今回の東日本大震災では、行政や社会福祉協議会も大きなダメージを受け、ボランティアの受け入れ態勢は万全とはいえないという。そんな現実のなか、「ボランティアの網の目からこぼれ落ちている被災者が多い」というのは、石巻のNPO法人「フェアトレード東北」代表の布施龍一さんだ。
同NPOはもともと障がい者や高齢者など社会的弱者を支援する団体だが、震災直後から宮城県・牡鹿半島の限界集落を中心に、避難所暮らしに溶け込めず孤立した老人の救出・支援活動を続けている。
「ボランティアの出入りが多いほど避難所の隅にぽつんといる老人たちは見落とされがちです。また、登録ボランティアは瓦礫の撤去などわかりやすいところだけの仕事になりやすい。被災者の命を守るためには、目立たないところへのきめ細かいケアも重要なんです」(布施さん)
現在、活動するメンバー12人全員が被災者で、大切な家族や友人を数多く亡くした。それでも身銭を切って活動に励んでいる。
「ぼくらはまったくの個人活動。貯金を切り崩して物資や燃料を購入しています。ボランティアセンターや民間の大きな団体に『●●にも人手や物資を届けてほしい』と要望を出すと、『わかりました。明日行きます』といったきりで動いてくれないことも少なくありません。後から問い合わせると、『うちら、そこまで手が回りませんから』と。大きな団体から漏れる弱者もいる。片隅を照らさないと全体の状況はわからないんです」(布施さん)
※女性セブン2011年5月5日号