国内

地デジ化は世界のスタンダードに逆行 欧米では超マイナーだ

 この国の官僚が国民を騙す際によく使うのが「外国はこうなっています」という理屈だが、こと地デジ化について、その論法は聞かない。なぜなら、地デジ化は「世界のスタンダード」に逆行しているからだ。

 米国では、テレビを地上波で視聴している世帯は2割弱に過ぎない。半数はケーブルテレビで、残りの30%は衛星放送で視聴している。ドイツでも、ケーブルテレビが約半分、衛星放送43%、地上波はたった5%強だ。日本の視聴者だけが、「テレビ=地上波」と刷り込まれ、地上波のデジタル化が国策として大々的に進められている。

 これまで地デジ化に投入された3600億円という巨額の国費も不要で、地デジ難民も生み出さないシンプルな「デジタル波完全移行策」がある。衛星放送を使ったデジタル化である。

 地上波と違い、全国に何万もの中継局を建てる必要もなく、衛星1波で全国をカバーでき、視聴者の数がどれだけ増えても番組の劣化が生じない。欧州各国では、そういった特性から、放送のデジタル化は衛星を使って進められた。日本でも難視世帯への救済策として衛星放送波が利用されている。

 しかし、この衛星によるデジタル放送は、テレビなどの受信機に内蔵されているB-CASカードによるスクランブル(暗号情報)で視聴が制限されている。難視世帯ではこのスクランブルが解除されているわけだが、つまり日本で衛星デジタル放送が始まった1996年には、デジタル化は完了していたのである。スクランブルを外せば、完全移行などとうの昔に済んでいた話ではないか。

 また、5割強の世帯(2600万世帯)が加入するケーブルテレビの利用者は、2015年3月までアナログテレビでデジタル放送を視聴できる。デジタル信号をアナログ方式へと変換する「デジ・アナ変換」措置により、この設備改修費用はわずか「1社当たり400万~500万円程度」(ケーブルテレビ事業者)で済む。2015年までと区切らず、すべての視聴者がデジタル対応テレビを持つまで続ければ、地デジ難民を大幅に減らせるはずだ。

※週刊ポスト2011年7月15日号

関連キーワード

関連記事

トピックス

日高氏が「未成年女性アイドルを深夜に自宅呼び出し」していたことがわかった
《本誌スクープで年内活動辞退》「未成年アイドルを深夜自宅呼び出し」SKY-HIは「猛省しております」と回答していた【各テレビ局も検証を求める声】
NEWSポストセブン
12月3日期間限定のスケートパークでオープニングセレモニーに登場した本田望結
《むっちりサンタ姿で登場》10キロ減量を報告した本田望結、ピッタリ衣装を着用した後にクリスマスディナーを“絶景レストラン”で堪能
NEWSポストセブン
訃報が報じられた、“ジャンボ尾崎”こと尾崎将司さん(時事通信フォト)
笹生優花、原英莉花らを育てたジャンボ尾崎さんが語っていた“成長の鉄則” 「最終目的が大きいほどいいわけでもない」
NEWSポストセブン
実業家の宮崎麗香
《セレブな5児の母・宮崎麗果が1.5億円脱税》「結婚記念日にフェラーリ納車」のインスタ投稿がこっそり削除…「ありのままを発信する責任がある」語っていた“SNSとの向き合い方”
NEWSポストセブン
出席予定だったイベントを次々とキャンセルしている米倉涼子(時事通信フォト)
《米倉涼子が“ガサ入れ”後の沈黙を破る》更新したファンクラブのインスタに“復帰”見込まれる「メッセージ」と「画像」
NEWSポストセブン
訃報が報じられた、“ジャンボ尾崎”こと尾崎将司さん
亡くなったジャンボ尾崎さんが生前語っていた“人生最後に見たい景色” 「オレのことはもういいんだよ…」
NEWSポストセブン
峰竜太(73)(時事通信フォト)
《3か月で長寿番組レギュラー2本が終了》「寂しい」峰竜太、5億円豪邸支えた“恐妻の局回り”「オンエア確認、スタッフの胃袋つかむ差し入れ…」と関係者明かす
NEWSポストセブン
2025年11月には初めての外国公式訪問でラオスに足を運ばれた(JMPA)
《2026年大予測》国内外から高まる「愛子天皇待望論」、女系天皇反対派の急先鋒だった高市首相も実現に向けて「含み」
女性セブン
夫によるサイバーストーキング行為に支配されていた生活を送っていたミカ・ミラーさん(遺族による追悼サイトより)
〈30歳の妻の何も着ていない写真をバラ撒き…〉46歳牧師が「妻へのストーキング行為」で立件 逃げ場のない監視生活の絶望、夫は起訴され裁判へ【米サウスカロライナ】
NEWSポストセブン
シーズンオフを家族で過ごしている大谷翔平(左・時事通信フォト)
《お揃いのグラサンコーデ》大谷翔平と真美子さんがハワイで“ペアルックファミリーデート”、目撃者がSNS投稿「コーヒーを買ってたら…」
NEWSポストセブン
愛子さまのドレスアップ姿が話題に(共同通信社)
《天皇家のクリスマスコーデ》愛子さまがバレエ鑑賞で“圧巻のドレスアップ姿”披露、赤色のリンクコーデに表れた「ご家族のあたたかな絆」
NEWSポストセブン
硫黄島守備隊指揮官の栗林忠道・陸軍大将(写真/AFLO)
《戦後80年特別企画》軍事・歴史のプロ16人が評価した旧日本軍「最高の軍人」ランキング 1位に選出されたのは硫黄島守備隊指揮官の栗林忠道・陸軍大将
週刊ポスト