国内

松下政経塾出身議員 一番熱心に競うのは政策ではなく演説

 民主党政権下で綺羅星の如く出世を遂げたのが、松下政経塾出身の議員たちだ。出世頭の前原誠司・前外相、野田佳彦・財務相、玄葉光一郎・国家戦略相、原口一博・前総務相ら今回、「代表候補」に4人もの名前が挙がった。

 しかし、松下政経塾出身の議員たちには「口の軽さ」や「節操のなさ」といった共通点が指摘されることもあり、「カネ」や「オンナ」での失敗も多い。

 なぜ松下政経塾では脇の甘い議員たちが量産されてしまうのか。

 同塾は、「国家百年の計」を持った政治家を送り出すべく、松下幸之助が私財70億円を投じて1979年に設立した。神奈川県茅ヶ崎市に6000坪の敷地を持つ4年制の政治家養成機関である。授業料は無償。逆に「研修資金」として、寮生活が義務づけられる1年目は月20万、2年目からは月25万円の給料が支払われ、加えて年間100万円以上の活動資金もある。

 朝6時起床。ラジオ体操に始まり、清掃、海辺のランニング、塾是唱和の後、講義や研修に臨む。政治学などの講義はあるものの、政治家としての下地となる知識を学ぼうとする塾生は少ない。

 多くの塾生たちの頭にあるのは、何より「政界へのコネクション作り」である。

『松下政経塾とは何か』(新潮新書)の著者でジャーナリストの出井康博氏がいう。

「日本新党ブームで塾出身の議員が増え、塾生たちは政党の公認を得ようとOBの先輩議員との関係作りにばかり精を出すようになった。結果、政経塾は“政治家予備校”になりはててしまった」

 塾生たちのステイタスを示す称号として、「直衆」(ちょくしゅう)、「直首」(ちょっくび)がある。前者は地方議員などの下積みを経ずに直接代議士に当選すること、後者は、直接自治体の首長になることを指す。

 塾生OBがいう。

「塾生の傾向として、下積みを嫌い、一刻も早く脚光を浴びたいというタイプが多い。結局、大政党の公認を得て国政選挙などの候補者になった人間の勝ち、という塾内の空気をよく表わした言葉です。塾生はライバルであっても同志ではない。だから政治家になっても共闘できないわけです」

 彼らが一番熱心に競うのは、もちろん政策ではなく演説の能力だ。

「地盤も看板もカバン(資金)もない政治家志望者が有権者を惹きつけるには言葉の力しかないと塾生は皆考えている。だから、塾生やOBたちは決まってものすごい量の街頭演説をこなす。しかし、主張する政策を実現する術を学んでいるわけではない。それが“口先だけ”“パフォーマンス先行”といわれる所以かもしれない」(前出・OB)

 創立者・松下幸之助氏の元秘書で塾の運営に長く関わってきた江口克彦・参院議員が語る。

「幸之助は学問より人間観を身につけることを重視していたが、今の政経塾出身の議員を見ると、天下国家より我が身の出世大事になっている。結局、幸之助が政経塾に期待していた人間観や志を体得する人物は育たなかったといえる」

 しかし「予備校」としてはよく機能した。その結果が政治のこの体たらくだ。

※週刊ポスト2011年9月9日号

関連キーワード

関連記事

トピックス

《解散強行の波紋》高市首相、大学受験シーズンの選挙でタイミングは「最悪」 支持率高い10代の票は望めずか
《解散強行の波紋》高市首相、大学受験シーズンの選挙でタイミングは「最悪」 支持率高い10代の票は望めずか
NEWSポストセブン
歌舞伎役者・中村鶴松(本名・清水大希)容疑者
《歌舞伎・中村鶴松が泥酔トイレ蹴りで逮捕》「うちじゃないです」問題起きたケバブ店も口をつぐんで…関係者が明かす“中村屋と浅草”ならではの事情
NEWSポストセブン
ブルックリン・ベッカムと、妻のニコラ・ペルツ(Instagramより)
《ベッカム家に泥沼お家騒動》長男ブルックリンが父母に絶縁宣言「一生忘れられない屈辱的な記憶」は結婚式で実母ヴィクトリアとの“強制ファーストダンス”、新婦は号泣
NEWSポストセブン
初場所初日を迎え、あいさつする日本相撲協会の八角理事長(2026年1月11日、時事通信フォト)
土俵が大荒れのなか相撲協会理事選は「無投票」へ 最大派閥・出羽海一門で元横綱・元大関が多数いるなか「最後のひとり」が元小結の尾上親方に決まった理由
NEWSポストセブン
。一般人を巻き込んだ過激な企画で知られるイギリス出身のインフルエンサーのボニー・ブルー(Instagramより)
「行為を終える前に準備」「ゴー、ゴー、ゴーです」金髪美女インフルエンサー(26)“12時間で1000人以上”を記録した“超スピード勝負な乱倫パーティー”の実態
NEWSポストセブン
米倉涼子が書類送検されたことがわかった
《5か月ぶりの表舞台直前で》米倉涼子、ギリギリまで調整も…主演映画の試写会前日に“書類送検”報道 出席が見送られていた
NEWSポストセブン
天皇皇后、愛子さま
《溜席の着物美人が2日連続で初場所に登場》6年ぶりの天覧相撲に感じた厳粛さを語る 力士のみならず観客も集中し、「弓取り式が終わるまで帰る人がいなかった」
NEWSポストセブン
肺がんのため亡くなったフリーアナウンサーの久米宏さん(時事通信フォト)
《キー局に就職した有名アナも》久米宏さんに憧れて男性アナウンサーを目指した人たち 爆笑問題・田中はTBSラジオでのバイト時代に「久米宏さんになりたかった」
NEWSポストセブン
近代化する火葬業の舞台裏に迫ったジャーナリストの伊藤博敏氏
《火葬ビジネスの裏面史》都内の火葬場を独占する「東京博善」は中国人実業家がトップに就任…いまも「民間の火葬場」が生き残っている歴史的経緯
週刊ポスト
米倉涼子が書類送検されたことがわかった
《ゲッソリ痩せた姿で取調室に通う日々》米倉涼子が麻薬取締法違反で書類送検、昨年末に“捜査終了”の匂わせ 元日にはファンに「ありがとう」と発信
NEWSポストセブン
 相撲観戦のため、国技館へ訪問された天皇皇后両陛下と長女・愛子さま(2026年1月18日、撮影/JMPA)
「美しすぎて語彙力消失した」6年ぶりの天覧相撲 雅子さまは薄紫の着物、愛子さまは桜色の振袖姿でご観戦
NEWSポストセブン
次期衆院選への不出馬を表明する自民党の菅義偉元首相(時事通信フォト)
《一体今は何キロなのか…》菅義偉元首相が引退を表明「健康状態は全く問題ない」断言から1年足らずでの決断 かつて周囲を驚かせた“10キロ以上の激ヤセ”
NEWSポストセブン