夏の甲子園。今年も高校球児たちのさまざまなドラマが生まれたが、ここで高校野球の裏方さんの余談をひとつ。紹介するのは作家の山藤章一郎氏である。
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試合後、勝者の校歌が流れる。あれは、だれがどこで歌っているのでしょうか。まず朝日新聞社が、地方戦で優勝した各校に「校歌の歌詞、楽譜、音源を送ってね」という。
これを朝日放送グループのABCメディアコムが、3人のアレンジャーに編曲させた伴奏をコンピューターに打ち込ませ、4人の男性コーラスに歌わせる。
毎年、初出場校や校歌が変更になった20校前後の製作になる。各県の優勝決定は毎年ぎりぎり。締切目前で、徹夜が続く。
制作者の奥川和昭さん。
「50歳近くのベテラン声楽家たちが、音程、リズムを確認しながら開会式の前日までに新規の約20校分吹き込みます。いつも胃の痛い、時間との戦いです」
作曲・編曲家の佐藤誠さん。
「もう40年ほど前から、朝日放送のラジオスタジオで収録しています。ブラスバンドのナマバックから5年前にコンピューターに変わりました。最近はJPOPのような『Be Together』で始まる歌謡曲調から、『夢追人』という題の校歌まであります。原曲のイメージをこわさず、大会を盛りあげる重要な作業です」
※週刊ポスト2011年9月9日号