【書評】『マンボウ最後の家族旅行』(北杜夫/実業之日本社/1260円)
昨年10月に亡くなった著者が、絶筆を含め最晩年に遺した連載エッセイ。ハワイ、苗場、京都と、大腿骨骨折後のリハビリを兼ねて娘に連れまわされる80代の著者。箱根の温泉宿では〈娘が五階のフロアーを予約していたので、妻と娘婿はさっさとエレベータで五階に行ってしまうが、「パパはリハビリのため階段を登って!」と、また強引に大変な労働をさせられる〉といった日々を滑稽に描く。夫人が語る思い出と、娘の一文も収録する。
※週刊ポスト2012年4月20日号