国内

東電幹部 発注先のバカ高スマートメーター製造企業に天下り

 東京電力をはじめ、各電力会社が「節電の切り札」として喧伝、マスコミがこぞってもてはやすスマートメーター。企業や家庭にある電気メーターがデジタル表示化され、電力会社との通信ができるようになるものだ。時間ごとに電気使用量が表示され、ボタンひとつで前日や前週との比較もできる。端末が発信したデータをもとに、電力会社はきめ細かな需要予測を立てることも可能となる。

 だが、東電が導入しようとしているスマートメーターは“バカ高”なのだ。東電は、1台あたりの調達単価を、2012年度3万円、2013年度1.6万円、2014年度1.2万円と見込んでいる。欧米のメーター単価は1万円程度だから明らかに高い。

 東電の筆頭株主である東京都は、6月27日に開かれた株主総会で、「国際標準品の活用を促進するなど設備投資に競争原理を導入」せよ、との株主提案を行なった。とりわけ、スマートメーターについては「コスト削減と利便性の面から情報開示の徹底」が不可欠とした。しかし、この提案は「反対多数」によりあっさりと否決された。

 東電がバカ高なスマートメーターにこだわる理由は何か。鍵は、株主総会で承認された役員人事にある。

 6月27日の株主総会をもって退任した高津浩明・前常務は、翌28日、「東光電気」という一部上場企業の社長に就任した。東光電気は一般にはさほど知られていない会社だが、実は電気メーター製造大手で、スマートメーター発注先の最有力候補なのである。

 東光電気は46%を東電が出資するグループ企業で、高津氏のほか、東電の前電力流通本部副本部長も今回の人事で取締役に就任した。同社では2009年に東芝と東光東芝メーターシステムズという合弁企業をつくり、すでにスマートメーターの生産準備を始めている。

 しかも社長に天下った高津氏は、東電でスマートメーターの説明を担ってきた人物である。

 高津氏は、料金値上げの際にテレビ各局に番組出演し、説明行脚を行なった。前出の電気料金審査専門委員会にも出席し、スマートメーターについてこう説明している。(5月29日)

「2012年度は1台3万円、本格導入が始まる2013年度以降は量産効果により徐々に単価を落とす」

 そう東電代表として説明していた高津氏が、翌月には発注先の企業に天下りしているのだから、出来レースとみられても仕方ない。

 東光電気は今回の人事について、「経営の若返り等を考えた中での適切な人事で、誤解を招く面もあるのかもしれませんが、今回の人事に合わせて、東電関係の事業になにがしかの影響を与えるということはありません」と答えている。

 電気メーターはこれまで、この東光メーターを含む大手4社による寡占市場だった。このうち、最大手の大崎電気工業にも東電OBの天下り役員がいる。

 東電天下りの実態を調査している猪瀬直樹・東京都副知事は、こう憤る。

「有価証券報告書を調べると、東電の子会社は168社あり、他に関連会社も97社ある。子会社の役員のうち、東電OBが110人、加えて現役の部長クラスが60人も出向していた(昨年10月時点)。さらに出資していなくても天下りを受け入れている“ゼロ連結会社”のうち、東京電力配電工事協力会のグループ11社だけで売上高が900億円。取引先はほとんどが東電です。要するに、東電本体では金がないと値上げ申請をしておいて、子会社に利益をため込んでいるわけです」

 その一角が、このスマートメーター利権なのだ。

●レポート/若林亜紀(ジャーナリスト)と本誌取材班

※週刊ポスト2012年7月13日号

関連キーワード

トピックス

ヘアメイク女性と同棲が報じられた坂口健太郎と、親密な関係性だったという永野芽郁
《初共演で懐いて》坂口健太郎と永野芽郁、ふたりで“グラスを重ねた夜”に…「めい」「けん兄」と呼び合う関係に見られた変化
NEWSポストセブン
羽生結弦の被災地アイスショーでパワハラ騒動が起きていた(写真/アフロ)
【スクープ】羽生結弦の被災地アイスショーでパワハラ告発騒動 “恩人”による公演スタッフへの“強い当たり”が問題に 主催する日テレが調査を実施 
女性セブン
秋篠宮家の長男・悠仁さまの成年式が行われた(2025年9月6日、写真/宮内庁提供)
《「父子相伝がない」の指摘》悠仁さまはいつ「天皇」になる準備を始めるのか…大学でサークル活動を謳歌するなか「皇位継承者としての自覚が強まるかは疑問」の声も
週刊ポスト
自民党総裁選有力候補の小泉進次郎氏(時事通信フォト)
《自民党総裁選有力候補の小泉進次郎氏》政治と距離を置いてきた妻・滝川クリステルの変化、服装に込められた“首相夫人”への思い 
女性セブン
ヒグマ対策を担っていた元レンジャーが語る知床の現実(イメージ、時事通信フォト)
《相次ぐヒグマによる死亡事故》元レンジャーが語った“共生神話のウソと現実”…「人の汗で安全が保たれていただけ」“車と人”にたとえられるクマと人間の関係
週刊ポスト
ヘアメイク女性と同棲が報じられた坂口健太郎と、親密な関係性だったという永野芽郁
《「めい〜!」と親しげに呼びかけて》坂口健太郎に一般女性との同棲報道も、同時期に永野芽郁との“極秘”イベント参加「親密な関係性があった」
NEWSポストセブン
すべり台で水着…ニコニコの板野友(Youtubeより)
【すべり台で水着…ニコニコの板野友美】話題の自宅巨大プールのお値段 取り扱い業者は「あくまでお子さま用なので…」 子どもと過ごす“ともちん”の幸せライフ
NEWSポストセブン
『週刊文春』からヘアメイク女性と同棲していることが報じられた坂口健太郎
《“業界きってのモテ男”坂口健太郎》長年付き合ってきた3歳年上のヘアメイク女性Aは「大阪出身でノリがいい」SNS削除の背景
NEWSポストセブン
2泊3日の日程で新潟県を訪問された愛子さま(2025年9月8日、撮影/JMPA)
《雅子さまが23年前に使用されたバッグも》愛子さま、新潟県のご公務で披露した“母親譲り”コーデ 小物使い、オールホワイトコーデなども
NEWSポストセブン
卒業アルバムにうつった青木政憲被告
《長野立てこもり4人殺害事件初公判》「ごっつえーナイフ買うたった 今年はこれでいっぱい人殺すねん」 被告が事件直前に弟に送っていた“恐怖のLINE”
NEWSポストセブン
容疑者のアカウントでは垢抜けていく過程をコンテンツにしていた(TikTokより)
「生徒の間でも“大事件”と騒ぎに…」「メガネで地味な先生」教え子が語った大平なる美容疑者の素顔 《30歳女教師が“パパ活”で700万円詐取》
NEWSポストセブン
《悠仁さま成年式》雅子さまが魅せたオールホワイトコーデ、 夜はゴールドのセットアップ 愛子さまは可愛らしいペールピンクをチョイス
《悠仁さま成年式》雅子さまが魅せたオールホワイトコーデ、 夜はゴールドのセットアップ 愛子さまは可愛らしいペールピンクをチョイス
NEWSポストセブン