国内

ささやき腹話術、答弁誘導 元財務官僚が明かす政治家操縦法

 野田佳彦首相は、消費税増税法案の「今国会成立に命を懸ける」と宣言した。野田首相が財務官僚の“操り人形”になっているとはよく言われるが、財務省の役人たちは、どのようにして政治権力をコントロールしているのか。元財務官僚である高橋洋一・嘉悦大学教授が、その“操りテクニック”を明らかにする。

 * * *
 野田首相や、財務大臣経験者の谷垣禎一・自民党総裁、さらに与野党の有力政治家まで、財務官僚から長い時間をかけて「増税は正義」と刷り込まれている国会議員は多い。

 本来、増税を実施するには強い政権基盤が必要だ。しかし、野田内閣の支持率は20%台。こんな政権基盤が弱い内閣に国民の半数以上が反対する消費税増税は不可能のはずだが、財務省は民主党と自民党の協力で法案を成立させるというマジックを本気でやってのけようとしている。今や財務省は日本の政治、国会そのものを支配しようとしていると言える。

 彼らは、どのようにして政治家を思い通りに動かしているのか。

 財務官僚は、“スケジュール戦術”や“ささやき腹話術”、“国会答弁誘導術”といったテクニックの数々を駆使する。

 大臣など政務三役であれば、応援演説、仲間の議員のパーティでの挨拶など、いつ、どこで発言する機会があるかという政務のスケジュールを把握しておく。政治家は演説のネタを常に必要としているから、公用車に同乗した秘書官などが演説の前に言わせたい話をささやく。すると、政治家のほうも「今の話、メモはないのか」と飛びつく。もちろん、メモは事前に用意しておく。こうして財務官僚の腹話術が完成する。

 どこの省庁でもこのような手法で大臣や副大臣の発言を自分の省に有利な方向に“誘導”しようとしているが、中でも財務省がすごいのは、将来有望な政治家との個人的なコネクションを若い時から作っておくシステムができあがっていることである。

 実際、私が旧大蔵省に入省した時には、入省直後の5月から、与野党議員への質問取りをさせられた。他の省庁では40代の課長や課長補佐クラスがやっていることを、新入職員時代からやらせて、個人的な信頼関係を得る。そして財務官僚と政治家の「勉強会」の実施などに繋げていくのだ。こうして付き合いを深めていけば、“ささやき腹話術”がより効果的に働く。

 また、財務省には高校別・出身県別のいわば“派閥システム”があり、例えば有力政治家の高校の後輩が省内にいれば、自然と紹介されて人脈ができるようになっている。こうしたシステムにより、有力政治家を籠絡していくのだ。

 前出の“ささやき腹話術”にも、やり方のバリエーションがある。増税のように政治家が嫌がるテーマの場合は、いきなり「増税が必要」と腹話術をしようとしてもできないから、二段論法、三段論法で追い込んでいく。

 例えば、最初の演説では、「このままでは日本はギリシャ化する」と財政再建を訴えさせる。たとえ増税に慎重な政治家でも、財政再建の必要性は否定できないから“ささやき腹話術”にはまりやすい。

 次の段階の演説では、「ヨーロッパでは消費税の税率が15~20%のところが多い」という内容のメモを渡す。そして3段階目の演説で、「日本の消費税は5%、段階的に上げていかなければならない」と言わせるわけだ。財務官僚が作る国会答弁のメモでも同じである。そして既成事実を作って、思い通りに進めるのだ。

※SAPIO2012年6月6日号

関連キーワード

関連記事

トピックス

11歳年上の交際相手に殺害されたとされるチャンタール・バダルさん(21)。千葉県の工場でアルバイトをしていた
【ホテルで11歳年下の彼を刺殺】「事件1か月前に『同棲しようと思っているの』と嬉しそうに…」浅香真美容疑者(32)がはしゃいでいた「ネパール人青年との交際」を同僚女性が証言
NEWSポストセブン
Mrs. GREEN APPLEのギター・若井滉斗とNiziUのNINAが熱愛関係であることが報じられた(Xより/時事通信フォト)
《ミセス事務所がグラドルとの二股を否定》NiziU・NINAがミセス・若井の高級マンションへ“足取り軽く”消えた夜の一部始終、各社取材班が集結した裏に「関係者らのNINAへの心配」
NEWSポストセブン
山本由伸(右)の隣を歩く"新恋人”のNiki(TikTokより)
《チラ映り》ドジャース・山本由伸は“大親友”の元カレ…Niki「実直な男性に惹かれるように」直近で起きていた恋愛観の変化【交際継続か】
NEWSポストセブン
保護者責任遺棄の疑いで北島遥生容疑者(23)と内縁の妻・エリカ容疑者(22)ら夫妻が逮捕された(Instagramより)
《市営住宅で0歳児らを7時間置き去り》「『お前のせいだろ!』と男の人の怒号が…」“首タトゥー男”北島遥生容疑者と妻・エリカ容疑者が住んでいた“恐怖の部屋”、住民が通報
NEWSポストセブン
モデル・Nikiと山本由伸投手(Instagram/共同通信社)
《交際説のモデル・Nikiと歩く“地元の金髪センパイ”の正体》山本由伸「31億円豪邸」購入のサポートも…“470億円契約の男”を管理する「幼馴染マネージャー」とは
NEWSポストセブン
学業との両立も重んじている秋篠宮家の長男・悠仁さま(学生提供)
「おすすめは美しい羽のリュウキュウハグロトンボです」悠仁さま、筑波大学学園祭で目撃された「ポストカード手売り姿」
NEWSポストセブン
モデル・Nikiと山本由伸投手(Instagram/共同通信社)
「港区女子がいつの間にか…」Nikiが親密だった“別のタレント” ドジャース・山本由伸の隣に立つ「テラハ美女」の華麗なる元カレ遍歴
NEWSポストセブン
米大リーグ、ワールドシリーズ2連覇を達成したドジャースの優勝パレードに参加した大谷翔平と真美子さん(共同通信社)
《真美子さんが“旧型スマホ2台持ち”で参加》大谷翔平が見せた妻との“パレード密着スマイル”、「家族とのささやかな幸せ」を支える“確固たる庶民感覚”
NEWSポストセブン
高校時代の安福容疑者と、かつて警察が公開した似顔絵
《事件後の安福久美子容疑者の素顔…隣人が証言》「ちょっと不思議な家族だった」「『娘さん綺麗ですね』と羨ましそうに…」犯行を隠し続けた“普通の生活”にあった不可解な点
デート動画が話題になったドジャース・山本由伸とモデルの丹波仁希(TikTokより)
《熱愛説のモデル・Nikiは「日本に全然帰ってこない…」》山本由伸が購入していた“31億円の広すぎる豪邸”、「私はニッキー!」インスタでは「海外での水着姿」を度々披露
NEWSポストセブン
安福久美子容疑者(69)の学生時代
《被害者夫と容疑者の同級生を取材》「色恋なんてする雰囲気じゃ…」“名古屋・26年前の主婦殺人事件”の既婚者子持ち・安福久美子容疑者の不可解な動機とは
NEWSポストセブン
優勝パレードには真美子さんも参加(時事通信フォト/共同通信社)
《頬を寄せ合い密着ツーショット》大谷翔平と真美子さんの“公開イチャイチャ”に「癒やされるわ~」ときめくファン、スキンシップで「意味がわからない」と驚かせた過去も
NEWSポストセブン