叩いてもニコニコするだけで、外交的にも反抗しない。

 中国で国民を洗脳するのは簡単なことである。中国共産党には国内のメディアをすべて掌握する中央宣伝部がある。すべてのメディアが中央宣伝部の方針に従うのだ。

 もちろん「反日キャンペーンをせよ」という方針を出すのではない。「軍国主義が行なった犯罪を強調し、国民の愛国主義を高めるように」との方針が伝達される。同時にやってはいけないことの指示も出される。この場合は日本を弁護する情報は一切出してはならないという指示である。

 日本人の残虐性ばかりを見聞させられる国民が、日本人を憎むようになるのは当然といえば、当然だ。このような反日教育は90年代初期からいま現在まで続いており、「歴史問題」や「戦争犯罪」に対する宣伝・教育は何も変わっていない。

※SAPIO2010年11月24日号

関連キーワード

関連記事

トピックス

本拠地で大活躍を見せた大谷翔平と、妻の真美子さん
《真美子さんと娘が待つスイートルームに直行》大谷翔平が試合後に見せた満面の笑み、アップ中も「スタンドに笑顔で手を振って…」本拠地で見られる“家族の絆”
NEWSポストセブン
“高市効果”で自民党の政党支持率は前月比10ポイント以上も急上昇した…(時事通信フォト)
世論の現状認識と乖離する大メディアの“高市ぎらい” 参政党躍進時を彷彿とさせる“叩けば叩くほど高市支持が強まる”現象、「批判もカラ回りしている」との指摘
週刊ポスト
国民民主党の玉木雄一郎代表、不倫密会が報じられた元グラビアアイドル(時事通信フォト・Instagramより)
《私生活の面は大丈夫なのか》玉木雄一郎氏、不倫密会の元グラビアアイドルがひっそりと活動再開 地元香川では“彼女がまた動き出した”と話題に
女性セブン
バラエティ番組「ぽかぽか」に出演した益若つばさ(写真は2013年)
「こんな顔だった?」益若つばさ(40)が“人生最大のイメチェン”でネット騒然…元夫・梅しゃんが明かしていた息子との絶妙な距離感
NEWSポストセブン
前伊藤市議が語る”最悪の結末”とは──
《伊東市長・学歴詐称問題》「登場人物がズレている」市議選立候補者が明かした伊東市情勢と“最悪シナリオ”「伊東市が迷宮入りする可能性も」
NEWSポストセブン
日本維新の会・西田薫衆院議員に持ち上がった収支報告書「虚偽記載」疑惑(時事通信フォト)
《追及スクープ》日本維新の会・西田薫衆院議員の収支報告書「虚偽記載」疑惑で“隠蔽工作”の新証言 支援者のもとに現金入りの封筒を持って現われ「持っておいてください」
週刊ポスト
ヴィクトリア皇太子と夫のダニエル王子を招かれた天皇皇后両陛下(2025年10月14日、時事通信フォト)
「同じシルバーのお召し物が素敵」皇后雅子さま、夕食会ファッションは“クール”で洗練されたセットアップコーデ
NEWSポストセブン
高校時代の青木被告(集合写真)
【長野立てこもり殺人事件判決】「絞首刑になるのは長く辛く苦しいので、そういう死に方は嫌だ」死刑を言い渡された犯人が逮捕前に語っていた極刑への思い
NEWSポストセブン
米倉涼子を追い詰めたのはだれか(時事通信フォト)
《米倉涼子マトリガサ入れ報道の深層》ダンサー恋人だけではない「モラハラ疑惑」「覚醒剤で逮捕」「隠し子」…男性のトラブルに巻き込まれるパターンが多いその人生
週刊ポスト
問題は小川晶・市長に政治家としての資質が問われていること(時事通信フォト)
「ズバリ、彼女の魅力は顔だよ」前橋市・小川晶市長、“ラブホ通い”発覚後も熱烈支援者からは擁護の声、支援団体幹部「彼女を信じているよ」
週刊ポスト
ソフトバンクの佐藤直樹(時事通信フォト)
【独自】ソフトバンクドラ1佐藤直樹が婚約者への顔面殴打で警察沙汰 女性は「殺されるかと思った」リーグ優勝に貢献した“鷹のスピードスター”が男女トラブル 双方被害届の泥沼
NEWSポストセブン
公務に臨まれるたびに、そのファッションが注目を集める秋篠宮家の次女・佳子さま(共同通信社)
「スタイリストはいないの?」秋篠宮家・佳子さまがお召しになった“クッキリ服”に賛否、世界各地のSNSやウェブサイトで反響広まる
NEWSポストセブン