ライフ

古来、鶏には角があり、それを龍が奪った…という中国の逸話

鶏のトサカが赤いのはなぜか?

今年の干支である「辰」は、十二支のなかでは唯一、実在の生物ではない。伝説上の生物とはいえ、口には長いヒゲ、ヘビのような胴体から伸びる脚には鋭い爪、そして頭に大きな角を生やしている姿はよく知られている。しかし、その角、「実はもともと龍のものではなかった」ということはご存じだろうか。中国事情に詳しいTS・チャイナ・リサーチ代表の田代尚機氏が、龍にまつわる中国の逸話を紹介する。

* * *
中国の古い言い伝えによれば、昔の龍には角がなかったそうだ。そのころ龍は地上で生活していたが、飛ぶこともでき、百獣の王の座を巡って虎との覇権争いが絶えず、なかなか決着が着かなかった。「竜虎相打つ」である。

この様子を見た最高神・玉帝は、彼らを天宮に呼び出して、どちらが王にふさわしいか見極めることにした。この時、龍は自分も結構イケてると思ったが、正直、虎ほどの威厳はないとも感じていた。そこで龍の弟分であるムカデがこんな助言をする。

「雄鶏の角はとてもきれいだ。借りてきてつけてはどうか。そうすれば兄貴にも威厳が備わってくるぞ」

これを聞いた龍はたいそう喜び、さっそくムカデとともに雄鶏のところに向かった。

だが、龍の申し出を雄鶏は「絶対ダメだ」と断る。焦った龍は「もし俺が天から戻って、お前に角を返さないようなことがあれば、死んでお詫びをしよう」といい、ムカデも「もし兄貴が角を返さなければ、俺を食べても構わない」と口を添えた。この言葉を信じ、雄鶏は角を貸してやることにしたという。

なんと、あの立派な龍の角は、そもそも雄鶏の角だったのである。

まんまと角をゲットした龍は虎とともに天宮に行き、玉帝と接見。この時、玉帝はどちらも百獣の王とすることにし、虎は陸の王、龍は水の王と定めた。

めでたく地上に戻った龍だったが、心の中では「もしこれで角を雄鶏に返してしまうと、水の中の生き物たちはこんな醜い俺に従うだろうか」といった不安ばかりが募る。そこで雄鶏に角を返さないことを決めて、水中へと潜ってしまったのだ。

これに激怒したのが雄鶏である。雄鶏は真っ赤になって怒り、その怒りはいつまでも鎮まることはなかった。いまもニワトリのトサカが赤いのは、これに由来するといわれる。

さて、一方のムカデはどうしたか。雄鶏の様子を見て恐ろしくなったムカデは地中へと逃げ込んだ。その後、雄鶏は地中から這い出てくるムカデを見ると、誰彼構わず食べるようになり、当事者のムカデはなかなか地面に這い出てこられなくなったという。

そして、龍も雄鶏の報復を恐れて、いまでも地上に現われないため、伝説上の生物になったそうだ……。

ちなみに、これは中国ではよく知られた話らしいが、いずれにせよ、龍そのものの存在からしてあくまで伝説に過ぎないことはいうまでもない。

関連キーワード

トピックス

国民民主党の玉木雄一郎代表、不倫密会が報じられた元グラビアアイドル(時事通信フォト・Instagramより)
《私生活の面は大丈夫なのか》玉木雄一郎氏、不倫密会の元グラビアアイドルがひっそりと活動再開 地元香川では“彼女がまた動き出した”と話題に
女性セブン
バラエティ番組「ぽかぽか」に出演した益若つばさ(写真は2013年)
「こんな顔だった?」益若つばさ(40)が“人生最大のイメチェン”でネット騒然…元夫・梅しゃんが明かしていた息子との絶妙な距離感
NEWSポストセブン
前伊藤市議が語る”最悪の結末”とは──
《伊東市長・学歴詐称問題》「登場人物がズレている」市議選立候補者が明かした伊東市情勢と“最悪シナリオ”「伊東市が迷宮入りする可能性も」
NEWSポストセブン
日本維新の会・西田薫衆院議員に持ち上がった収支報告書「虚偽記載」疑惑(時事通信フォト)
《追及スクープ》日本維新の会・西田薫衆院議員の収支報告書「虚偽記載」疑惑で“隠蔽工作”の新証言 支援者のもとに現金入りの封筒を持って現われ「持っておいてください」
週刊ポスト
ヴィクトリア皇太子と夫のダニエル王子を招かれた天皇皇后両陛下(2025年10月14日、時事通信フォト)
「同じシルバーのお召し物が素敵」皇后雅子さま、夕食会ファッションは“クール”で洗練されたセットアップコーデ
NEWSポストセブン
高校時代の青木被告(集合写真)
【長野立てこもり殺人事件判決】「絞首刑になるのは長く辛く苦しいので、そういう死に方は嫌だ」死刑を言い渡された犯人が逮捕前に語っていた極刑への思い
NEWSポストセブン
米倉涼子を追い詰めたのはだれか(時事通信フォト)
《米倉涼子マトリガサ入れ報道の深層》ダンサー恋人だけではない「モラハラ疑惑」「覚醒剤で逮捕」「隠し子」…男性のトラブルに巻き込まれるパターンが多いその人生
週刊ポスト
問題は小川晶・市長に政治家としての資質が問われていること(時事通信フォト)
「ズバリ、彼女の魅力は顔だよ」前橋市・小川晶市長、“ラブホ通い”発覚後も熱烈支援者からは擁護の声、支援団体幹部「彼女を信じているよ」
週刊ポスト
ソフトバンクの佐藤直樹(時事通信フォト)
【独自】ソフトバンクドラ1佐藤直樹が婚約者への顔面殴打で警察沙汰 女性は「殺されるかと思った」リーグ優勝に貢献した“鷹のスピードスター”が男女トラブル 双方被害届の泥沼
NEWSポストセブン
出廷した水原一平被告(共同通信フォト)
《水原一平を待ち続ける》最愛の妻・Aさんが“引っ越し”、夫婦で住んでいた「プール付きマンション」を解約…「一平さんしか家族がいない」明かされていた一途な思い
NEWSポストセブン
公務に臨まれるたびに、そのファッションが注目を集める秋篠宮家の次女・佳子さま(共同通信社)
「スタイリストはいないの?」秋篠宮家・佳子さまがお召しになった“クッキリ服”に賛否、世界各地のSNSやウェブサイトで反響広まる
NEWSポストセブン
司組長が到着した。傘をさすのは竹内照明・弘道会会長だ
「110年の山口組の歴史に汚点を残すのでは…」山口組・司忍組長、竹内照明若頭が狙う“総本部奪還作戦”【警察は「壊滅まで解除はない」と強硬姿勢】
NEWSポストセブン