ライフ

トイレ紙がボロボロにならない洗剤 ほんとかいなと試してみた 

たかがトイレ掃除。でも、延々と繰り返される、終わりの無い時間。だとすれば、「きれいになる」という結果も大事だけれど、いかに心地よく掃除できるか、というプロセスはもっと大事かも。そこに登場した、「拭いても拭いても破れないトイレットペーパー」。作家で五感生活研究所の山下柚実氏が試してみた。以下は山下氏の報告である。

* * *
ほんとかいな? 半信半疑。それが第一印象だった。

「トイレットペーパーがボロボロにならない」という大きな文字が目に飛び込んできたから。私の前には、トイレ用洗剤『ルックまめピカ』のボトルがある。

何だか挑戦を受けた気分だ。「ようし、試してみようか」と、思わず意気込んでしまう。

洗剤のノズルを握ると、シュシュッと白い泡が出てきた。その泡をトイレットペーパーに吹きつけて、思い切り便器を拭いてみる。

あらっ?

経験則から言えば、ここで水分を吸った紙がボロッと崩れていくはず。でも、私の手の中のトイレットペーパーはまるで動じない。古布のように形を保ったまま、便器の縁をするーっと滑っていく。

小気味良い肩すかしをくらった気分。

たかがトイレ掃除。でも、延々と繰り返される、終わりの無い時間。だとすれば、「きれいになる」という結果も大事だけれど、いかに心地よく掃除できるか、というプロセスはもっと大事かも。

拭いても拭いても破れないトイレットペーパーの不思議な感触が、私の手に刻みこまれた。

「ホントかな、という疑問に応えるために、試行錯誤を繰り返してきました」

発売半年で370万個もの大ヒットとなった『ルックまめピカ』。開発に携わったライオン・リビングケア事業部の横手弘宣氏(33)は振り返った。

トイレ用洗剤は、すでに飽和したマーケットと考えられてきた。商品価格は低下し、数量も伸びる見込みがない。2008年、ライオンはそんな成熟市場に新商品を投入すべく、開発を始めた。

「弊社の定番に『トイレのルック』というボトル型洗剤がありますが、これは言ってみれば汚れを落とす洗浄機能を一生懸命、追求してきました」(横手氏)

今、230億円と言われるトイレ用洗浄剤市場の商品には、大きく分けて『トイレのルック』のようなボトル型洗剤と、拭き掃除のシートタイプ、そして水に溶け込ませて流す固形剤の3つがある。実は市場の売り上げの半分を占めるのが、シートタイプ。しかし、ライオンはこれまでシートタイプの主力商品を持てずにいた。

「新商品の開発にあたって、主婦の生活習慣を検証し直すため、インタビューや調査を行ないました。すると、トイレの汚れは、気付いた時にささっと掃除したくなるという行動様式が見えてきました」(横手氏)

ただでさえ忙しい現代人は時間を細切れに使う。「トイレをささっとひと拭き」は、時間に追われる人の自然な行動なのだ。しかも近年、トイレは新しい視点で見直されている。

「トイレが明るくなり、空間としてきれいにしておきたい場所へと変化しているんです。だから掃除も、便器だけでなく床や壁を拭くという人が増えました」(横手氏)

一方で、消費者が不満に思っていることがあった。

「トイレットペーパーであちこち拭くと、すぐボロボロになってしまう。そんな悩みを回答した人が83%もいました。こんなに多くの人が同じ経験をしているのかと、正直驚きましたね」(横手氏)

「こまめに掃除」し、「便器だけでなく空間もきれいに」したい消費者。しかし、汚れに気付くたびにトイレシートを使うのはコスト高。かと言って、トイレットペーパーではボロボロになってうまく拭けない既存の洗剤やシートだけでは、「生活者のニーズ」に十分応えていないことが調査から浮き彫りになっていった。

「そこで、1日何回もさっと拭くスタイルを『こまめ拭き』と名付けて、新商品開発の軸に据えることにしたのです」(横手氏)

開発の途中で商品に疑問が提示されるたびに、開発チームは原点に立ち戻った。「こまめ拭き」のニーズに応えること。トイレットペーパーで拭くことのできる洗剤を開発すること最後までこの軸はブレなかった。

※SAPIO2011年11月16日号

関連記事

トピックス

女優・遠野なぎこ(45)の自宅マンションで身元不明の遺体が見つかってから2週間が経とうとしている(Instagram/ブログより)
《遠野なぎこ宅で遺体発見》“特殊清掃のリアル”を専門家が明かす 自宅はエアコンがついておらず、昼間は40℃近くに…「熱中症で死亡した場合は大変です」
NEWSポストセブン
俳優やMCなど幅広い活躍をみせる松下奈緒
《相葉雅紀がトイレに入っていたら“ゴンゴンゴン”…》松下奈緒、共演者たちが明かした意外な素顔 MC、俳優として幅広い活躍ぶり、174cmの高身長も“強み”に
NEWSポストセブン
和久井被告が法廷で“ブチギレ罵声”
【懲役15年】「ぶん殴ってでも返金させる」「そんなに刺した感触もなかった…」キャバクラ店経営女性をメッタ刺しにした和久井学被告、法廷で「後悔の念」見せず【新宿タワマン殺人・判決】
NEWSポストセブン
大谷と真美子さんの「冬のホーム」が観光地化の危機
《白パーカー私服姿とは異なり…》真美子さんが1年ぶりにレッドカーペット登場、注目される“ラグジュアリーなパンツドレス姿”【大谷翔平がオールスターゲーム出場】
NEWSポストセブン
初の海外公務を行う予定の愛子さま(写真/共同通信社 )
愛子さま、初の海外公務で11月にラオスへ、王室文化が浸透しているヨーロッパ諸国ではなく、アジアの内陸国が選ばれた理由 雅子さまにも通じる国際貢献への思い 
女性セブン
ロッカールームの写真が公開された(時事通信フォト)
「かわいらしいグミ」「透明の白いボックス」大谷翔平が公開したロッカールームに映り込んでいた“ふたつの異物”の正体
NEWSポストセブン
“マエケン”こと前田健太投手(Instagramより)
《ママとパパはあなたを支える…》前田健太投手、別々で暮らす元女子アナ妻は夫の地元で地上120メートルの絶景バックに「ラグジュアリーな誕生日会の夜」
NEWSポストセブン
グリーンの縞柄のワンピースをお召しになった紀子さま(7月3日撮影、時事通信フォト)
《佳子さまと同じブランドでは?》紀子さま、万博で着用された“縞柄ワンピ”に専門家は「ウエストの部分が…」別物だと指摘【軍地彩弓のファッションNEWS】
NEWSポストセブン
和久井学被告が抱えていた恐ろしいほどの“復讐心”
「プラトニックな関係ならいいよ」和久井被告(52)が告白したキャバクラ経営被害女性からの“返答” 月収20〜30万円、実家暮らしの被告人が「結婚を疑わなかった理由」【新宿タワマン殺人・公判】
NEWSポストセブン
山下市郎容疑者(41)はなぜ凶行に走ったのか。その背景には男の”暴力性”や”執着心”があった
「あいつは俺の推し。あんな女、ほかにはいない」山下市郎容疑者の被害者への“ガチ恋”が強烈な殺意に変わった背景〈キレ癖、暴力性、執着心〉【浜松市ガールズバー刺殺】
NEWSポストセブン
英国の大学に通う中国人の留学生が性的暴行の罪で有罪に
「意識が朦朧とした女性が『STOP(やめて)』と抵抗して…」陪審員が涙した“英国史上最悪のレイプ犯の証拠動画”の存在《中国人留学生被告に終身刑言い渡し》
NEWSポストセブン
橋本環奈と中川大志が結婚へ
《橋本環奈と中川大志が結婚へ》破局説流れるなかでのプロポーズに「涙のYES」 “3億円マンション”で育んだ居心地の良い暮らし
NEWSポストセブン