芸能

ウディ・アレン「悲劇に笑いがあり、面白いものが悲劇にもなる」

『ミッドナイト・イン・パリ』撮影中のウッディ・アレン (C)2011 MEDIAPRODUCCION, SLU, VERSATILCINEMA, SL&GRAVIER PRODUCTIONS, INK.

 パリを舞台にした『ミッドナイト・イン・パリ』(5月26日公開)。ウディ・アレン(75)にとって、42本目の監督作となる本作は、半世紀近くのキャリアのなかでアメリカでは最大のヒットとなり、第84回アカデミー賞脚本賞を受賞するなど高く評価された。この作品とパリへの想いをウディ・アレン本人が語る。

――『ミッドナイト・イン・パリ』は、あなたの長年の夢だったパリを舞台にした映画ですね。
ウッディ:長い間、ぼくはパリを舞台に映画を撮りたいと思っていたんだけれど、それに合うストーリーが見つけられないでいた。『世界中がアイ・ラブ・ユー!』でも一部、パリで撮影したけれど、パリそのものが舞台の映画を撮りたかったんだ。

――近年、ロンドンでもバルセロナでも撮影していますが、次の作品はイタリアのローマとか。以前は、ニューヨークから決して出ようとしなかったあなたですが、どうしてヨーロッパで撮り始めたのでしょうか。
ウッディ:ぼくの映画はアメリカよりもヨーロッパでのほうが人気があるんだ。映画祭もいつも招待してくれる。いつも応援してくれる観客に恩返しをしたいと思ったことがきっかけなんだ。それがやってみたら、結構うまくいったというわけだ。

――パリへの思い入れは特別だといつもおっしゃっていますが。パリの魅力は?
ウッディ:パリは、生まれ育ったニューヨーク以外でぼくが唯一住みたいと思う町なんだ。美しくてなにもかもが魅了されてしまう。

――物語は、ハリウッドで成功した脚本家の主人公のジル(オーウェン・ウィルソン)が、旅行で訪れたパリで1920年代にタイムスリップするというファンタジー。このアイデアはどこから思いついたのですか。

ウッディ:ぼくがいちばん最初に映画にかかわった(脚本・出演)『何かいいことないか子猫チャン』(1965年)の後、パリに住みたいと思ったことがあったんだ。でも、それを実行しなくて後悔していた。この映画で主人公が出会うフィッツジェラルドやヘミングウェイなど1920年代は多くのアメリカ人のアーティストがパリに滞在したんだ。それにぼくは憧れていたからね。

――では、ジルはあなたの分身?
ウッディ:ぼくが反映されているといえるよ。もっとも、オーウェン・ウィルソンは、テキサス出身のブロンドのヒーロータイプのキャラクターで、西海岸っぽい人でもあるから、(東海岸出身の)ぼくとはまったく似ていないけどね。

――映画には、エッフェル塔からセーヌ川、ヴェルサイユといったパリの観光名所が多く登場しますが、それはわざとですか?
ウッディ:ぼくがパリに行ったとき、美しいと感動した場所を映したかったんだよ。ぼくは所詮外国人だ。パリを深く描写しようなって思わなかった。とにかく美しく楽しい娯楽作品を作りたかったんだ。

――以前のあなたの映画によく見られた悲観的だったり神経症的な部分はほとんど見当たりませんね。
ウッディ:近年は、悲観的要素が減ってきているのは本当だ。でも、悲劇の中に笑いがあって、面白いものが悲劇的だったりする。だからこそ、ぼくはコメディを作り続けているんだ。

取材・文■立田敦子

『ミッドナイト・イン・パリ』
パリを舞台にした幻想的なラブコメディー。1920年代のパリを愛する主人公ギルがタイムスリップし、心酔するアーティストたちと巡り合う。ギル役をオーウェン・ウィルソンが熱演。ほかに、レイチェル・マクアダムス、仏大統領夫人のカーラ・ブルーニらも出演。5月26日、新宿ピカデリーほか全国ロードショー。

関連記事

トピックス

米倉涼子の“バタバタ”が年を越しそうだ
《米倉涼子の自宅マンションにメディア集結の“真相”》恋人ダンサーの教室には「取材お断り」の張り紙が…捜査関係者は「年が明けてもバタバタ」との見立て
NEWSポストセブン
地雷系メイクの小原容疑者(店舗ホームページより。現在は削除済み)
「家もなく待機所で寝泊まり」「かけ持ちで朝から晩まで…」赤ちゃんの遺体を冷蔵庫に遺棄、“地雷系メイクの嬢”だった小原麗容疑者の素顔
NEWSポストセブン
渡邊渚さん
(撮影/松田忠雄)
「スカートが短いから痴漢してOKなんておかしい」 渡邊渚さんが「加害者が守られがちな痴漢事件」について思うこと
NEWSポストセブン
平沼翔太外野手、森咲智美(時事通信フォト/Instagramより)
《プロ野球選手の夫が突然在阪球団に移籍》沈黙する妻で元グラドル・森咲智美の意外な反応「そんなに急に…」
NEWSポストセブン
死体遺棄・損壊の容疑がかかっている小原麗容疑者(店舗ホームページより。現在は削除済み)
「人形かと思ったら赤ちゃんだった」地雷系メイクの“嬢” 小原麗容疑者が乳児遺体を切断し冷凍庫へ…6か月以上も犯行がバレなかったわけ 《錦糸町・乳児遺棄事件》
NEWSポストセブン
11月27日、映画『ペリリュー 楽園のゲルニカ』を鑑賞した愛子さま(時事通信フォト)
愛子さま「公務で使った年季が入ったバッグ」は雅子さまの“おさがり”か これまでも母娘でアクセサリーや小物を共有
NEWSポストセブン
安福久美子容疑者(69)は被害者夫の高羽悟さんに思いを寄せていたとみられる(左:共同通信)
【名古屋主婦殺害】被害者の夫は「安福容疑者の親友」に想いを寄せていた…親友が語った胸中「どうしてこんなことになったのって」
NEWSポストセブン
高市早苗・首相はどんな“野望”を抱き、何をやろうとしているのか(時事通信フォト)
《高市首相は2026年に何をやるつもりなのか?》「スパイ防止法」「国旗毀損罪」「日本版CIA創設法案」…予想されるタカ派法案の提出、狙うは保守勢力による政権基盤強化か
週刊ポスト
62歳の誕生日を迎えられた皇后雅子さま(2025年12月3日、写真/宮内庁提供)
《累計閲覧数は12億回超え》国民の注目の的となっている宮内庁インスタグラム 「いいね」ランキング上位には天皇ご一家の「タケノコ掘り」「海水浴」 
女性セブン
米女優のミラーナ・ヴァイントルーブ(38)
《倫理性を問う声》「額が高いほど色気が増します」LA大規模山火事への50万ドル寄付を集めた米・女優(38)、“セクシー写真”と引き換えに…手法に賛否集まる
NEWSポストセブン
ネックレスを着けた大谷がハワイの不動産関係者の投稿に(共同通信)
《ハワイでネックレスを合わせて》大谷翔平の“垢抜け”は「真美子さんとの出会い」以降に…オフシーズンに目撃された「さりげないオシャレ」
NEWSポストセブン
中居正広氏の近況は(時事通信フォト)
《再スタート準備》中居正広氏が進める「違約金返済」、今も売却せず所有し続ける「亡き父にプレゼントしたマンション」…長兄は直撃に言葉少な
NEWSポストセブン