国内

空き家だらけの別荘地で地元経済潤す方法を大前研一氏が指南

 まもなく最大9連休のゴールデンウィークがやってくる。日本人の国内旅行は1泊2日が基本だが、欧米では1か月単位のバケーションが珍しくない。大前研一氏は、こうした欧米型バケーションについてこう語る。

 * * *
 欧米型バケーションのメリットは、滞在期間が長いから、旅行者が“地元民”になることだ。つまり、地元で買い物をして自炊したり、外食をしたりするのでスーパーやレストランが繁盛し、地元経済が潤うのである。

 一方、1泊2日が基本パターンになっている日本の場合、観光地の旅館の大半は「夕食・朝食付き」が原則で、素泊まりや朝食のみの宿泊ができない。しかも、宿の中に土産物屋やカラオケルームなどがあり、すべて旅館内で完結するので宿泊客は一歩も外に出ることがなく、町が寂れてしまう。

 しかし、日本にも欧米型のスタイルが根付く素地はある、と私は思う。なぜなら、いま日本の別荘地は空き家ばかりになっているからだ。

 たとえば、静岡の伊豆高原は30年ほど前の別荘ブームの折、東京から近い温泉付き海浜型別荘地として人気を集めたが、今や閑古鳥が鳴くようになって売り物件が続出し、値段が際限なく下がるという悲惨な状況に陥っている。そういう寂れてしまったリゾート地の別荘を組織化し、1週間単位や1か月単位で長期レンタルすればよいのである。

 欧米の別荘は、オーナーが使わない時は管理会社を通じて貸し出すシステムができあがっている。そのために必要なベッドの仕様、食器の数、家電製品の種類などの標準規格が細かく決められていて、それをそろえなければ貸し出すことができない。その代わり、もし借り手がコップを1個でも割ったら、その代金が借り手にチャージされ、同じものが補充されるという仕組みである。

 また、オーナーの美術品や調度品、本、CDなどの私物は、すべて置いたままである。盗もうと思えば盗めるわけだが、他人の別荘や家を借りるのが当たり前になっている欧米人は絶対にそんなことはしない。それが礼儀だということを、誰もが心得ているのだ。

 日本でも、同様のシステムを構築すれば、潜在的な需要を掘り起こすことができるはずだ。その“主役”はリタイアした元気な高齢者(アクティブ・シニア)である。

※週刊ポスト2012年5月4・11日号

関連キーワード

関連記事

トピックス

伊藤沙莉は商店街でも顔を知られた人物だったという(写真/AFP=時事)
【芸歴20年で掴んだ朝ドラ主演】伊藤沙莉、不遇のバイト時代に都内商店街で見せていた“苦悩の表情”と、そこで覚えた“大人の味”
週刊ポスト
総理といえど有力な対立候補が立てば大きく票を減らしそうな状況(時事通信フォト)
【闇パーティー疑惑に説明ゼロ】岸田文雄・首相、選挙地盤は強固でも“有力対立候補が立てば大きく票を減らしそう”な状況
週刊ポスト
新アルバム発売の倖田來未 “進化した歌声”と“脱がないセクシー”で魅せる新しい自分
新アルバム発売の倖田來未 “進化した歌声”と“脱がないセクシー”で魅せる新しい自分
女性セブン
大谷の妻・真美子さん(写真:西村尚己/アフロスポーツ)と水原一平容疑者(時事通信)
《水原一平ショックの影響》大谷翔平 真美子さんのポニーテール観戦で見えた「私も一緒に戦うという覚悟」と夫婦の結束
NEWSポストセブン
大ヒット中の映画『4月になれば彼女は』
『四月になれば彼女は』主演の佐藤健が見せた「座長」としての覚悟 スタッフを感動させた「極寒の海でのサプライズ」
NEWSポストセブン
中国「抗日作品」多数出演の井上朋子さん
中国「抗日作品」多数出演の日本人女優・井上朋子さん告白 現地の芸能界は「強烈な縁故社会」女優が事務所社長に露骨な誘いも
NEWSポストセブン
国が認めた初めての“女ヤクザ”西村まこさん
犬の糞を焼きそばパンに…悪魔の子と呼ばれた少女時代 裏社会史上初の女暴力団員が350万円で売りつけた女性の末路【ヤクザ博士インタビュー】
NEWSポストセブン
(左から)中畑清氏、江本孟紀氏、達川光男氏による名物座談会
【江本孟紀×中畑清×達川光男 順位予想やり直し座談会】「サトテル、変わってないぞ!」「筒香は巨人に欲しかった」言いたい放題の120分
週刊ポスト
大谷翔平
大谷翔平、ハワイの25億円別荘購入に心配の声多数 “お金がらみ”で繰り返される「水原容疑者の悪しき影響」
NEWSポストセブン
【全文公開】中森明菜が活動再開 実兄が告白「病床の父の状況を伝えたい」「独立した今なら話ができるかも」、再会を願う家族の切実な思い
【全文公開】中森明菜が活動再開 実兄が告白「病床の父の状況を伝えたい」「独立した今なら話ができるかも」、再会を願う家族の切実な思い
女性セブン
伊藤
【『虎に翼』が好発進】伊藤沙莉“父が蒸発して一家離散”からの逆転 演技レッスン未経験での“初めての現場”で遺憾なく才能を発揮
女性セブン
大谷翔平と妻の真美子さん(時事通信フォト、ドジャースのインスタグラムより)
《真美子さんの献身》大谷翔平が進めていた「水原離れ」 描いていた“新生活”と変化したファッションセンス
NEWSポストセブン