芸能

松方弘樹のギャラが10万円の時代 小林旭は550万の車を購入

 裏切りと報復の連鎖。画面からほとばしる殺意。このフィルムには全登場人物の血潮が焼き付いている。誕生から38年、いま再び注目を集めつつある『仁義なき戦い』。役を変え、3度出演したシリーズの生き証人・松方弘樹が、当時の思い出を語った。

 * * *
 撮影が終わるのは夜10時、11時。それから木屋町の飲み屋『キンコンカン』貸し切って毎晩飲んだ飲んだ。ぼくは30歳、監督、文太さんは40そこそこ。みんな若い。なんでそんなに徹夜で飲むか。翌日の撮影に、目が充血しているのが欲しいんですよ。『寝たらおまえ、目が青くなるだろ、きれいになるだろ。そりゃ駄目だ』という監督からして目ぇ真っ赤ですから。宍戸錠さんなんか、わけわかんなくなる。酔っぱらったまんま撮影に入って、本当にグラス握りつぶして血だらけになったりね。「はい、カット!」「はい、救急車」

 飲んで演技の話? そんなバカはひとりもおらんです。監督さん以下、みんな無頼だったですよ。

 ぼくはたまたま近衛十四郎という大きな看板の家に生まれましたが、あの時代、みんな、なんで役者になったか。洋モクをかっこよく喫いたい。洋酒を飲みたい。高級外車に乗りたい。それからいい女。それをせしめるために頑張ろうとしたんですよ。

 毎日、マンガみたいでした。ぼくだけじゃないですよ。ある時に、マイトガイ・小林旭さん。銀座の料亭で、ぼくと北大路欣也で、対談かなにかで待ってた。待てど暮らせど来ない。2時間経って、甲高い声で「ごめん」って。

 銀座に来る途中、どっかの店の前でいい車を見かけた。どうしても欲しくなって持ち主を捜して交渉するのに時間がかかってごめんねって。

 ぼくの映画のギャラ、10万円の時代です。その車550万円。ぼくら2人は縮こまっちゃって、対談なんかになるわけない(笑い)。

 日本映画のピークは昭和29年から3年間で、そこから徐々に落ち、もうその頃は斜陽産業といわれていました。それまでの片岡千恵蔵さんや、市川右太衛門さんの作品なんかは、予算というものがなかった。上限なし。使っただけが、予算。ぼくは昭和34年、東映の大泉撮影所の近所のアパートの2DK7800円に住んだ。当時大卒の月給が1万円。ぼくは映画1本出て10万円だった。斜陽といわれ始めてもまだ、カネはまわっていたんです。

 それから13年後に『仁義なき戦い』に出会います。遊び歩いたりなんだりで、もうひとつ仕事に根性が入ってない、そんな年齢でした。これではいかん、腹を据えて仕事に取り組もうと思ったのが『仁義なき戦い』でした。

※週刊ポスト2011年7月8日号

関連記事

トピックス

大谷の妻・真美子さん(写真:西村尚己/アフロスポーツ)と水原一平容疑者(時事通信)
《水原一平ショックの影響》大谷翔平 真美子さんのポニーテール観戦で見えた「私も一緒に戦うという覚悟」と夫婦の結束
NEWSポストセブン
大ヒット中の映画『4月になれば彼女は』
『四月になれば彼女は』主演の佐藤健が見せた「座長」としての覚悟 スタッフを感動させた「極寒の海でのサプライズ」
NEWSポストセブン
国が認めた初めての“女ヤクザ”西村まこさん
犬の糞を焼きそばパンに…悪魔の子と呼ばれた少女時代 裏社会史上初の女暴力団員が350万円で売りつけた女性の末路【ヤクザ博士インタビュー】
NEWSポストセブン
華々しい復帰を飾った石原さとみ
【俳優活動再開】石原さとみ 大学生から“肌荒れした母親”まで、映画&連ドラ復帰作で見せた“激しい振り幅”
週刊ポスト
中国「抗日作品」多数出演の井上朋子さん
中国「抗日作品」多数出演の日本人女優・井上朋子さん告白 現地の芸能界は「強烈な縁故社会」女優が事務所社長に露骨な誘いも
NEWSポストセブン
死体損壊容疑で逮捕された平山容疑者(インスタグラムより)
【那須焼損2遺体】「アニキに頼まれただけ」容疑者はサッカー部キャプテンまで務めた「仲間思いで頼まれたらやる男」同級生の意外な共通認識
NEWSポストセブン
学歴詐称疑惑が再燃し、苦境に立つ小池百合子・東京都知事(写真左/時事通信フォト)
小池百合子・東京都知事、学歴詐称問題再燃も馬耳東風 国政復帰を念頭に“小池政治塾”2期生を募集し準備に余念なし
週刊ポスト
(左から)中畑清氏、江本孟紀氏、達川光男氏による名物座談会
【江本孟紀×中畑清×達川光男 順位予想やり直し座談会】「サトテル、変わってないぞ!」「筒香は巨人に欲しかった」言いたい放題の120分
週刊ポスト
大谷翔平
大谷翔平、ハワイの25億円別荘購入に心配の声多数 “お金がらみ”で繰り返される「水原容疑者の悪しき影響」
NEWSポストセブン
【全文公開】中森明菜が活動再開 実兄が告白「病床の父の状況を伝えたい」「独立した今なら話ができるかも」、再会を願う家族の切実な思い
【全文公開】中森明菜が活動再開 実兄が告白「病床の父の状況を伝えたい」「独立した今なら話ができるかも」、再会を願う家族の切実な思い
女性セブン
ホワイトのロングドレスで初めて明治神宮を参拝された(4月、東京・渋谷区。写真/JMPA)
宮内庁インスタグラムがもたらす愛子さまと悠仁さまの“分断” 「いいね」の数が人気投票化、女性天皇を巡る議論に影響も
女性セブン
大谷翔平と妻の真美子さん(時事通信フォト、ドジャースのインスタグラムより)
《真美子さんの献身》大谷翔平が進めていた「水原離れ」 描いていた“新生活”と変化したファッションセンス
NEWSポストセブン