国内

原発事故直後SPEEDI知らなかったという菅総理への疑惑証言

 ジャーナリスト・武冨薫氏の司会&レポートによる本誌伝統企画「覆面官僚座談会」。呼びかけに応えた5人の官僚(経産省ベテランA氏、財務省中堅B氏、総務省ベテランC氏、経産省若手D氏、内閣府若手E氏)に、「原発と菅総理」について聞いた。

 * * *
――まず聞きたい。国民は菅首相の原発対応に非常に不安を感じている。原発は本当に大丈夫なのか。

経産D:誤解してほしくないですが、これほど重大な国難を前に、我々が仕事をサボタージュしたり、良くないとわかっていることをやったりすることはない。それは総理も同じ気持ちでしょう。

総務C:D君、君たちの立場は理解できるが、原発事故対応に失敗した責任が、総理を輔弼できなかった経産省の原子力安全・保安院や原子力安全委員会にあったことは間違いないよ。

経産A:確かに間違いはあった。総理が事故発生直後に原子力緊急事態宣言を出した時点で、本来なら原子力災害対策特別措置法で政府が最優先にすべきは住民の安全確保であって、事故の収束は第一義的には原子力事業者、つまり東京電力の役目だった。それを菅総理は自ら事故処理の陣頭指揮を執ろうとした。その結果、事故処理に素人が口出しして混乱させたうえ、最も心を砕くべき住民の安全確保が後回しにされた。

内閣府E:SPEEDI(緊急時迅速放射能影響予測ネットワークシステム)の件ですね。

――原発事故の際、住民の被曝回避や避難のためにSPEEDIの放射能拡散予測を政府が自治体に伝えると定められていたが、それを隠して住民を被曝させた。『週刊ポスト』がスクープした官邸の大罪だ。

経産D:SPEEDIの予測図は、本震から約半日後の3月12日未明に保安院から官邸の危機管理センターに送られた。総理も官房長官も「知らなかった」と国会で答弁し、経産省の担当者が知らせなかったということにされた。犯人捜しまで行なわれています。

内閣府E:検証作業は確かにやっています。でもあの時、本当は総理も危機管理センターにいたんでしょ?

――それは初耳だ。

内閣府E:官邸にいた同僚の話では、事故当日、危機管理センターには各省から連絡役の若手が派遣されていたが、SPEEDIの端末はなかった。そこで端末がある原子力災害対策本部事務局の総括班長、つまり保安院の企画調整課長から危機管理センターの経産省専用のサーバーにデータが送られたようだ。指示を出したのは総理秘書官の1人だと聞いている。

財務B:危機管理センターにいたリエゾン(本省との連絡係)の一存で課長に指示を出せるはずがない。

内閣府E:その時刻も興味深い。送られたSPEEDI予測は、保安院が福島第一原発1号機のベントに備えて特別に試算させたもので、記録では保安院に配信されたのが12日の午前1時12分、そこから官邸に送られたのが1時35分頃だった。首相動静にも記録があるが、総理は0時53分に危機管理センターに入り、1時36分に執務室に戻っている。非常に微妙なタイミングだけど、ちょうど予測図が送られた頃まで総理は危機管理センターにいたというわけです。

経産A:総理は原発の電源喪失を重視し、官邸から「電源車はまだ到着しないのか」「どこまで行ってるんだ」と15分ごとに東電に確認させ、電源車ではダメとわかると、「ベント、ベント」、その次は「まだ給水できないのか」と苛立っていた。たとえ執務室に予測図が届いていても、見ていたかどうか……。だから法に従って政府と東電の役割分担をすべきだった。

※週刊ポスト2011年7月22・29日号

関連キーワード

関連記事

トピックス

一般参賀にお姿を見せた上皇さまと美智子さま(時事通信フォト)
《新年を寿ぐホワイトドレス》「一般参賀に参加いただく必要があるのか?」美智子さま“お手振りなし異変”報道で波紋…上皇ご夫妻が行事に込める「内に秘められた心の部分」
NEWSポストセブン
元日本テレビアナウンサーの大神いずみ氏(右)と放送作家の山田美保子氏
《2026年の女性アナ事情》各局エース級が続々フリー転身 次世代を担うポスト田村真子、岩田絵里奈は誰か?【大神いずみ氏×山田美保子氏対談】
週刊ポスト
茨城県水戸市のアパートでネイリストの小松本遥さん(31)が殺害された
《水戸市・31歳ネイリスト女性死亡》「『誰かのために働きたい』と…」「足が早くて活発な子」犯人逃走から6日間、地元に広がる悲しみの声
NEWSポストセブン
浅田真央と村上佳菜子の“断絶関係”に変化
《声をかけて寄り添って》浅田真央と村上佳菜子の“断絶関係”に変化 沈黙から一転、見られていた「雪解けの予兆」
NEWSポストセブン
新宿の焼肉店で撮影された動画が物議(左は店舗のInstagramより、右は動画撮影者より提供)
《テーブルの上にふっくらとしたネズミが…》新宿・焼肉店での動画が拡散で物議、運営会社は「直後に殺処分と謝罪」「ねずみは薬剤の影響で弱って落下してきたものと推察」
NEWSポストセブン
竹内涼真(時事通信フォト)
竹内涼真、白石聖、たくろう、谷口彰悟…山田美保子さんが選ぶ「2026年に目が離せない8人」
女性セブン
新年一般参賀に出席された秋篠宮家次女・佳子さま(2026年1月2日、撮影/黒石あみ)
《新年一般参賀で見せた“ハート”》佳子さま、“お気に入り”のエメラルドグリーンドレスをお召しに 刺繍とハートシェイプドネックがエレガントさをプラス
NEWSポストセブン
元仙台高裁判事の岡口基一氏
「裁判所当局が嫌がった核心は白ブリーフだった」 弾劾裁判で法曹資格を失った岡口基一氏が振り返る「岡口裁判の急所」とは 裁判所と司法記者クラブの問題点も指摘
NEWSポストセブン
新年一般参賀に出席された皇后雅子さま(2026年1月2日、撮影/黒石あみ)
《新年一般参賀の“ブルーリンク”コーデ》皇后雅子さまはスタンドカラーでフォーマルに、愛子さまはマオカラー風で親しみやすさを演出
NEWSポストセブン
松田烈被告
「スマホから『映してください』と指示の声が…」ネットで“性的暴行してくれる人を募集”した松田烈被告(28)、被害女性が語った“外道すぎる犯行”
NEWSポストセブン
真美子さん(共同通信)が使用していたブランドとは
《ハワイ・ファミリーデートで真美子さんが持っていたプチプラバッグ》「同年代インフルエンサーのアスレジャーブランド」か?と話題に 実用性の高いトートバッグ、大谷は「娘のベビーカー担当」
NEWSポストセブン
ジャーナリストの溝口敦氏(左)とフリーライターの鈴木智彦氏
《溝口敦氏×鈴木智彦氏が対談》山口組抗争終結後の暴力団 勝ったはずの六代目山口組含めて勢力は縮小、トクリュウのほうが経済規模も大きく勢いがある現状
週刊ポスト