みうらじゅん氏は、1958年京都生まれ。イラストレーター、エッセイスト、ミュージシャン、ラジオDJなど幅広いジャンルで活躍。1997年「マイ ブー ム」で流行語大賞受賞。仏教への造詣が深く、『見仏記』『マイ仏教』などの著書もある同氏が、戒名について考察する。
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葬儀をした後に、遺族が後悔をすることがある。なんでこんな理不尽なことが起きるのだろうか?
家族が死んで身も心も極限状態に陥っているときに、寺院側から高額で提示される戒名。慌ただしい中で疑問に感じながらも受け入れてしまったことへのやるせない思い。しかも、知らない間に受け入れてしまう支出は戒名だけではない。
戒名料に読経料といった僧侶に支払う料金。これを寺院費と呼ぶが、この出費以外にも、葬儀を執り行なうには様々な支出があるのだ。祭壇や棺桶や骨壺などといった葬儀社に払う葬儀本体の料金。さらには通夜や告別式の場で会葬者に出す飲食接待費。
葬儀全体の費用の詳細については、そのうちじっくりとやるつもりだが、葬儀でどのくらいの費用がかかるか、さらっと触れると、日本消費者協会が2010年に行なった「葬儀についてのアンケート調査」によれば、葬儀社に払う葬儀本体料金の全国平均は、なんと126.7万円! 飲食接待費が45.5万円で、問題の寺院費が51.4万円だ!
葬儀全体の総額となると、それぞれで平均値を出しているので、今いった3つを合計した金額とは異なるが、約200万円ということになっている。
この坊主丸儲けはなぜなくならないのだろうか? おそらくは、日本の葬儀の90%以上が仏式で行なわれているという、ほぼ独占禁止法違反のような寡占状態にあることがもっとも大きな原因だろう。
競争相手もいないので、特に安くする必要もなく好き勝手に料金を設定できるのだ。東京電力の電気料金みたいなもんでもある。
※週刊ポスト2012年2月24日号